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第22話 ふれあいは、三者三様

 翌日、結局お腹と腰の痛みで学校を休んだ。

 咲恵に今日は休むねと、メッセージを送ったら「理久くんがいるから全然いいよ!」という返事が来た。

 いやいや、咲恵が寂しいかなとかが心配で送ったんじゃないんだけど。そこは一応「大丈夫?」って聞くところでしょうよ。

 布団に入って温まっていると、気持ち楽な気がする。

 今日休んだのは丁度良かったかもしれない。正直な所、昨日の放課後は精神的に疲れた。露骨に私を狙っている多賀先輩に、姫扱いする松川先生。それに便乗する1年の後輩たち。さらには百合好きで、私が来るの遅いと怒ってるちょっと怖い綾ちゃん。

 癒しは清水だけじゃないの。清水と話したいなあ……。ただただ趣味の話を普通にしたい。ああでも、このスマホじゃ連絡先分からないや。理久に聞いて教えてもらう形をとろう。

 理久にメッセージを飛ばして、もう一眠りした。


 休み時間にスマホを見るとお姉ちゃんからメッセージが来ていた。

『清水と話がしたいから連絡先教えてほしい』

 えっ。う~ん。

 お姉ちゃん、たぶん話相手が欲しいんだろうけど、自分の置かれてる立場わかってないんだろうなあ。……というのも。

「——なあ、この学年で誰かと付き合えるとしたら誰が良い?」

 ほら、また話題に出そう。少し離れた所に居る男子生徒数名が女子について話している。

「え、そりゃあ隣のクラスの藤島さんかな」

「お前ギャル好きかよ~。俺なら西川さんだなあ。スタイル良すぎ」

「僕は絶対、川田さんがいいな。ちょっと背が低いけど、あの胸、絶対おおきいよね。揉みて~」

『だよな~』

 ……思ったよりゲスい。

「理久とか姉ちゃんだろ、おっぱい見たことあんの?」

 話をこっちに振るな!!

「あ、あるわけ無いだろ、何言ってるんだよ」

「怪し~」

 まあ実際は見るどころか触ったことあるけどね。はあ。

 こんな中で清水くんに確認取るのもなあ。まあでも頼まれちゃったし、伝えるか。

「なあ清水。ちょっといいか」

 少し離れた席にいた清水がその場で返事をしたので、こっちに来いと催促する。

「なんだよ」

「お姉ちゃんがさ、清水くんの連絡先が知りたいって。たぶん趣味の話し相手がほしいだけだと思うんだけど」

 そういうと清水くんは「あ~」と納得したような声を上げた。

 俺は話しながら、清水くんにお姉ちゃんの連絡先を伝える。

「なにか心あたりでもあるの?」

「心あたりって程でもないんだけど、昨日パソコン部へ来てくれた時に言ってた趣味だとまあ、話合うだろうなあって……おっと」

 そこでチャイムが鳴ったため、清水くんは自席へ戻った。早速連絡を取っていたその姿はなんだか嬉しそうに見えた。

 清水くんもゲス男子側?

 いやゲスいなんて言ったらだめなんだろうな、たぶん健全な男子なんだ。俺もいつか健全な男子になったりするんだろうか。その時、女子に興味持っちゃったりするんだろうか。

 ……いやいや、想像つかないわ。口調は男子っぽく話せる時もあるようになってきたけど、心は女子のままだからな?きっとお姉ちゃんもそうだろう。……子供作る気ないって言ってたし。


「おい、これ見てくれよ」

 昼休み、清水くんがスマホの画面を見せてきた。そこにはメッセージアプリでお姉ちゃんとのやり取りが見える。

『川田さんが俺の連絡先を知りたいと、理久に聞いたのでメッセージしました。よろしく!』

『よろしくね。最近見たアニメとかさ、そういう話したいのよ』

『(いいねイラスト)』

『最近っていうか、昨日のやつ見ました?』

『あ~、昨日は生理でお腹とか痛くて……。っていうか今もそれで休んでるんだけどね』

 お姉ちゃんさあ……、羞恥心をさあ……。

「お前の姉ちゃんなんでこんなあけすけなんだ?普通こういうのって隠したがらねえ?どうやって返したものか悩んでここで止まっちゃったよ」

「詳しくないけど、女子はそうだと思うよ」

 本当は詳しいけど。普通はぼかすよ。

「だよなあ……。見なかったことにしてそのうち別の話題ふってあげるか」

「それが良いと思うな。清水優しいじゃん」

「オタクとは紳士ですから」

「走るなって言っても通路を走るオタクとか、入るなって言っても線路に入るオタクとか、コール禁止つってんのにコールするオタクとかは?」

 適当に、聞きかじったマナーの悪いオタク像を並べてみる。

「そんな輩はオタクとは認めないよ。オタクに限らず、趣味は人様に迷惑をかけずに楽しむものさ」

 かっ、かっこいい~。内面だけ。


 理久になってからの学校生活三日目にして、だいぶ慣れてきたのか事細かく困りごとや問題ごとが起きることはなくなってきた。

 もっとも困ってるのはこの時間。……部活だ。

「理久く~ん!今日も頑張ろうね~!!」

 部活っていうか咲恵に困っている。少しでも隙を見せると話しかけてこようとする。別に少しくらいならいいんだけど、咲恵は明るすぎてちょっと疲れるし、そもそももっと練習に集中させてほしい。

「理久くん!昨日テレビでね——」

「聞いてよ、昨日うちの親ってば——」

「ねぇ理久く~ん、今度の土曜遊びに行かなーい?12時に駅前ね!」

 あぁもう!

「はいはい、分かったから!向こうで練習きなよ、俺ともそもそも競技種目違うんだからさあ」

「はあい♪」

 全く……。昨日もこの調子だったから部長に注意されてるのに。ましてや俺は新入部員だし。

 今日はスタートの練習でもしようかな……。俺はスタブロを用意し練習に集中した。


 下校時間になると、咲恵は居なかった。あれだけ話しかけてくる割には、帰りは大体居ない。たぶん途中で帰っちゃってるんだろうけど。

「お。理久!」

 靴を履き替えて校門へと向かっていると、クラスメイトの男子(名前は知らない)が話しかけてきた。

「何?」

「昇降口でお前の靴箱になんか置いてあったぞ」

 なんかって何だ。上靴はあると思うけどそういうことではないだろう。

「画鋲でもあったか」

「なんでだよ、そんなわけないだろ。なんか封筒みたいなやつ。もしかしてラブレターとかじゃね?」

「……そんなまさか」

 お姉ちゃんには失礼ながら、元の理久の印象だとそうはならないと思うんだけど。

「まあ見てこいよ、じゃあな。もしラブレターなら教えろよな!」

「もしそうなら逆に教えないよ……」

 今の理久の姿だと、体つきもがっしりして身長もあって、もしかしてモテちゃうとか……?

 女子にモテても困るなあ……。お姉ちゃんも似たようなこと言ってるけど、今の異性に対してそんな気にはならない。

 しかし放置するのもなんだし、とりあえず回収だけして帰ろう。

 靴箱には確かに封筒があり、ご丁寧にハートのシールで封がされている。

「はぁ……、しかも誰からだこれ」

 封筒には「理久くんへ♥」としか書かれていない。

 俺はそれを鞄に放り込み、帰路へとついた。お姉ちゃんに気が紛れるものでも買ってあげようっと。

お姉ちゃんは体調不良のため一日お休みです。


昨日、連載開始してからの総PVが四桁に到達しました。

やったあああああ、節目ってなんだか嬉しいし楽しい。

読んでくださっている皆様、ありがとうございます!!

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