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双子まとめてTS!人生入れ替わりの二人を待つのは、恋の大嵐!【第一部完】  作者: 神流みさきち
第二部『揺れない恋頃、揺れるも恋心』第一章『流れる雨と認識』
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第18話 抱き合い、心の叫び

 一人で先に帰ってと言われ、言われるがままに帰路についているものの、後ろから人が付いてくる気配がする。

 気配がするというか、影で誰かが付いてきているのが見えてる。

 人……。理久が。

「ねぇ……」

 と言って振り返るも、当人も振り返って顔を見せない。

 せめて電柱に隠れるとか何かないの。さすがに後ろ姿じゃ丸わかりよ?

 気にせずに再び家へ向かって歩き出すと、後ろからも同じペースで歩いている音と、買い物の荷物が動く音が聞こえる。

「はぁ……」

 また後ろを向き、理久も後ろを向き。

 私はできる限り音を立てず、理久に近づいた。そしてなんとか気づかれないまま、すぐ後ろにたどり着くことができた。

 

 ——ぎゅうっ。


 強く理久を抱きしめた。

 綾ちゃんと何度もハグしていたら、こうすることで気持ちが落ち着くと思っていた。

 ……それはそれとしてドキドキもして、自分でもどっちなの?と思う。

「——ぎゃっ!誰!?」

「私」

「お姉ちゃん!?」

 驚いた理久は振り返ろうとするが、それは私がぎゅっと抱きしめて許さない。

 いや。許したくないんだけど、ちょっと、理久の力強すぎでしょ!

「ちょっと、そんな本気で逃げようとしないでよ!」

「だ、だって……。いきなりなんなの」

「理久……、無理してない?」

 ここ最近の理久はどう見てもおかしい。家族にこんなに続けて強く当たる事なんてなかったのに。

 この前、私に『軽い気持ちで……』なんて言っていたのも、きっと理久は悩んでいるんだろう。

「そんなこと……」

 理久は否定するけれど、そんなことないと思う。

「ちょっと、帰る前に私と話さない?」

 さらに抱きしめる腕に力を入れて『ね?』と念押した。

「…………、いいけど……」

「二人きりで話せるところがいいから……」

 まだ少ししか歩いていないので、駅前の商業施設が使えるけど……。カラオケ……、は無かったし。

 あ、あそこなら静かだしいいかな。

「付いてきて」

「どこ行くの?」

「秘密……」

 観念したのか手をつないで付いてくる理久は『変なとこじゃないだろうな』なんて言ってるけど、どこを想像しているんだか。


「カップルシート、とりあえず3時間パックで……。空いてますか?」

「大丈夫です。どこにしますか?個室もあいてますよ」

 姉弟でカップルシートとか、冷静に考えるとちょっと変かもしれないけど、ネットカフェに来た。

 ここは静かだし、二人きりで話せる。あまり声を張ることは出来ないけれど……。

 運良く個室も空いていたのは都合が良い。

 最初は家の部屋でもと思ったけれど、家だと特別感がなくて、なんだか真剣に話が出来ない気がした。

「何か飲み物入れてこようか?」

「なんでもいい」

 理久そう言い残すと、先に指定された個室へと向かった。

 さて。

 ドリンクバーを前に少し考える。

 こういう落ち着かせたいときは温かいものが良さそうなんだけど……、夏だしなあ。

 悩んだ結果、ココアとアイスティーと入れた。

 嫌がられたら交換したらいいからね。

「おまた……、せ。……くつろぎすぎ」

 理久は靴を脱いで二人分のソファに横たわっていた。

 飲み物を置いて、扉を閉めた。結構密閉されている感じがするので、あまり外に聞こえないかも。

 私は床にひざまづき、腕を理久の上にのせて体を寄せるようにした。

「理久……。何か不満なの?何かうまくいかないの?」

「…………そう」

「とりあえず、これ飲んで?」

 私は入れてきたココアを勧める。

「え?夏にホットココア……?まぁ、冷房効いてるし良いけど」

 理久は体を起こし、ココアを2口ほど飲んだ。

 たぶん、温かい飲み物で気持ちが少しは落ち着くと思うんだよね。

「普通のココアだね」

 別に面白い飲み物入れてきたわけじゃないからね?

 私は自分からこれ以上話しかけずに、理久が話し出すのを待つことにした。

 少し時間をおいて、さらにもう一口ココアを飲んだ理久が、口を開いた。

「お姉ちゃんは、もうお姉ちゃんだよね……。でも俺はそうじゃないんだ」

 男の子として振る舞えない、かと言って女の子として振る舞うわけでもない。

 すっかり女の子なお姉ちゃんはずるい、でもお姉ちゃんは頑張ったんだから、別にずるくないって分かってる。

 走るのは好きだった、でも頑張っていたらなぜか独りになっていた。

 大会にも出られず、もう何のためにやっているのかも分からない。

 ——理香だった頃に戻りたい。

 話しながら顔が下を向いていく理久の話は、そういう内容だった。

「そっか……」

 私のこの返事は、なにも考えてない返事なんかじゃなく、むしろ考えた結果の『そっか』。

 話を聞く限りでは、理久の心は今まだどちらでもない。

 そんな理久にはとりあえず具体的な回答よりも、同意的な……、それもぼかしたような言葉が良いと思った。

 この言葉には『そっか大変だったね』『そっか辛かったね』『そっか大丈夫?』なんて、いろんな意味にとれるはず。

「お姉ちゃん……」

 理久が顔を上げてこちらを見た。

「お姉ちゃん……。もう一度抱きしめて欲しい……」

「えっ」

 要求されると照れちゃうんだけど、理久はじっと私を見つめて私が応えてくれるのを待っている。

「……いいよ」

 

 ——ぎゅっ。


 ——ぎゅっ。


 今度は理久も力を入れてくる。ちょっと痛い、加減して欲しい。

「お姉ちゃん……」

「なあに?」

「今だけ、お兄ちゃんって呼んでいいかな?」

 私の心臓が跳ねたような気分だった。

 嫌だ、お姉ちゃんって呼んでほしい。お兄ちゃんだなんて寒気がする。

「……」

「だめ?」

「……いいよ」

 弱っている理久の声に私は観念した。

 なぜかは分からないけれど、弱っている理久はお姉ちゃんではなく、お兄ちゃんを求めているのだろう。

 その違いに何があるのか、私にはわからないけれど。

「お兄ちゃん……!」


 ——ぎゅううっ。


 抱きしめる力が一段と強くなった。痛い痛い!!

「お兄ちゃん!私、分からないの!どうしてこんなに一人ぼっちな気持ちなのか……。辛いの!」

 理久……。話し方、理香の頃に戻っているよ。

「助けてお兄ちゃん!」

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