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第29話 トライアングル、ダブルデート(5)

「この後どうしようか」

 私は全員へ問いかけてみた。皆が考えているさなか、私は先程の状況を思い返していた。

 あれから、2ゲーム目が始まったものの、理久はすぐにトイレへと向かってしまっていた。

 佐々木さんは確実に分かっていて仕掛けてるな……。

 綾ちゃんは相変わらずだし、そうなると私は多賀先輩と実質二人きりだ。それでは私も理久とは違う理由で心が持たない。心が持たないことを自覚するのが嫌というか、恥ずかしいというか、気持ち悪いというか、なんだかよく分からない気持ちにさせられる。

 よってゲームにならないということで切り上げることとなった。

 なお、咲恵だけは元々の性格からか、誰とでもその場を楽しく遊べるので問題なさそうだった。相手をするとテンション高すぎて大変だけど、その性格は羨ましいとも思う。

「おやつにしようよ、私は新作のドーナツが食べたいな~!」

 スマホで時間を確認すると、ほぼ16時。おやつ時というにはやや遅いがまあ、無くはないかなといった時間だった。ドーナツと聞くと小腹も空いてきた。

「私も、それでいいよ」

「川田さんも望むのであれば、問題ない」

 そう言った多賀先輩と、もう一人私の近くにいる綾ちゃんに目を向ける。

「た、食べますよ。ここまで来たら在庫食い尽くす勢いでいきますよ。食べ放題はないんですか?」

 頭がまだ元を取るために食べ続けた蕎麦屋のままなんだろうか。不憫な……。

「ふ、普通のドーナツ屋だから……。食べた分だけお金かかるよ」

「うう。あ、そうか……」

 ま、まあ本当に食べられるのかどうかはともかく構わないようだ。

「お姉ちゃんのほうも全員それでいいって?」

「ええ、いいみたいよ。一人食べるか怪しいけど」

 私がそう言うと、綾ちゃんを除く全員が綾ちゃんを憐れみの目で見る。

「な、なんですか、そんな目で私を見ないで……」

「綾ちゃんだっけ?話せるなら店ついたら私とも話そ!いい?」

「いいですけど……」

 咲恵のハイテンションにギャルが組み合わさったような性格と、『基本的』には物静かな文学少女のはずの綾ちゃん。

 何の話をするんだろうか……。

『基本的』じゃない話、つまり綾ちゃんの百合部分をつつくなら勢いで負けることはなさそうだけど。

「私は是非弟君と話をさせて戴きたい。構わないだろうか?」

 それに合わせるよう多賀先輩も話したい相手を主張した。理久は「え、俺ですか……?」と驚きながらも了承していた。

 私はまあ、特に何も考えない。……いや、気になるから綾ちゃんの傍にいようかな。


 ドーナツ屋に付き、各々にドーナツを取りいざ会計、というところで、多賀先輩はまたイケメンムーブをしていた。

 このバラバラにトレイ持って会計しようって状況でよく全員分払うって出来るなあ。

「蕎麦の分取り戻さないと……!」

「綾ちゃん……!?」

 一番最後に並んでいた綾ちゃんが慌ててトレイからこぼれるほどに山積みにしだした。

 なんで綾ちゃんは時々常識のネジを外すの……。

「理香先輩、見過ごしてもらえませんか……!」

 私が自分を見ていることに気づいた彼女は黙っていてくれと言ってきた。

「いや……え?食べるの?」

「食べます!」

「ああ、構わないよ遠慮しないでくれ」

 ああ……、支払い者のお墨付き出ちゃったわ。

 それを咲恵と理久がじゃあ私も俺もともう一度並び直している。

 君らねえ……。

 

 二人用のテーブルを3つ繋げて6人で座った。私を一方の真ん中に、左は多賀先輩、右は綾ちゃん。向かい側は左から理久、佐々木さん、咲恵。

 佐々木さんが少し困った顔で目の前に座っている。

 分かるよ、私達二人にはあまり話すことないよね……。私はどちらかというと気になる、綾ちゃん達の会話に耳を傾けることにした。

 もぐもぐもぐもぐもぐもぐ——。あむ、もぐもぐもぐ……。

 ガブガブガブガブガブガブ!ガッガツガツガツ……!!

