第15話 評価の、評価会
「きゃあああああああ!可愛いぃぃぃいいい!」
「おぉぉぉぉぉ……」
「俺……もう満足してしまった……」
水着に着替えてプールサイドに出ると、綾ちゃんの悲鳴のような声と、男子達の喜びの声が耳に届いた。男子は照れてるのか視線外したけど……。
いや、綾ちゃんは一緒に買いに行ったし、そもそも更衣室も一緒でしょ?
……他の人が視界に入るのも悪い気がするし、見られるのも嫌だから隠れるように着替えたけど。
「うひゃあああ!」
——ザッブーン。
更衣室との出入口から咲恵が走ってきたかと思うと、そのままプールへ飛び込んでいった。
ああほら……。監視員に怒られてるよ……。
「私たちは準備体操してから静かに入ろうね」
「……そ、そうですね」
走って行った咲恵を呆然とみていた綾ちゃんと。
「も、もちろんだろ?」
「当たり前だよ」
咲恵を見て、すでに駆け込もうと姿勢が前傾になっている男子達が同意した。
思い思いに学校での部活、体育の授業やプールなどで行った覚えのある準備体操を行う。
なんかやること困るととりあえずアキレス腱伸ばす動きをして、やってます感だしちゃうけど……。これだとたぶん不十分だろうなあ。
周りを見て自分がやって無さそうなのを見つけると、それをまた見様見真似で行った。
「ちょっと~。なんで誰も付いてきてないのよ~!」
それぞれが体操はもう良いかなと思ったくらいだろうか、ちょうど咲恵が先に一人すでに濡れて近づき話しかけてきた。
「水の中気持ちいいよ、早く行こうよ!」
そう言って目の前で私の手を取ると、男子達もいるのに改めて気づいた様子を見せる。
「……あ、そうだ、君ら女子の水着に感想の1つも無いわけ~?」
とかなんとか言いながら腰に手を当て胸を張る。そして軽くポージング。こういうところ、多分今回の6人の中で一番浮いてるんじゃないかな……。いや、でも金山くんも軽いかもしれない……。
「え、あ……。そういうのは女子同士でさあ」
清水はしどろもどろしながら視線を外してそう言った。わかるよその気持ち。
でも、今の私は咲恵の気持ちも分かっちゃうんだよね。
「そう言わずに見てよほら」
なんて、私も両手を軽く広げて、全体が見えるようにして見せた。
「綾ちゃんもほら!」
咲恵が促すと『えっ、私もですか……』とイヤイヤ感を出しつつも手を少し広げて、背筋を張った。
「いや、ほら、そういうのは女子同士でやってもらったら……」
中村くんも視線は地面を見ながら乗り気ではない。
「男子の感想が聞きたいの!私たちは一緒に買い物したから、もう知ってるし」
「清水から言ってけよ」
と、観念したのか金山くんが清水に促した。
「えっと、えっと……。藤島さんはセクシーで、川田さんはなんか身長の割に大人っぽい、宮本さんは普通」
「50点」
「もう!身長のことは言わないでよ……」
「ふ……、普通」
身長は気にしてるのに……。絶対身長高い方がもっと好きな感じの服は似合うと思うの、分かってるから。
綾ちゃんは、普通と言われてショックを受けてる。普通って、似合っているって事じゃないの……?
本人は『ちょっと冒険してみたのに……』とか言ってるけど、そんなに派手でもない。私が薦めてみた中の1つで、お腹も全部隠すキャミソールとミニスカートみたいな水着。
もしかしてワンピースタイプ以外は、綾ちゃんにとって全部冒険なのかな。
「次、中村な、俺最後」
おや、自分を最後に回すなんて、金山くんは自信があるんだろうか。
「えっと、そうだね……。みんな『らしく』て、似合ってるよ。か、かわいい、と思う」
そう言って照れてる本人が可愛いよ。
でもなんか無難っぽいコメントだけど。果たして咲恵の採点は——。
「100点」
「ええ、嬉しいですね!」
綾ちゃんも満足げな様子でニッコニコ。……で、なんでこっちを見てくるの。
「そ、そうね」
「ね!」
そういって来た綾ちゃんにとりあえず同意しておくと、咲恵もそれに乗ってきた。
正解だったのかな。このあたりの感覚はまだ女の子になりきれてないのか、それとも個人の感覚の違いなのか……。もうそのあたりの差は分かりづらいね。
「では、最後に自信満々の金山くん、どうぞ!」
咲恵が手をひらりと少し前に出し、感想を促した。たしかに金山くんは自信満々の表情をしているようで、何を言ってくれるのか私少し楽しみにもなる。
私は意地悪く笑みを見せてその感情を言葉にした。
「楽しみね」
「そうですね」
綾ちゃんも、同じようだ。
「では……」
金山くんは背筋を伸ばし『コホン』とわざとらしい咳払いをして続ける。
「藤島さんはパンツのラインがすごくエッチで、川田さんはそんな水着でもおっぱいが大きくてエッチだね。宮本さんも頑張ってるよ」
うわあ。これは酷い。やっぱり金山くんは陽キャじゃないの?それもかなり残念で駄目なタイプの。
綾ちゃんとか上から目線で言われて、もはや可哀想だし……。
この酷いレビューに対する咲恵の評価は——!
「失格!次の大会への参加資格は剥奪だからね!」
……大会だったの?
「頑張ってるって、なんでそんな上目線で言われないといけないんですか……」
「私も……、胸だけ見られてるみたいで最悪な気分よ。最低ね」
一緒に酷評しておこう。女友達とは同意がきっと大事。
……実際、良い気分じゃないし。せっかく、全体が綺麗に見えるような水着選んだのに。
「え、ダメなの?これ?」
「ダメだと思うよ、さすがに無いと思うわ」
「僕が聞いても、女子が可哀想だなって思うなあ」
他の男子にも酷評されてるじゃないの、ちょっといい気味。
「え、あ~。とりあえずプール入ろうか」
「あっ、逃げた!」
金山くんがその場に居てられずにプールへ向かったその時。スピーカーから流れている音楽の音量が小さくなった。
『ただ今から、11時ちょうどまで休憩時間となります。プールの中に入っている方はプールサイドへ上がってください。繰り返します——』
金山くんの逃走路を塞ぐ、無慈悲なアナウンスが施設内に響いた。




