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第37話 テスト期間は、心の休息

 翌日、テスト期間なのを良いことに即帰宅、綾ちゃんと多賀先輩に顔を合わせないようにした。

 その翌日も、また翌日、翌日と。気がつけば金曜日だ。


 かと言って勉強に集中したのかというとそういうわけでもない。

 リビングのソファーに部屋の床、ベッドでゴロゴロと何をするでもなく転がっているだけ。


 月曜にしていた自身への問いも、日を重ねて考えることに疲れてしまい、今はただぼうっとしている。

 綾ちゃんの方はまだよかった、嘘だったと言うだけでいいのだから。と言いながらも今日まで百合百合したイチャメッセージを送り合っているけれど。


 問題は多賀先輩の方で、こちらは対処方法が見当たらない。

 受け入れるのは嫌。でも、単に断ったところで言い寄られると心の何処かが勝手に受け入れてしまう私が居る。


 それに断る理由が説明できない「嫌いだから」は出来ない。それは嘘だから。少なくとも頭でも好きじゃないだけで先輩としては別に嫌じゃない。


 手っ取り早いのは「TSした元男で、まだ日が浅い」とか説明しちゃうこと。

 理解はしてもらえるとは思うけれど、それでは認識がどうこうとか、何がどうなるのか分からないという懸念もありとても試せない。


 一週間、ずっとこんな感じで考えは堂々巡りして答えは出ていない。

 何もしていないので、理久にも「少しくらい勉強したら?」と言われてしまった。まるで立場が逆だわ。


 実際、役割が逆になっているのでそこまで間違いではないのだけれど。

 そんな中でも綾ちゃんからのメッセージは届く。


『お姉様、今なにされてますか』


 内容はこればかりだ。


 私は『テスト対策よ。綾もしっかりね』と返した。どの口が何を言っているのか自分でも苦笑してしまう。


『流石はお姉様様ですね、みならいます』


 それが会話一覧の最新メッセージに出たのを見て、メッセージアプリ閉じようとした時に、ふと多賀先輩との会話履歴が目に入った。

 連絡先を交換したときの内容だった。その後先輩からも私からメッセージのやり取りはない。


 流石に綾ちゃん居るのに私からは積極的に送りにくいなあと。


 でも、そもそも私から連絡先交換してもらったし、また誘うって言ったし。

 ……いや、私そんなこと言った?


 咲恵がそれと同義だって言っただけで……、ああでもその後にそれを理由に出したから出かけるって言ったようなものかも。


 早く終わらせてしまおうかな。


『こんばんは先輩。テスト最終日、2人で遊びに行きませんか?』


 これでよし、すぐに返答も来るんだろうなあ。

 そう思っていた返事は一向に来なかったし、なぜだか綾ちゃんからのメッセージも来なくなった。


 綾ちゃんからのメッセージもなく、多賀先輩とは遊ぶ日が決まってしまったからか、ようやく勉強が手についたわ。


 土日は姉弟2人して部屋に閉じこもりきりだったので、親に少しは外へ出ろといわれるほど。

 理久の事も避けた。せっかく勉強に集中できていたのに、先週のことを思い出して、また思考の海に落ちたくはない。



 月曜日、電車にのると咲恵に出会う。先週からテスト期間なので咲恵や理久は私と時間が同じになっていた。


「おはよう理香、テストどう?あ~しは全然ダメ!」


「ダメも何も勉強してないんじゃないの?」


 さすがに二週間以上も経てば、咲恵との日常会話にも慣れてきた気がする。


「流石に一人ならもうちょっとちゃんとするよ?……1時間くらいは?」


「よくそれでこの高校に来て授業ちゃんと聞いてるわね」


 ここ最近見ている分には、別に咲恵は授業中に他のことや居眠りなんかはしていなかったと思う。


「授業はまあ……人の話聞くのは嫌いじゃないからかな……。せんせーの話聞くの好きなんだ~。高校入試は……必死だったよ、流石にね。もうやりたくない」


「授業の話を好きで聞けるなんて、じゃあ訳分からないって事もないの?」


「そうだね~、全然分からないってことはないけど、自分で思い出せって言われると思い出せないし、それ使ってなんか解くとかも無理~!」


 ある種の才能かな、人と接する仕事とか向いてそう……。


「ん?でも、だったら誰かと勉強してそれ教えて貰ったらいいんじゃないの?」


「先生くらい上手に話せるならね?」


「俺が教えようか?」


 二人で話していたところへ理久が入ってきた。

 理久……、あなた本当に教えられるの?


 成績がいいことになってるから口には出さないけど、まだ2週間による付け焼き刃でしょうに。


「理久くんが?嬉しいけど……、いいの?」


「あっ、咲恵。私が教えてもいいけど……まあよかったら今日ウチ来なよ」


 咄嗟に誘ってしまった。


「う~ん、まあどうせ家で勉強するわけでもないしな~。理香んち行ったら理久くんもいるし、どっちからも教えてもらえるね」


「誰にも内緒でね。ほら、一応テスト中だし」


 午後咲恵が来ることになってしまったので、せめて他の今会いたくない人たちと出会わないよう、釘を刺しておいた。


 

 午後。

 午前のテストも終わり、昼休みに入った。


 午後は自習なので別に帰ってもよいのだけれど……、咲恵次第かな……。


「咲恵~」


 私は咲恵の方に向かう。


「あ、理香。どうしたの、帰る?」


「それなんだけど、咲恵が先生の話がわかりやすいって言うなら自習時間の間は学校でやる?」


 咲恵は「あ~……」と言って考え込んだ。

 とりあえず昼ごはんでも食べようかなと思い、私は鞄からお弁当の包を取り出した。


「あ、まって」


 それを先に止められた。


「帰る?」


「そうしよ。2人で教えてよ」


 理久にどこまで教えることが出来るのか、ちょっと楽しみ。

 私達はその理久に声を掛けて帰路についた。


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