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第21話 ついにきた、女子証明

「私が百合読んでても、悪くも変でもないですか……?」

 綾ちゃんは泣きそうになりながら聞いてきた。

「悪いことでもないし、変なことでもないよ。それに私だって百合のあるラノベとか読むし……ね」

「じゃ、じゃあ。私が……あ、いえ。やっぱりなんでも無いです。今のは忘れちゃってください」

 途中まで言われるとか、逆に忘れられないやつじゃないの!

『私がこういうの読んでいても大丈夫ですか』とかかな?

「もうこれからは、隠さず読んだらいいよ。気にしないから……ね?」

 この綾ちゃんの奥ゆかしさをパソコン部の連中には見習ってほしい。特に多賀先輩。

「あ、はい。そうですね……」

 そう言って綾ちゃんは微笑んだが、その表情にはぎこちなさを感じた。言おうとしたことはそれじゃなかったのかな。

「もしライトノベルくらい読みやすい百合物の本で、おすすめのがあったら教えてくれる?」

「いいですよ、いくつか見繕っておきますね」

 普通に楽しみかも。

「でも、この本はダメです……」

「え、なんで?」

「……こんなの読んでるって分かっちゃったら、恥ずかしすぎます」

 綾ちゃん……、どれだけすごいの読んでるんだろう。露骨な表現とかある内容なのかな。それともあまあまな内容とか、人間関係がドロドロな内容とか……。考えながら先程見たタイトルを思い返す。

「禁断の……、3人、乱れ咲き……?」

「あー!ダメです考えるのもダメですー!!」

 綾ちゃんが私の目の前で腕を振ってくる。可愛い。

 ここまで隠そうとするなんて、絶対表現すごいやつじゃない?これ……。

「う……?」

 なんだか、お腹が痛いような?

「どうしました?」

「いや……、なんだかお腹の下の方が痛いような」

「大丈夫ですか?よくあるんです?」

 いやあ、よくも何も前の体と違うし……。なんてことは言えるはずもなく。

「う~ん、よくわからない」

「調子悪いなら、今日はもう帰りましょうか」

 ん~。正直横になりたいし、帰ろうかな……。いや、一旦横になったら治るかな?

「ちょっとここで横になってるわ、治るかもしれないし」

「そうですか、具合悪くなったら遠慮なく言ってくださいね」

 そう言った綾ちゃんへ感謝の言葉を述べ、私は椅子を並べて横になり、痛みに耐えながら本を引き続き読んだ。

 

「……輩、理香先輩!」

 ——はっ!?

 気がつくと私のことを綾ちゃんがゆすっていた。

「いっ……!いたたた……」

「あ、大丈夫ですか。ごめんなさい。……でももう下校時刻ですよ」

 どうやら寝てしまっていたらしい。

「ありがとう、閉めようか。それにしても、お腹がいたい時って左下とかが多いけどなんか中央くらいが痛いなあ……。気のせいか腰も痛いような?変な姿勢で寝ちゃったからかな」

