表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/57

第41話 あまい紅茶と、ビターな心

 図書室を後にした私は、学校を出た所で多賀先輩に通話をかけた。

 呼び出し音を聞きながら、それでどうしようかと考える。電話口で言うのは違う気がするので、やはり今日直接会えないか聞いてみようかな。

『多賀だが。川田さんかい?』

 ——出た!

「あ、川田理香です。せ、先輩、あの今日会えませんか?」

『今日……?さすがに急すぎるけど、どうかしたのかい?』

 どうかしたかを電話口ではさすがに言えないから会おうと思っているのだけど。

「ええと、それを今はちょっと言いづらくてですね……」

『しかし私もテストが終わった直後だから羽を伸ばしたくもう外で遊んでいるんだよ』

 先輩もそんな事あるんだ。

 なんだか急に聞こえにくくなった電話口から『おい!私の分を置いておけ!それのキャラのグッズを私の目の無いところで買い占めようとするとはいい度胸だな!!』という久々に先輩のオタクな会話が聞こえてきた。

 この途中でさらに話しかけて向こうの楽しみを奪うのは、同じオタク気質としてやっていけないことだと分かる。

 私はしばらく待つ事にした。

 本当にしばらく待った。

 しばらくというか、かなり待った。

 『いや~、買った買った。すまない。電話の途中だったね。一度切ってかけ直すべきだったよ』

 いえいえそんな、大丈夫ですよ……。

「ええ、20分は待たせすぎでしょ。電話代請求したいレベル」

『心の声が漏れてるよ』

「ああっ!?すみません!」

 そんなミスをまさか実際にやるとは……。相当、この後に向けて緊張なり動揺なりしているのかも知れない。

『それで会いたいって?ははは、嬉しいね。もう用事も終わったしかまわないよ。今どこにいるんだい?まだ学校付近ならこの前の駅前に来てくれるなら待ってるよ』

「じゃあ、今すぐいきます」

 私はできうる限り走った。

 この体にも慣れてきた。この体はどれくらいの早さでなら走り続けられるのか、おおよそは分かってきたし、どれくらい息が上がれば限界かも分かってきた。

 ……いずれにしても大して走れないんだけど。

 四百メートルくらい走っては少し歩いてを3回ほど繰り返して、駅前が見えてきた。再度駆け出して駅前の広場へ向かう。

 先輩がすんごいニコニコしている。

 やはり私のことが好きなのかな?これはうまくいくのかも知れない。

 そしてそこでもう心を拒まないようにするんだ、おそらく先輩を前にして起きるあらゆる変化は、先輩を意識して……言い換えると好意的に見ているから起きることに違いない。私はもう自分を欺かない。

「はぁッ……、はぁッ……」

「走ってきたのかい?まあここに座るといい」

 先輩は自分が座っていたベンチがら立ち上がり譲ってくれた。遠慮無く座ることにする。

 お礼を述べたいがなかなか息が整わない。

「無理して今話そうとしなくてかまわないよ。それで、『会えますか』なんて驚いたよ。おそらくただ私に会いたいって訳じゃなく、話をしたいのだろう?」

 私は首を縦に振る。

「そうだよね。でもこんな場所でいい話なのかい?」

 そう言われて、辺りを見回すと、1回目の下校ピークと2回目の下校・大人の帰宅ピークの間とはいえ、当然駅前だけあり人の往来は少なくない。

 首を横に振る。

「じゃあ付いてきて。人が少なくて落ち着ける場所へ行こう。ほぼ二人みたいなものだよ。狭いわけでもないし」

 ……人が少なくて、二人で、落ち着ける。え?どこ行く気?

 先輩について行くとメインの商店が並ぶ通りから一本入った道を進んでいく。

 古びた雑居ビル、それより前からあったような昭和に建ったような住居と一体になった商店が並んでいるのが見える。

 その奥にはホテルが数棟見える。学校最寄り駅なのになんであるんだろう。学校のが新しいのかな……。それとも結構駅から学校離れてるからかな……?

 というか先輩は本当にどこ連れて行くつもりなのよ!

