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第35話 相変わらずの、食欲旺盛

 翌日、起床してまだ朝食に行く前、3人で今日の予定について話していた。

 予定では佐々木さんと理久を引き離して、理久と話をするのだけど……。

「あのさ、午前中は海で遊ばない?」

 そう、二人に提案した。

「え?佐々木先輩は?」

「あ、あとで……」

 それはそれとして、私にもやりたいことがある。

 どっちが大切かと言ったら、理久の方なんだけど……。

「ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから~」

「海で何がしたいんですか?」

 何でっていうか……。

 何も言わずにキャリーケースを漁り出す私に、二人は疑問の表情を浮かべる。

 目的の物を見つけた私は、それに顔を隠すようにして二人に黙って見せた。

「あ~!理香ずるーい、自分だけもう1つ水着買ってる!」

 文句を言った咲恵は、そう言いながら服を脱ぎ始めた。

 えぇ、何して……。あっ!

 服を脱ぎ終えた咲恵の姿は下着姿では無く水着姿だった。

 ——昨日とは別の。

「なんて、私もなんだけど」

 昨日までの路線とは異なって、全体的にひらひら、フリルや過剰な布がついているオレンジから赤にかけての色が主体の水着だった。

 それを見た綾ちゃんが急に椅子から立ちあがり、スカートを自分でまくり上げた。

「わ、私も……、です。理香先輩驚かせようと思って大胆なかんじのを……」

 そういって上着もまくし上げると、バストの下から腰までの肌が露出していた。

「えっ、綾ちゃんも!?しかもビキニ……」

 なあんだ。

「みんなその気だったのなら、海かプール行こうよ」

 咲恵がそう促したが……。

「ごめん、私が最初に見せておきながら、こんなこと言うのもどうかと思うんだけど……。明日もあるんだから佐々木さんと理久優先のが正しいよね」

「理香先輩の目が覚めたようでなによりです」

「私は理香を試しただけだよ?」

 いや、嘘でしょ、だって二人とも着込んでるとか。……いつからの仕込みなのよそれ。

「まあ、そういうことにしといてあげるわ。それで……、今日の具体的な話なんだけど」

 私が話を切り替えると、二人、特に咲恵の顔つきが変わった。

「朝食の会場って、他の客も含めて全員同じみたいだから、たぶんあの二人も朝食には出てくると思う。だから、そこを咲恵に捕まえてもらおうかなって」

 言いながらちらりと咲恵をみる。

「おっけ、任せてよ。じゃあサッと朝ご飯食べに行こ」

「そうですね、できる限り早いタイミングで食べないと私達が朝食食べ損ねちゃいますし……。それは避けたいですね!」

 綾ちゃんの言葉に力が入っている。

「……綾ちゃん?」

「なんですか理香先輩」

「朝食は好きに取るみたいだけど、元を取るとか考えないようにね」

 釘刺しておかないと限界まで食べそう。

「何言ってるんですかそんなの当たり前ですよいくら私でも自分の懐の痛くないご飯で元取ろうとか考えませんよしかもこんな高級な場所でそんなことするわけないじゃないですかいくら理香先輩でも失礼ですよ」

 綾ちゃんがまくし立てるように言った。

 何言ってるのか、ちょっと頭に入ってこないんだけど……。

「うん、その、食べ過ぎて動けないとか私達の手を煩わせるようなことにならないなら、それでいいのよ」

「もちろんですよ!」

 そう言いながらも綾ちゃんは、何もない空間を見つめていた。


「分かってないって!」

「分かってないよ!」

 いきなり二枚のお皿に山盛り、あらゆる料理が混ざっても気にしないとばかりに載せて綾ちゃんはテーブルに戻ってきた。

「え?あ、本当ですね!でも取ってしまったからには食べないと」

 ちなみに、咲恵は茶碗にお粥と味噌汁、お皿には塩鮭とサラダ。小鉢を2つ、納豆とプレーンヨーグルト。……なんか印象と違って地味だね。

 私は珍しいからと手に取ったプレッツェルと、スクランブルエッグとミネストローネ。ミネストローネ、良い香りしてたから……。

 綾ちゃんは2つの皿をテーブルに置くと、また料理が置かれた場所へと向いた。

「まだ取ってくる気!?」

「えっと、ほら、主食がありませんから」

 確かに、綾ちゃんのお皿は動物性たんぱく質だらけで、その下にサラダが敷かれている。

 よく朝食のメニューからこれだけ集めてきたね……。

 去って行く綾ちゃんを見ると、綾ちゃんは役に立ちそうにないなあと感じる。

「綾ちゃんはこの後戦力外だね」

「そうね」

 咲恵も同じように思ったようだ。

「お待たせしました!」

 綾ちゃんが戻ってきた。私は目を疑った。

「綾ちゃん!?」

 咲恵は思わず声を上げた。

 綾ちゃんの右手にはカレーライス、左手にはプレッツェルとロールパンとクロワッサンを盛ったお皿があった。

 主食を取ってくるとは言ってたけどさあ……。

「それ、食べるの?」

「ええ、誰かのせいで私の食欲は破壊されましたからね」

 ……私のこと言ってる?あの店を選んだのは私じゃ無くて多賀先輩なんだけど。

「まあ、手短に食べ終える事が出来るなら、好きにしてくれて構わないんだけど。できれば理久と佐々木さんが来る前に食べ終えたいんだからね?」

「大丈夫ですよ」

「綾ちゃん、それだけ食べて太らないの!?」

 咲恵は別のところが気になる様子。

「太る……。少なくともあれ以降食欲旺盛ですけど、太らないですね。出るところだけ出るって感じで」

「なにそれっ!?ずるい!」

 食べることをずるいと言う割には咲恵が質素というか、地味というか。

 あ……。

「……もしかして咲恵のそのメニューって、ダイエットなの?」

「うっ。まあ、昨日いっぱい食べたからね……。ま、早く食べよ?いただきます」

「いただきます」

「いただきまーす」

 とりあえず初めて見るプレッツェルをひとかじり……、堅っ!なにこれ?

 噛みちぎって咀嚼してると、すごく味がして美味しいけどこれ、堅い!あごが疲れるわよ。

 ミネストローネで水分とりながら食べよう……。

 ああ……。これは時間かかりそう。咲恵の方が絶対先に食べ終えそう。

 まあ綾ちゃんがあの量だから、最後ってことはないかな。

 そうして、プレッツェルを半分ほど食べた時だった。

「おかわりしてきますね」

 綾ちゃんはそう言って立ち上がり、パン数種類とフルーツとヨーグルトを手に戻ってきた。

 結局、すべて食べ終えるのも私が一番遅かった。

 綾ちゃんに、早く食べ終える理由を説いていただけに、やや恥ずかしいわ。

「ま、まあ。まだ二人は来てないから大丈夫だよ。食べるの遅いのは何も悪いことじゃないって」

 そう慰めてくれる咲恵の言葉が、嬉しかった。

 プレッツェルはとても美味しかったけど、時間があるときに食べよう。

(個人的な話)

プレッツェル、好きなんですよね……。

柔らかいやつじゃ無くて、しっかり堅くて味のするのが特に。

好きな店がデパートに一時的にしか来ないので、まとめ買いしちゃうくらいに。

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