第33話 もやもやして、手一杯で
もう頼らないとあえて目に入れないようにしているが、どうしても姉貴をみてしまう。その姉貴の様子がおかしい。
前に見たことがある気がする。
「どうしたの、理久?」
「いや、なんでもないよ」
この口調、詩織に頼まれてこのようにしているがまだ違和感がある。
でも詩織には俺がいないといけないし、俺も詩織は大事。
無理があってもこれを維持しなければ。
姉貴のことは気になるが、お腹も満たされてきたし、そろそろ詩織と2人になりたいな。
「なあ、そろそろ戻らないか?」
「あははっ……、いいわよ?」
詩織は、事あるたびに俺の言動を見て笑う。
一体何がおかしいのだろうか?
詩織と腕を組みコテージへ向かう。向かいながらも軽くキスをしたり、自分でも思うけど、こんなのはバカップルだ。
でも良いと思う、詩織の言うとおりにしていたら男であることに抵抗はなくなった。そして改めて男であることも知った。
詩織さえいれば別に大勢との協調なんかも気にしなくていい。
……本当に?
本当だ。時々自分の中の何かが現状に疑問を問いただすことがあるけど、俺はきっと正しい選択した。
「理久、何か考え事してる?」
「……俺のことと、詩織のこと」
「ふうん、お似合いだって?」
そういうことじゃ無かったんだけど。
「そうだよ」
肯定しておけばとりあえず問題にならない。
詩織の機嫌を良くしておけば、俺も快適に過ごせるのだから。
色々と考えながら歩いているうちに、コテージについた。中に入り、鍵を閉める。
「どうしようか?」
詩織に聞く。お腹も膨れてるし、ちょっと休憩したら風呂に入ってもう寝たいけど。
「ふふ、選択肢は1つしかないんじゃない?」
これだ。詩織は俺に正解を求めてくる。
詩織には正解を答える俺が必要なんだろう。
「そうだね、寝室に行こうか」
「私は、ここでもいいわよ?」
詩織が差し出した手を俺は取り、引っ張られるままにソファへと倒れ込んだ。
暗転から開けたら、周りではまだ良い匂いがしていた。
以前の、ボウリングの時ように時間は進んでいたようだ。
でも先ほどまでと違い、焼き肉みたいな具材ではなく、ホイルを調理器具に見立てて料理したり、釣りをしたらしい男子たちがそのまま網にのせて松川先生に下処理をしろと怒られたりしていた。
……松川先生、料理できるんだ。というか魚焼くのに下処理ってなに?
そうだ。そんなことはどうでもいい!
「理久は!?」
「え?」
隣にいた女子が声をあげた。
「弟さんならさっきもう出て行ったよ?たぶん部屋に帰ったんじゃないかと。ほら、3年の先輩と一緒に行ったし……」
ああ、佐々木さんか……。
「ありがとうございます」
「やだ、なんで敬語なのよ同学年だからタメでってさっき言ったじゃなーい。忘れちゃった?」
まあ、忘れたというか。飛んじゃってるからね……、記憶。
助けて、綾ちゃん、咲恵……。
私はあたりを見渡した。おっと!?
逆隣に咲恵がいた。
目が合うと咲恵は大きくウィンク。
……任せろってことかな?
「ごめんね香奈~。理香ってば忘れがちなところあってー」
「ああ、あるある……。って、さっき紹介したところやろがーい!」
ええ、そういう感じの子なの……。苦手かも。
あ、ダメダメ。そういうのが人付き合いが少ない原因の1つになっちゃう。
「ごめーん」
私も軽く返しておく。
「同学年で理久くんのクラスにいる西島香奈だからね?理香、もう忘れたらだめだよ」
ありがとう咲恵、具体的に説明してくれて。
でも理久のクラスって、要は元々私のクラスメイトじゃないの……。
知らない女子認定しちゃっていたわ。
それにしても、理久は居なくなっちゃったか。
なら、佐々木さんと部屋に戻ったなら今日会うのはもう難しいかな。
「咲恵、あとで綾ちゃんと2人に話があるの。できれば多賀先輩にも相談したいんだけど、今日忙しいって言ってたから……」
多賀先輩には、明日何か理久達2人について説明してくれるらしいときに聞こう。
もう多賀先輩に再アプローチどころじゃなくなっちゃったなあ……。
「あれ?理香先輩何か辛いことでもあったんですか?」
少し離れたところから近づいてくる綾ちゃんが声を掛けてきた。
そんな顔してたのかな?
「辛いわけじゃないんだけれど、難題……、というか。……まああとで説明するから」
「そうですか……、じゃあそれでは後で聞きます」
今は……。
「今はこの場を楽しもう」
どうせ今何も出来ないなら、せっかくの機会を楽しまないとねと、綾ちゃんには言うけど、その私が別のことで頭がいっぱいで楽しめてないかもしれない。
せっかくの海なのに、勿体ないという気持ちと、それどころでは無いという気持ち。
葛藤を少しでも和らげるために、早く二人に相談したいな……。
「ほら、今は楽しむんでしょ!視線が落ちちゃってるよ?」
その葛藤がすぐに行動に出てしまうのか、咲恵に指摘されてしまった。
「ほら、あれ何焼いてるのか見に行こうよ」
私は背中を咲恵に押され、人が集まっているバーベーキューコンロの方へと向かった。
でも私は、神様の言っていたことを思い出したり、考えたりして、結局心の底からは楽しめていないね……。
ごめんねみんな。ごめんね、理久。
今の私は全てに中途半端かも……。