「ああ、ここだな」

 そういうと先輩は雑居ビルの階段を上がっていく。特に大きな階段も無かったけど。

 二階に上がった先輩が、古く重そうな金属製の扉の前に立ち「ここだよ」と教えてくれる。

 たしかにここら一帯で人は急にいなかったけど。……ここは何?

「ああもう、チラシくらい取れよ……」

 先輩らしくない口調で扉の郵便受けパンパンに刺さったチラシを抜き取ってその扉に手をかける。

 よく見ると扉には可愛らしい文字で『Sweet Tea, Maid MAKI』と書いてあった。

 まさか。

「お帰りなさいませ、ご主人様~!」

 ああ、予想通り可愛らしいメイドさんの声が出迎えた。声に負けず姿も可愛らしい。

 声の後に一人のメイドさんが出てきた。スカートこそミニだけど、スタンダードな紺色のメイド服を身に纏い、そこから伸びる四肢も適度に細く、きれいな肌。腰まで伸びた茶色がかった髪は、前髪もまとめて後頭部で一度まとめられているが、それでも艶よサラサラ感をとても感じさせている。

 ……一人?こういうところって複数人いるんじゃないの?

「叔母さん、チラシくらいとりなよ」

「何よ、岐美じゃない。というか叔母さんというなと何度も言っているでしょう」

「分かったよ真樹さん」

 真樹さんというらしい。……え?叔母?すごい若そうだけど……。

「叔母とかご冗談ですよね?20前後に見えますけど……」

「あら、ありがとう。そういうあなたの肌は30前後に見えるわよ。ちゃんとケアしなさい」

「……真樹さんは50手前だ」

 え、言っていいのそれ。

「乙女の秘密をバラすな!」

 私もそれは駄目だと思う……。

「で、真樹さん。ちょっと俺はこの子とゆっくり話ししたいからさ。ちょっと奥行っててくれる?客来ないし落ち着けるからちょうどいいんだよね」

「失礼な子だね……。二人で乳繰り合いたきゃ、もうちょっと向こうにあるホテルでも行きなさいよ」

 なんてことを言うのよこの人!さすがにそこまで女である覚悟はまだ無い!

「そういうのじゃ無いんだよ!……ごめんね川田さん」

「わかったわよ、せめて何か頼みなさい。一応メイドカフェなんだから」

 そう言ってメニューを2つ出す。

 ■コーヒー■

 ブレンド350円。

 カフェオレ400円。

 

 ■紅茶(ストレート、レモン、ミルク) ■

 ダージリン500円

 アールグレイ550円

 アッサム500円

 ファーストフラッシュ(+400円)

 …………などなど。

 メイドカフェ……?

 定番のオムライスとかも無いし、値段設定も全然メイドカフェじゃない。むしろ何十年も昔の純喫茶のようなのような値段……。

「俺ブレンドのホット」

「お茶頼みなさいよ」

「甘いしヤダよ」

 そういえば扉にTeaて書いてあったわね……。

「私、アップルシナモンティー。ダージリンで」

「川田さん……、チャレンジャーだね」

 え?お茶おすすめなんじゃないの?

「甘さはどうされますか、ご主人様」

 一応メイドカフェ設定なんだ……。

 なにこれ、インドカレー屋の辛さの表みたいな……。

 

 チャイルド(なし)……お子様ですね^^

 ライト……抑えめ。

 マイルド……ふつうです。

 セミスイート……甘め。

 スイート……おすすめです。

 ヘビー……当店のメイドおすすめ!

 アルティメット……極みのあなたへ。

 アンリミテッド……まるでジャム。


「……スイートで」

「ありがとうございまーす!」

「正気か!?」

 え?先輩に驚かれた。

「えっ、だっておすすめって……」

「悪いことは言わないから、ライトかチャイルドにすることをおすすめする」

「……ライトで」

「あら、残念ね」

 ああもう。先輩が妙な店連れてきたせいで私の真剣な気持ちが薄まってしまった様な気がする。

 

 

書いてて楽しいことを優先してしまうせいで、

どうしてもサブキャラが癖強に

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