 しかし、二人とも食べ続けていて喋ってない。私は多賀先輩へ確認し、二人へ助け舟をだしてあげた。

「二人とも……。いま全部食べなくても、余ったら持って帰っていいって多賀先輩が」

「え゛っ!副会長、神~!」

「副会長さん、たんなる変人じゃなかったんですね」

 ……今日の綾ちゃんを見てると、多賀先輩より君のほうが変だけどね。

「そもそも咲恵は、綾ちゃんになにか話したいことがあったんじゃないの?」

 すっかり忘れて食べるのに夢中だけど。

「あ、そうだった!ねえね、綾ちゃん?『私の理香先輩』とか言ってたけど、理香の事が好きなの?どういう好きなの?」

 ド直球————!!

「咲恵もうちょっと遠慮してあげてよ!綾ちゃんのためにも、私のためにも……」

「ああ、理香もいきなりそんな事言われてもだもんね?っていうか知らなかった?」

 正直、怪しんではいるけど。

「少なくとも百合作品好きっていうのは知ってるし、私に対してなんだか普通じゃないな~とは思ってたけど、まさかそうだとは思ってない……かな」

 いや?でも女の子から言い寄られるのは私の心的には嬉しいはずだし、嫌ではない。ないが……、だったら理久のときに言ってほしい。けど、綾ちゃん的には理久には興味ないだろうしね。

「ちっ、違いますよ!私はただ、私の趣味を知っても仲良くしてくれる理香先輩ともっとお話したいだけで……。そんな理香先輩とあんなことやこんなことをシてみたいだなんて、ちょっとしか考えてないですよ!!」

「そうだよね、楽しい文芸部仲間なだけ……いやいや。少しも考えないで?」

 公共の場で何を言い出すのよこの娘は。言われただけで顔が赤くなる。

 ……おかしいな?理香になって約一週間、心もだいぶ変わっていると感じる。多賀先輩の言葉で心を揺らされたり、下ネタで顔を赤くしたり……。これも神様が認識を都合よく変えたせいなのかな……?

「そんな事言っちゃって~、結局は理香と長いこと一緒に居てたいってことでしょ?そんなの、好きってことじゃん~」

 やめて、綾ちゃんをそっちへ誘導しないで!もう私の心は精一杯なのに……。

「そう……ですかね?でへへ……」

 ちょっとほら、綾ちゃんヨダレ垂らして絶対脳内でトリップしてるじゃない。

「はあ。そういう咲恵は?デートとか言って結局みんなで遊んでるだけだけどいいの?」

「そりゃあね、二人で遊べたほうが良かったけどさ~。これもまた楽しいしおけおけ!また今度誘い直せばいいし!」

 強いなあ、これが陽の者かな。

 ——ヴヴヴ!

 そう言った彼女が再び綾ちゃんに話しかけた時、私のスマホに通知が来た。メッセージアプリだ。

 ”理久:たすけて”

 !?

 体を右側から左側へと向きを変えると、そこには2方向からの攻めに困り果てた理久の姿が。

「先ほどはお義兄ちゃんと言ってくれたではないか!あの時の気持ちを語ってくれたまえよ!」

 前のめりになって両手をテーブルに突き理久へ話しかける多賀先輩の姿。そして——。

「ねえ、川田くぅ~ん、こっちのも美味しいよ~。あ~ん」

 手紙の中身を言うのを躊躇っていた態度はどこへやら、また体をよせて理久に仕掛ける佐々木さんの姿があった。

双子以外がクセ強くて長引いでますけど、そろそろ(劇中の)時間的にもデート(?)終わる……はず。


ごめんなさい!いつもの時間に上げるの忘れてました!

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