「え、あの理香先輩。それは……。あまりこんな事聞くのもなんですけど、毎月のことじゃないんですか?」

「毎月……?いやそんなことは無いけれど」

 少なくとも理久の時はそんな事無かったし。

「あ、そうですか……、ごめんなさい」

 謝る必要もないと思うけど、こちらこそ心配させてごめんねと言いたい。言いたいが痛い。

「私、今のうちに弟さん探してきますね。私じゃ駅までしか付き添えないですし……。理香先輩はゆっくりでいいので、鍵の始末をして玄関で待っていてもらえますか」

「私、付き添いが居るくらい辛そうに見える?」

 既に理久を探しに走り出した綾ちゃんが、離れた位置から頷いて肯定した。

 鍵を片付け、昇降口を出てすぐの場所で待っていると、綾ちゃんと理久がグラウンド側から近づいてきた。

 理久も陸上部が終わった所だったのだろう、汗がたれている。

「お連れしてきましたけど、よく考えたら弟さんとか嫌でしたか?」

「別にそんな事はないけど。家まで肩貸してほしいくらい痛いし……」

 早く横になりたい。

「あとは俺が見るんで、大丈夫ですよ」

「そうですか……?」

 綾ちゃんは、本当に良いのだろうか、というような顔を見せながらこちらに別れを告げて帰っていった。

「お姉ちゃんさ、もしかして、とは思わないの?TSジャンルの漫画とか見てるんでしょ?」

「……?もうなんでもいいから早く帰ろうよ……」

 物事考えるのも辛いわ。

「じゃあ良いわ、俺が買ってくるから、お姉ちゃんはゆっくり駅に歩いていって」

 鎮痛剤でも買ってくれるのかな。それくらい家まで我慢するのに。

 もう無心だ。無心で歩くしか無い。考え事をすると痛みに中断させられてまた痛みを意識してしまうのだから、最初から何も考えず、感じなければいいんだ。

 お腹も痛いが腰も痛い。よって、前かがみで歩きたいが、腰に手を当てて体を少し反らしたりもしたい。

「うう……」

 しばらく歩いていると声を掛けられた。

「嬢ちゃん大丈夫かい?よかったらこれ……」

 妙齢の女性がそういって私に2つの袋と錠剤を渡してくれた。

「お腹が痛いんでしょう?それ薬局でもらったやつだから、よく効くよ」

 そういって渡されたのは多くの人が見たことある鎮痛剤。そしてなんだか分からないピンク色の飴と、赤色の飴。

「ありがとうございます……」

 さっそく薬を飲み、ピンクの飴を口に放り込むと、甘みを感じて少し痛みを忘れられた。

 またしばらく歩いて横断歩道で信号待ちしていると、声を掛けられた。

「ヒュー!キミ可愛いね!しんどいの?休める所に案内しようか?」

 ……何こいつ……。

 話しかけてきたのは一七〇センチもなさそうなナンパ男。ないわあ。

 金髪、アクセサリー大量、崩れた服装。ナンパ男のテンプレみたいな姿だ。

「無視?無視しちゃうの?俺悲しいなー。優しさ見せてるのにさー」

 ええ、無視です。返事したら調子乗るでしょこういうのは。

「ちっ、良いから聞けよ!」

「いてぇ!?」

 そう叫んだ男が私の手首を掴んだ。理久の時の言葉遣いで反応してしまった。咄嗟の言葉遣いは無理がある。

「こいつ、可愛いからって無視キメていいと思ってんのか」

 このテンプレ感……。

 そんな時、男の肩にポンと手が置かれた。

「おい」

「なんだお前……ひっ」

 男が、自分に手を置いた相手を見ると、筋肉質で身長は一八〇前後ありそうな男子学生……理久がいた。

「お前、俺のお姉ちゃんに手出していいと思ってんのか?」

「……っす。さーせんっす……」

 ボソボソと謝って男は退散していった。

 助かった~。

「理久!ありがとう!」

「お姉ちゃん一人にすると危険だね。ちょっと羨ましいけど」

 その羨ましいのは以前の理香の時の気持ちなんだろうな……。

「はいこれ。とりあえず近くのトイレで付けてきたほうが良いよ。まだだと思うけど。もし違ったとしても別に害はないし……。むしろそうだった時にないと厄介だから」

 と、薬局の紙袋を渡された。使い方わからなかったらネットで見てね。

「え、なにこれ……?」

「お姉ちゃん、ほんとに分かってないの?たぶん生理だよ」

 あ————っ!

「女にTSすることで唯一要らないやつ……」

「何言ってるの、ちゃんと来ないと子供作れないよ」

 そんな予定も気もないわ!!

 その後、トイレで苦労して着けたナプキンとショーツは、家に帰っても特に活躍してなかった。要らなかったんじゃないの?と聞くと、「人によってタイミングはまちまちだから」と言われてしまった。

 家に帰ったからといって痛みが引くわけでもなく、ベッドへ横になって耐えている。その側では理久があれこれと教えてくれた。基礎体温を測って記録しろだの、予測しろだの……。これから数日以内には来るだの……。

 女子初心者には難易度が高い。そしてなにより……。

「みんなこんな辛い思いしてるの?明日もこんなんなら学校休みたいくらい」

「休む子もいるし、休んだら良いと思うよ。ちなみにみんなではない。なんなら俺は何の症状も無かったから……」

 ずるい……。

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