第34話 気をひけ!作戦会議
「なるほど、理久くんをもう一度女子に戻して貰える……?」
バーベキューが終わり、コテージに戻るなり、私は事の顛末を話した。
「そう、私は何が起きるか分からないから理久には悪いけど、このままが良いと思っているの」
理久は、戻りたいのかもしれないけど……。
「それって、もし戻したら理香先輩はどうなるんです?」
「えっ……、どうなるんだろうね?何も言ってなかったけど」
そういえば名前とかもどうなってしまうんだろう。
いや、どっちかは理久じゃないとおかしいから、理久という名前の女の子かな?
「私は、まずは理久本人にどうするかを聞きたいと思ってるの」
そう言うと、咲恵は怪訝そうな顔をした。
「……理久くん、全然話してくれそうにないけど。それどころか目すら合わしてくれないじゃん」
「なんかずっと佐々木さんと一緒ですよね……」
そう。それが一番の問題。
「無理矢理連れてくるとかどう?」
咲恵はそう提案するけど……。
「それ、誰がどうやってやるの?」
「無理矢理って言っても力ずくは無理ですよ、男子の中でも特に力強そうですし」
「う~ん、そうだよね……」
物につられるタイプでも無さそうだしなあ。
3人でああでもない、こうでもないとうなり続ける。
「あ、こんなのはどうですか?」
「綾ちゃん何か思いついたの?」
「はい。理香先輩が倒れたとか、記憶喪失になったとかどうですか」
え、どういうこと。
「そうしたら心配して来てくれると思うんです」
「いいねそれ!」
なるほど、内容は分かったけど……、咲恵も同意しているけど……。
「私、それはできないわ」
「ああ~、それで来てくれなかったら立ち直れないもんね」
そういうことではなくて。
「だって、それって嘘つくってことでしょう。私、もう嘘はつきたくないの」
綾ちゃんが『あっ……』と小さく声を漏らした。そう綾ちゃんとのことがあって私は嘘や裏切りはしたくない。
また3人でうんうんと唸る。
なんとか佐々木さんと引き剥がせないかなあ。
「あ!佐々木先輩をさらおうよ!」
「……藤島先輩何言ってるんです?」
いや、本当に。何言ってるの?
「いや、出来るか分からないけどさ!理久くんを連れ出すより可能性低くないんじゃない?」
なるほど。
「……でも、それで理久を一人に出来たところで、理久は話聞いてくれるかな?私のこと、怖い目で見てこないかな?」
「それは、わかりませんけど、そうしないより可能性は有るかもしれませんね?」
綾ちゃんもこの手段に反対ではないみたい。
「ええっと、じゃあ私が佐々木さんの気を引くから……」
「いやいや理香、何言ってんの」
「そうですよ、理香先輩は川田先輩と話するのが目的なんだから、佐々木さんに着いていったらダメじゃ無いですか」
あっ……。
「もう!しっかりしてよ~。まあ佐々木さんは私がなんとかするよ、ダメなら副会長にも頼るし」
「藤島先輩がやってくれるなら、私はどうしましょうか、理香先輩と一緒に居てたらいいです?」
私がどこか抜けていたせいか、二人が頼もしく見える。
「あっ!綾ちゃんずるい!私だって理香と一緒にいたいの我慢してるのに~」
「ふふっ、頑張ってくださいね、藤島先輩♪」
気のせいだったかもしれない。
「さて、やることも決まったことだし、ゆっくりしようっと」
私は座っていたソファに深くもたれかかった。ああ、このまま寝てしまいそう。
「理香。大浴場行こうよ、温泉らしいよ?」
「えっ、そうなんですか!私も行きたいです」
温泉かあ……。
ん?
「ねえ二人とも、私と一緒にお風呂へ行くことに抵抗はないの?」
元は理久なんだけど、見られて恥ずかしいとかないのかな。
綾ちゃんを見る。
「私は全然無いですよ?だってどう見ても……、いえ見た目だけじゃ無くて言動含めて女子にしか見えませんからね?かつての面影が全く無いっていうのも大きいですけど」
そうなんだ……。
「全然男子っぽさない?」
「あ~、思い返せば私がそうなったってまだ知らなかった頃は、違和感あったかもしれませんね。今更どうでもいいですけど」
今度は咲恵を見る。
「私は……、少しは恥ずかしいよ?理久くんだったって知ってるからだけど。別にこれが違う男子が女子になったっていうなら、そんなことないんだけどね」
「あ~!藤島先輩ダメですよ!約束に抵触してますよ!」
「あっ、ごめんごめん」
……?
「まあ、二人が良いならいいのよ。温泉行こっか」
3人で、ゆっくり楽しく温泉。
……なんてことはなかった。
「……人いっぱいだね」
大浴場の建物まで歩いて、その建物が見えた時点で嫌な予感はした。
だって並んでるんだもん。
「明日のことを思うと憂鬱だから、のんびりしたかったなあ」
咲恵がぼそりと呟いたことで思わず本音が漏れてしまった。
「あ、お客様……」
私の言葉を聞いてすぐ近くの従業員が話しかけてきた。
「申し訳ございません。シーズン中のこの時間はどうしても人が多くなりまして、あと一時間程はこの混雑具合になります。もしゆっくりされたければ、2時間後くらいにまた来ていただけますとお楽しみいただけます」
提案こそしているものの、暗に今はいっぱいだから来てくれるなって言いたいのかな?
そんなんじゃないか、親切に教えてくれているだけか。
「ありがとうございます。……だって、どうする?」
「う~ん、今日は移動や海で疲れちゃったしなあ」
「ですよね。明日もあるしコテージのお風呂で済ませて早く寝ませんか?」
皆、同じ意見のようでよかった。私もそうだから。
「そうしようか、コテージのお風呂も家より全然大きいから、ゆっくり出来るだろうし」
「一緒に入る?」
ええ、別にそこでわざわざ一緒に入らなくても……。
「いいですね、どうせ丸見えですし」
そうだった、脱衣所と風呂場の間もガラスで、部屋との間も一部窓なんだった……。
まあ広いし同意しておこうかな。
「私も別にいいけど、なんであんなにガラス張りなんだろうね」
「ラブホみたいだよね」
それぞれ、何故、何処で知ったのかとかになるだろうから、あえてそう言わないようにしたのに。まあ雑誌だったり、創作物だったりだろうけど。
「ちょ、ちょっと先輩達。あれは、せっかくのオーシャンビューがよく見えるようにとか、そう言うのだと思いますよ」
「あっ……」
「あ~!綾ちゃん頭良い!」
確かに晴れてると気持ちよさそう。
……でも夜だと真っ暗だよね。




