第24話 試される、別の女子力
理久のことを見に行った日から1週間が経った。
出かける格好からして学校に、部活に行っている様子はない。
あれから理久は連日ふらっと出かけては、深夜や朝方に帰ってくる。
お母さん曰く『男子高校生なんだから好きにさせておいたらいいわよ。あ、あんたはダメよ?』とのこと。
でも私は気になる。どこで何してるの?誰に会ってるの?
もしかして、佐々木さんに会ってる?まさかね。
私も別に、1人でずっと家に居るわけじゃ無くて、綾ちゃんや咲恵と遊びに出かけたりくらいはしているけど。
2人が結構遊びに誘ってくるから、むしろ1人の時間が足りないなあと思うくらいだ。
——ヴヴッ。
ほら、そんなことを考えていたら早速お誘いのメッセージだ。
私がスマホを手に取ると、そこには『多賀岐美』と書かれていた。
多賀先輩!
『川田さん、お久しぶり。元気しているかい?待たせてしまってすまない、ようやく予定が立つようになったよ——』
メッセージアプリのメッセージにしてはかなりの長文……、画面の7割を埋めるようなメッセージが来ていたが、ようやく日取りが決まったということが主題だった。
——ヴヴッ。
まだ先ほどのメッセージも読み切れていないうちに2つ目のメッセージが来た。
これまた長文……。
というか情報量が多い、参加者の一覧だった。いやもう、グループ作るとかしたらいいじゃない。これ結構人数居るけど、全員に送ってるわけ?
参加者はパソコン部の男子達、清水もいるのか……。それに私と咲恵と綾ちゃん。
——んんっ!?
その後に知らない女子の名前と、佐々木さんの名前、そして理久の名前があった。
確かに部活に行ってないみたいだけど。……やめたのかな。
部活といえば、咲恵は『全然来てないんだったら、私はずっと部活休みにしよっと』とか言っていたわね……。
そうは言いつつ続けはするのだから、やはり根は真面目で、部活自体は嫌いではないのだろうなあと思う。
それで、日付はいつだって?
もはや画面外に行ってしまった日付を確認すると、そこには八月十日と示されていた。
スマホをホーム画面に戻してカレンダーを確認する。
八月八日。
明後日じゃないの!
え、全然用意してないし、お母さんにも言ってない。
え~、みんなで海でお泊まりなら寝間着も可愛いのがいいな~。スキンケア用品とかどこまで持って行こうかな。
ああ、日焼け止めは絶対に忘れないようにしないと。
予定日が明後日と告げられ、怒濤のようにやりたいことや気になることが出てきた。
この考えに至るのが『完全に女子』って言われちゃうところなんだろうな。
でも良いじゃない、もう女子なんだから。
『完全に男子』になって無くて苦労してる理久には悪いけれど。
「お母さんー。お金ちょうだーい」
ひとまずは軍資金を調達すべく、甘い声を出しながら一階へと降りた。
「ふむ、話は分かりました。まあ行くのは前から聞いていたので良いとして、お金はね。別に今あるので良いじゃない?」
「え~、多分夜も遊んだりするから可愛い服とかほしいし、それに持って行けるサイズの化粧品とかさあ」
私にそう言われたお母さんはしばらく下の方を向いて黙り込み考えた。
「まあ、理香がそういったことに興味をもつのは、私はうれしいのだけど……。そう簡単にお金ばっかり出すわけにもね?」
それは、そうよね……。
「そうだ」
お母さんは顔を上げて時計を確認すると、何かを思いついたように声をあげた。
時計は11時半を示していた。
「理香、あなた昼ご飯作ってくれる?それが出来たら、考えましょう。出来ないなら無しです」
「待って、昼ご飯を……?私が作る?」
「そうよ?」
いやいや、それは……。
「お母さん、私が元々理久って知ってるのになんでそんな無茶を」
「『女らしさ』なんて言うわけじゃ無いけどさ、この先料理くらい出来ておいて損はないわよ?そのやる気を見ます」
つまり試されている……?
「わ、わかったわ」
断ったらその時点で軍資金は出ないだろう。
受けざるを得ない。
「そう。じゃ、出来たら呼んでね?私は仕事に戻るから」
そう言うとお母さんは自分の部屋へと戻っていった。
……さて。
昼ご飯かあ、私に作れるようなの何かあるかな?
カップ麺……、は作ったって言わないと思うし。
パックご飯と冷凍牛丼……、もダメだよねえ。
あ、袋のラーメンくらいなら。でも私がラーメンは……、エアコン効いてるけど、汗かきそうで嫌かも。
そうだ、素麺なら作れるかも。
だって茹でて冷やすだけでしょ?なんなら卵も焼いちゃおっかな、溶いて焼くだけでしょ?
楽勝、楽勝!
私は早速調理に取りかかった。
——ピピピピピピピピピ!
「えっちょっと!?もう茹で上がったの!早くない!?」
え、これどうやって冷やすんだろう。
説明もっかい見よう。
ふむふむ?
ざるにあげて水道で洗いながら冷やす……?
とりあえずざるにあげた。タイマーが鳴ってからもたついてたけど大丈夫だろうか。
ひとまず水道で洗い……。
「いや、水道の水ぬるいよ!?こんなんじゃ冷えないよ」
そうこうしているうちに、火をつけたままのコンロで焼かれ続ける卵がくさい匂いを出してきた。
麺はあと!先に卵!
それも、薄く焼くつもりだったのに、全部フライパンに流してしまったせいで厚くなっている卵。
「これ、ひっくり返るのかしら」
……どうやって?くさい匂いがするのに表面は半生よ?
とりあえず箸で掴んで、持ち上げ……。
「ちぎれちゃった……」
……。
ちぎれた卵をとりあえずひっくり返して、残りもまるごとひっくり返そうとするもひたすらそれを繰り返す。
薄く焼いた卵を細く切ったもの(名前は知らない)を作ろうとしていたけれど、これじゃ卵の破片だ。
「あ、麺」
もうよく分からないから、このまま氷水入れた器にいれてしまおう。
手で麺を器に入れながら違和感を感じる。
「なんかいつもより太いような……」
とりあえず出来た。
あ、めんつゆと水の用意もしてなければ、食器も出てない。
ああ、ネギも切ってないわ!?
気づいた残りのものをなんとか用意して、ようやく食卓に不格好な昼ご飯が並んだ。
「一応、食べ物には見えるけど……」
とりあえずお母さんを呼ぼう……。
気が重い。




