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第19話 おじゃまします、パソコン部

 体育の着替えは、周りの誰もが隠して着替えるために私の心配は杞憂に終わった。

 むしろ、その器用な着替え方法がうまく出来ずにとても苦労した……。下半身はスカートの下でジャージ履いたり脱いだりするだけだからいいんだけど、上半身が難しいということが分かった。家で練習しようと思う。創作物みたいに「キャー!そのブラ可愛い~」みたいなのは皆無だった。

 あと運動用のブラを買おうと決めた。激しく動くと痛い……。胸ってこんな物だったとは想定外だった。ただそうなると、更に高難易度な隠れ着替えが必要になる。

 上の服は上から着ちゃってから内側を脱ぐ……というか抜き取ればなんとかできそうだけど。下着はどうするんだろう。理久に聞こうか。

 そして、放課後は来るように言われているのでパソコン部へ向かわないといけない。

 名目上「パソコン部」であるので、部活はパソコンのあるコンピューター室で行われている。特別教室棟へ向かい、まずは図書室へ顔を出す。

 ガラッ——。

 綾ちゃんいるかな……。

 いつも綾ちゃんが居る席へと目をやると、綾ちゃんが居た。そして目が合った。

「あっ、理香先輩!」

 すごい笑顔なんだけれど。こんな子だっただろうか……。

「早くこっち来てくださいよ」

「あ~。ごめんね綾ちゃん。私、今日はちょっとパソコン部に顔を出してくるの。後で来るかもしれないけれど」

 そういうと、綾ちゃんの目は大きく見開かれてから、視線を落とした。

「そう……、ですか……」

 私がちょっと居ないだけで、そんな悲しんでくれるの?

「うん、まあ、そういうことだから」

 ガラララ——……。

 そう言って私は扉を閉めた。すると——。

 ——バンッ、パササ……。

 ——バンッ、パサ……。

「宮本さん!?何をしているのですか!」

「す、すみません……」

 図書室の先生が驚く声と、綾ちゃんの謝る声が扉越しに聞こえた。一体何があったんだろう……。あとで聞いてみようかな。

 私は一旦気にせず、コンピューター室へ向かった。


 カララララ——。

 コンピューター室に着き、扉の前に立つと自動で扉が静かに開いた。学校に自動ドア……?

「ようこそ姫ちゃん!パソコン部へ!」

 中へ入るといきなり正面に松川先生が出迎えてきた。コンピューター室は他の教室と変わっており、長い事務机が前に教師用として前方に置かれている。そして生徒の席はそれと垂直に、長い事務机が教室後方まで続いており、それが3セットある。

 パソコンのディスプレイに隠れて見えないが、教卓を向いて右側の、私から見て遠い方の机に3人の姿が見える。

 そして視界右側では、黒子頭巾を被った人物が膝を立てて静かに扉を押している。そうだよね、自動なわけないよね。

「という事で姫ちゃんこと川田さんが入部してくれます!皆さんなかよくしてあげてね!」

 だから姫ちゃんやめて。

「いよう~川田さんパソコン部入るって?理久はいくら誘っても入らなかったから嬉しいなあ俺」

 三人のうちの一人が立ち上がり話しかけてきた。清水だ。

「あ……、川田さん。よろしくおねがいします……一年の田中です。川田さんはパソコンが好き?それともオタクですか?」

 その隣の男子が立ち上がって話しかけてきた。全然知らないから一年だろうか?

「どっちも、浅く広くってところかなあ」

 無難な答えでも返しておこう。

 さらに左からも男子が立ち上がり、話しかけてきた。

「一年の中川です。姫ってなんですか?」

「私が聞きたいです」

 ほんとにね。

「ハハハハハ!そんなことも分からないのかね?」

 そう言いながら黒子頭巾の人が立ち上がった。

「あっ、自動ドアの動力の人」

「ふっ、それは世を忍ぶ仮の姿さ————」

 隠れる必要ないでしょ……。

「私の名は多賀岐美(えだみ)。見てくれこの美貌を」

 そう言って黒子頭巾を外した姿は、確かにイケメンだった。身長も高い。一八〇センチは超えてそうだ。少なくとも容姿だけなら、女子だったらときめいてしまうのではないかなと思う。私はまだ、男には心動かないけれど。

 そして凄い名前だ。有名な夫婦神を彷彿とさせてくる。この名前は見たことがある。確か三年生の生徒会副会長だ。

「そして私は生徒会副会長でもある。ご存知かな?」

「ええ、知ってます」

 たぶんその容姿と風貌ならまず覚えると思いますよ。

「ふふっ……どうだね清水くん。これがカリスマ性というものだよ」

「そもそも、その容姿と風貌ならまず覚えると思います」

 清水も同じ様に思っているようだ。

「いよっ!さすが多賀くん!!」

 松川先生、その合いの手はいるんですか……?

「どうだい?私の事を見直してくれたんじゃないかな。今度こそ良い返事を聞かせてくれるかな?」

「あっ。多賀くん!姫ちゃんに手を出したらだめです!以前から気になっていた子なのかもしれませんが、だめですよ~。川田さんは『オタ部の姫』ですからね?」

「な……なんですって?では私の伴侶にはなっていただけないのですか?」

「そもそも伴侶って、私があなたと結婚するわけないでしょ!」

「ふふ、いいんですか?私は成績も優秀で、生徒会副会長で、家も太いですよ……?」

 うん、一個疑問なんだけど。

「なんで副会長なんですか?」

「あっ、姫ちゃんそれは……」

「なんで副会長か……?はは……。私は結局のところオタクですからね、私を知る者は腫れ物扱いですよ。全く今の時代オタクなんて誰でも触れるカルチャーの一つだとは思いませんか?ふふ、全く。大勢のものにはそれが理解できないのですかね?いや、確かに私が一番愛する想像上のキャラクターはエロから来ていますがね、だからなんだというのです。あの者共は愛するものと◯◯◯◯したり◯◯◯したり◯◯◯◯をしたりしないというのですかね?」

「はいはい、多賀くんストップ。ここ学校」

 松川先生にも常識とかあったんだ。いやあ、愛する相手とでも最後の◯◯◯◯はしないんじゃないかなあ……。

「まあそういうわけで多賀先輩は三年からの票が集まらなかったんだよね……」

「清水くん。どの多賀先輩が本当の多賀先輩なのかな」

「もちろん最後の……」

 無いわぁ。

「多賀くんが全然説明しなかったので私が説明……。さっきも言いましたけど。オタサーの姫的なのですよ。この部に一人でしょう、女子」

「なるほど!わかりました先生!つまり川田さんはみんなの彼女って事ですね!」

「中川くん!そうです!」

 えっ。

「違いますよね。彼女とかじゃなくて、川田さんをみんなで丁重にもてなしましょうってことですよね。まさにお姫様」

「田中くん!それでもいいです!あります!」

 いやいやどっちなのよ。正反対じゃないの。

「あの、皆さんの彼女になる気も、よいしょされる気もないですよ?普通に皆さんとオタ話できればそれでいいんで……」

「と、誰でも初めのうちは言うんですよね~。先生が通った大学でもそういう子よく見ました」

 その先生の一言に皆が興味津々に先生の方を向いた。

「先生は姫になれませんでしたけどね」

「まあ先生はなんだか残念ですもんね。何がとは言いませんけど」

「やめて姫ちゃん!先生の心えぐれちゃう!」

 

綾ちゃん、松川先生、残念先輩は書いてる時楽しいです。

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