第14話 いきなりの、猛攻撃
待ち合わせは最寄りの鉄道駅、私は一番最初に来ていた。
次に改札口に見えたのは清水だ。私を見つけるなり走って近寄ってきた。
暑い中よく走ろうと思うわね……。
「あ、まだ川田さんだけか。暑いね~、理久のやつもこれば良かったのになあ」
「理久は最近なにか変なのよね~。いつもツンケンしていてね」
「あ、えっと。今日は俺みたいなやつ誘ってくれてありがとう」
あ~、分かる分かる。理久の頃なら同じ反応してたかもしれないなあ。
「そんな卑下しないでよ、友達でしょ」
「友っ……。そ、そうだよな、友達だもんな」
なんだ今の間は……。
「あ、理香お待たせ~」
「まあまだそんな待ってないよ」
あとはクラスメイトと綾ちゃんか。
「今日ってもしかして俺、ハーレム?」
「残念!あと二人男の子くるよー」
しばらく待つとクラスメイトの男子が来た。
……おや?
「もっと陽キャっぽいのが来ると思ってた。『チィース』って言いそうな」
「……理香そういうの苦手でしょ?金山くんと、中村くんね」
髪の毛の色と言い、咲恵はとことん私に合わせてくれているようだ。
咲恵が紹介すると、二人は私と清水の方を向いた。
「金山ですよろしく。……といっても川田さんはクラスメイトだし、清水も去年同じクラスだったから、別に初めましてって訳でもないんだけど」
「僕は……清水とは初めてかな」
クラスメイトといっても本当関わってないから初対面みたいなものなんだけど。
「いやー、川田さんと一緒にプールなんて嬉しいなあ」
「金山く~ん?理香をそんな目で見ないでくれる~?人選ミスしたかな~」
金山くんの言葉に、夏なのに寒気がしたわ。
そんなとき小さく『理香先輩~』といういつもの可愛らしい声が聞こえてきた。
声の方を振り向くとだいぶ遠くから綾ちゃんが近づいてくる。それも普段の綾ちゃん比で凄い勢い。
「あ、綾ちゃんだ」
咲恵もそれに気づく。
「え、あの子この暑い中を猛ダッシュしてこっち来てない?疲れるだけだろ……」
猛ダッシュというか……。え?なんだか凄い怖いんだけど。表情が。
「理香先輩ぃぃいいいい!」
思ってた感じと違う!可愛らしくない!
「理香先輩の馬鹿ぁああああ!」
綾ちゃん目の前に来るなりそう叫び、『はぁ……はぁ……』と息を整えようとしている。
「えっ、私なにかした?」
「分かってないんですか!?え?藤島先輩言ってないんですか?」
えっ?
「何、咲恵は知ってるの?」
「知ってるというか……、知ってしまったというか……理香が悪いというか」
綾ちゃんを見るとメチャクチャ睨んできている。
「理香先輩、なんで私を誘ってくれなかったんですか!?」
ええ?
「誘ったから居るんでしょ?」
「……違います。藤島先輩が教えてくれたからですよ!」
「やれやれ、ってね。私が集合時間の連絡して、初めて知った見たいだよ?」
嘘……、私は三人に誘ったような?
ふと清水の方を見ると他の二人と『え、喧嘩?』『俺らどうすんの』とか話していて、いたたまれないようだ。
「えっ、ごめんなさい綾ちゃん」
当人の二人が言うからには恐らくそれが正しく、私には謝ることしか出来ない。
「理香先輩なんか嫌いです……!」
その言葉を聞いた咲恵は何やらガッツポーズ。
「えっ、そんな。嫌わないで……」
面と向かって嫌いとか言われるのは辛い。
その私の言葉を聞いた綾ちゃんは、急に表情を変え、にこりと笑って私にお願いをしてきた。
「じゃあ……。正面からハグして、ほっぺにチュッて、してくれたら許してあげます」
「——綾ちゃん?」
「——綾ちゃん?」
「——えっ、ガチ百合?」
「マジかよ……!」
「だったら俺の方が良いんじゃ無い?」
私、咲恵、清水、中村くん、金山くん。綾ちゃんの言葉に皆多様な反応を見せる。
……金山くんやっぱりチャラい系じゃないの?
「あれ……?してくれないんですか?」
「綾ちゃんそれはずるいでしょ!」
……ずるい、とは?
「もう。仕方ないなあ……」
——ぎゅっ。
私が綾ちゃんを抱きしめると。
——ぎゅっ。
綾ちゃんも私を抱きしめてきて。
——チュッ。
綾ちゃんが唇を私の唇に近づけてきて——!
な、な、な……!
私の頬にキスをしてきた。
な——!?
ええっ?
あああああ!?
そして、私にだけ聞こえる声量で、綾ちゃんは呟いた。
「私は、先輩の性別なんて、もうどちらでも良いんですよ」
どういう意味なの?そもそも頭がまわらない。
綾ちゃんの手が緩んだ事にも気づかず、私は固まってしまう。
「ふふっ、許してあげます、理香先輩♪早くプール行きましょ?暑いですし」
私の手を押しのけて、綾ちゃんはバス停へと向かっていった。
男子三人衆が綾ちゃんへついて行き『なあ、今キスしてなかった!?』とか話しかけている。
「り、理香……?」
呼ばれてるのは分かるけど、体が動かない。
「理香って!」
咲恵に両肩をつかまれ、揺らされ、ようやく自意識がしっかりしてきた。
「あ……?あぁ……」
「理香大丈夫?」
「本当にキスされるかと思った……、まだキスしたこと無いのに。でも頬にされた……、どういうこと……」
そういうことなの?
「ちぇっ、そういう事なんでしょ。綾ちゃんは」
「私にまたお姉様をやれって……?」
私が1つの可能性を口にすると、咲恵は目線を私から外して少し考えるような仕草をした。
「結局そういうことじゃない?前もそうだったんでしょ?じゃあ今回もきっとそうだよ、綾ちゃんも自分勝手だよね~」
まくし立てるように咲恵が私の言ったことに肯定してきた。
「ほら、私たちも行こっ。バス逃したら30分待ちだよ」
咲恵が私の手を取り、バス停へ移動するようにと促す。
小走りで向かい、バス停についた頃には丁度バスが到着していた。
その間にバスを待つ列は伸びていて、私と咲恵は綾ちゃん達と少しはぐれた箇所でバスに乗った。
今はそれで助かったかも知れない。




