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第31話 エンジョイ・リゾート(4)

 更衣室で一休みし、海で無理せずに遊んでいると早くも夕方になっていた。

 多賀先輩が回りにバーベキューに参加する場合は移動するようにと、言って回っているのが聞こえる。

「水着のまま行くのかな?」

「どこでやるかによるんじゃない?」

「おーい、多賀ぁー!」

 参加者らしき私の知らない人たちが、結構気になることを話題にしていた。

「……たしかに、浜辺で立食とかなら水着の上に羽織るくらいでいいよね」

 逆にしっかりと座席のあるスタイルだとそれは合わない。

「ああ!すまない!場所はここから海沿いに歩いたら見える別のビーチ兼バーベキュー会場で立食だ。……別にそこの海に入るのも問題ないそうだが無茶するなよ。大人の目もあるからな」

 他の人からの疑問を受けて先輩は追加で説明し、ついでに羽目を外しすぎないようにと釘をさした。

 そのために大人を呼んでおいたのだろうか。

「そう!この私がちゃんと見てますからね!」

 などと松川先生は声高らかにしているけど、……松川先生が役に立つかなあ。

 率先して羽目外すイメージしかわかない。

「2人とも、先に羽織るものでも取りに行こっか」

 咲恵の提案によって、コテージへ一度服を取りに行った。

 一応、水着の上からタオルで水気は取ったし、さらに歩いてる過程でだいぶ水着は乾いたようだ。

 となると髪の毛が濡れてるのが気になる。

 先ほどまでは海遊び、次はバーベキュー。となると髪くらい整えておきたい。

「ねぇ、ドライヤーしていっていい?」

「いいけどさ。私たちよりそういうところ気にするの、なんだか悔しい……!」

「わかりますその気持ち。本当にこの理香先輩が、かつて私に話しかけてもくれずに、ひたすら本を読んでいた川田先輩と同一人物なんでしょうか」

 それは……、私が変に見た目に対して意識が高すぎるということ?

「なんでだろうね……?」

 強いて言うなら、私の思う女子像がこうだった?

 でも身近な女子って当時の『妹、理香』くらいだったし、今の私とは全然違う。

「あ……」

 綾ちゃんが短く声を上げた。

「綾ちゃん何か気づいた?」

「いえ、全然的外れかも知れませんけど……、それでもいいなら」

 私は、何か可能性に気づいたらしい綾ちゃんに向かって、首を縦に振り先を促す。

「理香先輩って、ラノベや漫画好きですよね……?好みのキャラ……、理想像なんじゃないかな、って」

 好みのキャラ……。

「清楚キャラとか、純粋な子とか、基本好きになるキャラだったけど……」

「外れてないじゃない」

「ですね」

 無意識とはいえ、そんなところから今の私が作られてたなんて、なんだか複雑な気持ち……。

 でもそうか、何もないところでこんなに固まった感じの女子になれていたのは、そういう理由だったのかな。

「あ、いけない。早くドライヤー済ませないと!」

「もういいじゃない、どうせ途中で海に突入だよ」

 えっ、そういうノリなの?

「そうですよ、たぶんお腹が満たされると遊びたくなったりするんですよ。ラノベとかで見ました」

 ……私も見たこと、あるけどさあ。

「まあ時間もあまり無いし、早く向かおうか……」

 結局ドライヤーはせず服だけ羽織り、コテージを出て施設内の舗装された歩道を通って、バーベキューが行われるビーチへ向かった。

 先ほどのビーチからはそのままビーチを歩けばよいけど、少し施設の内側に居る今ならこのあたりでバーベキューが行われるビーチに、できる限り近づいてから行った方が早い。

 そうしてしばらく歩いて、目的のビーチへと分岐する三叉路にたどり着いたとき、その分岐しない方から見知った顔がこちらに歩いてくるのが見えた。

「あ、理久くんだ」

 それは理久だった。

「理久……」

 理久は佐々木さんの腰に手を回し、佐々木さんは理久の腕に抱きついたまま歩いている。

「ちっ……、姉貴も行くのかよ。詩織、やっぱりやめにしないか?」

 理久は私を見るとわざとらしく舌打ちをした。

「だめ、理久。私みんなと美味しいご飯食べたいもの」

「別に俺と2人で施設内のレストランにでも行けばいいじゃないか」

 理久はまだ拒むが、佐々木さんはその理久の言葉に首を横に振る。

「2人じゃ意味が無いのよ」

 意味……?

「意味?」

 理久にも佐々木さんの言う『意味』の意味が理解出来ないらしく、問い返していた。

「ふふっ、気にしなくて良いのよ」

 そう言って2人は先にビーチへ向かうべく、三叉路を曲がった。

 その時。

 佐々木さんは理久の腕から離れ、こちらに一歩近づいて私の顔を指さした。

「あなたもね。大丈夫だから」

 そして私の横へ顔を寄せると、耳元でそう言った。

 大丈夫だから?

 あなたのような奥手かと思ったら一転、脳内がピンク色の人に大丈夫と言われても何も安心できない。

 そもそも、何について言ってるんだろうか。

「理香先輩、何言われたんですか?」

「……『大丈夫だから』って。全然意味が分からない」

「理久くんのことは私に任せろとでも言ってるのかな?……そんなのかえって心配なんだけど」

 咲恵の言うとおり、任せられるわけが無い。

 弟の……、かつては妹のことは、私が一番知っているはず、頼られていたはずなのに。

「悔しい」

「……?理香も何が悔しいのか分からないけど、私は早くご飯食べたいかな?」

「私もです!」

 そうだね、とりあえず忘れてご飯食べに行こう。

 日中も遊んでいると、理久のことでモヤモヤすることは忘れられたから。

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