第8話 いつもとちがう、登校
一章では、たぶん一話あたりの文字数を気にしすぎていました。
3500~4500くらいは無いとだめなのかなって。
その結果変に場面転換が複数あったり、1つの話の中で視点が変更していた。
ですので、以降はキリを重視しつつまあ2500くらい超えてりゃいいかくらいの気持ちでやっていきます。(3500~4000がいいなとは思いますけど)
――ガコン、バンッ!
嘘でしょ……。気構えたとはいえ早すぎる。電車の扉が開くとそこには咲恵がいた。
「あ!理香じゃーん、おはよーう!結局私もサボったんだよね~。ナカマナカマ」
私が電車へ乗り込むと、咲恵はそう言いながら片腕を私の背中に回してきて逆の方をポン、ポン、ポン、と3回叩いてきた。
咲恵ってこんな陽キャ系リーマンみたいな絡み方するの……ついていけない。でも、もしかして理香もこんな感じなのかな。
「おはよう!たまにはありだと思うよぉ、気楽にいこ!」
そう言いながら正面から叩いてきた腕とは逆の肩をポン、ポン。
すると咲恵は目をぱちくりとさせてこちらを見てくる。
「……え、理香珍しいねノッて来るなんて」
理久に、視線をやると目を瞑って首を横に振っている。この対応は間違いだったらしい。
「あ、いや~たまにはどうかなって。でも恥ずかしいね。アハハ……」
また理久に視線をやると片手に吊り革を持ってスマホを弄っている。いいね、楽で。羨ましいわ。
「そんな事言わずに~、これからもアゲてこうよ~!いい感じだったのにぃ」
私の両肩に手を置き何度もその場で跳ねて催促してくる。揺れてる電車内で器用な子だな……。私なんて棒状の部分を持たないと揺れに抵抗できないんだけど。そもそも吊り革届かないし、この身体不便すぎる……。
「はあ、理香さあ……」
「な、何?」
「やっぱり、そんなに可愛いのに髪の毛何もしないの勿体ないよ」
え、ブラシするだけじゃだめ?一応女子っぽくドライヤーまで使ってブラシはかけたんだけど。以前はブラシで適当にといて終わりだった。
「今は流石にできないから、教室ついたらやってあげるね」
「あ、ありがとう~」
「髪以外もやったほうがいいと思うんだよね~、私色々もってるよ?やってあげようか?」
なんで学校に行くのに、色々持っていくんだろう。
「あ、ありがとう……」
駄目だなあ、どうしても返答の最初に言葉が詰まってしまう。口調はほぼ問題なくとも、それがスマートに使えるかと言うとそれは別問題のようだ。
あれ?理香がまた首を振っているがあれはどういう意味だろうか。
――プシューッ、ガコン。
意味がわからないまま電車は降りる駅へとついた。
改札を出る。
他の車両からも同じ高校の学生が降りてきて、改札を出た先には学生で溢れている。
自分の言葉が先程の改札の時よりも重くのしかかってくる。昨日の自分すら理解してないのとは状況が違う。私と理久はお互いが異なっていて、この状況で生きていく。そしてそれを周りには感じさせないようにしないといけない。
咲恵相手にすでにミスしたけど。あんな些細なことでも積み重ねると怪しまれるだろうか、考えすぎだろうか。
「お姉ちゃん」
理久が耳打ちしてきた。
「咲恵のああいう押し売りみたいのは基本拒否だよ。まあ今日はもうOKしたみたいなものだから、観念するしか無いと思うけど。……頑張って」
もっと早く教えてほしかった、なんて言いたいところだけど、そんな一から十まで……、十じゃすまないような量をお互い伝え合っておくなんて非現実的か。
「そういえば理香、昨日辞めるかもとか言ってたけど、どうなの?」
咲恵が昨日の通話中の話題を出してきた。
「あ、それ……うん。うん……なんていうか……」
その意識はまだ根付いていないとはいえ同じ部活の友達。辞めるって言うのはちょっとためらう。
「はぁ。いいよ、無理しなくて、辞めるんでしょ?」
「うん」
「代わりに理久くん入らないかなー。昨日言ってたじゃん、入るかもって。聞いてみよ」
そういえば、咲恵は理久のことを『理久くん』と呼ぶ。大半の生徒は川田『さん』『くん』で言い分けてるのに。
それとも、理香のことを下の名前で呼んでる子はみんなそうなのかな。私は以前関わりほとんどなかったから知らないだけで。
「理久く~ん!」
「え!?さき……、あ、えっと……藤島さん、何?」
絶対咲恵って言いかけてる。私以上、慣れるために時間掛かりそう。
「陸上部入るかもって、理香から聞いたけど……」
これまでの話し方に比べるとおずおずと聞いている。そんな話し方できるんだ。
「陸上、入るよ。文芸部はやめちゃう」
「えー、別に文化部を幽霊で掛け持ちなんてよくあるのに、律儀なんだね~」
幽霊なんてされちゃ邪魔なんでぜひ律儀にも辞めてくださいね。私は逆に文芸部入る予定だから。
「えー!本当に入るんだ!!理久くんならどのスポーツでもできそうなのに、嬉しい~」
「んー。最近走るのがなんか楽しくて?」
「アハハハハ、あーしに聞かれてもわかんないよ~。でもなんでこれまで入らなかったの?」
咲恵が根掘り葉掘り聞いている。ちょっと理久は返事考えるの大変そう。
「ほんと、なんでだろうね……」
考えるのやめちゃってたわ。
しばらく他愛のない話も挟んだりしながら歩いている間に校門まで後少しという所まで来た。その先には体操服姿の女子生徒が一人見える。誰かな……?
「あ……、先輩いるじゃん。大丈夫だと思うけど」
そういいながら咲恵は校門へ向かっていった。
「先輩おはざーっす!」
「咲……。と、理香も。おはよう」
「すみません、連絡も入れずにサボっちゃって。朝からアレがコレでソレなもんでして」
私も挨拶をと思っていたのに先に挟まれてしまった。でもそれ何の釈明にもなってないけどいいのかな。
「そう……。まあそういうこともあるわよね。次からは連絡頂戴」
私は名前も知らない先輩にそう言われた咲恵は適当な返事をしながら校舎へ向かっていった。
「あ、おはようございます」
「理香は、昨日から調子悪かったみたいだから、そのせいよね?」
「はい、でも……」
そう言いながら私は鞄から封筒を出す。
「辞めようと思います」
「えっ……。どうして、って良いわ。なんとなく分かるし」
絶対この先輩も、なんで陸上やってるんだろうこの子とか思ってるんだろう。いいけど。
「でも。退部届は顧問の先生に渡してちょうだい。部長とはいえ私じゃ受け取れないの」
部長でしたか。怖くない方で良かった。
「わかりました、ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとね」
先輩はグラウンドの方へ向かっていった。まだ途中だったのかな。
そういえばいつの間にか理久が居ない。待っていても仕方ないからもう教室行ったのかな。
私も教室へ向かっていった。




