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スカートは、拒否?

 ショッピングモールの駐車場に着くなり、お母さんが釘を刺してきた。

「言っておくけど、一応すでに買ったんだからそんなには買わないわよ」

「えぇ~、半分くらい可愛い感じだからあんまり着たくないんだけど」

 可愛い服に不満……というか抵抗がある。これはまだ私が女子になりきれてないな、という点だと思う。でもそもそも私が理久だった時の理香も、あまり可愛い系は身につけてなかったのだからそれで良いのではないだろうか?

「お姉ちゃんにはむしろ可愛い服のが似合うと思うんだけどなあ」

「えっ、何言ってくれてるの」

「私もそう思うわ」

「お母さんまで……」

 理解はできるけど、この身長じゃ可愛い方が合うよね。でも嫌なものは嫌。

「まあとりあえず見に行こうよ」

 理久について行き、店内へ向かった。


「あら似合うじゃない~、あんたやっぱりスカートのがいいわよ」

「俺もそう思うよ」

 どうしてそれでスカートを穿かされているんだろう。

「いや、でも普段学校から帰ってきた時とかに着替えるのにスカートとか嫌だし」

「休みの日があるでしょ、ほら、それも似合ってるわよ」

 と、お母さんが指で示したのは、行く直前に「これ穿きなさいよ」と言われて着ることになった膝丈くらいのスカート。制服でもそうだったけれど、ひらひらして落ち着かない。

 そうだ。

「長いスカートなら前向きになれるかな」

「う~ん」

「う~ん」

 私の提案に二人して唸り声を上げる。

「お姉ちゃんって、身長低いし高校生だしであまりロング合わないんじゃないかなあ」

「お母さんもそう思う」

「い、一着だけでいいから……」

 やたらとスカートを穿かせようとしてくるのでそれならせめてマシと思える物にしたい。

「まあ、お金はあるからいいわ、好きなの選んで頂戴」

 着回ししやすそうなグレー系のものを選んで買ってもらった。そしてすぐに穿き替えた。

 先ほどまでに比べ、膝から下も布で纏っているので、安心感がある。

 この後はいくつかユニセックスな服を買ってもらって、理久がスポーツ店を見たいと言うので、それを通路で待っていた。

「そういえば理香」

 すると、隣で同じく待っているお母さんが話しかけてきた。

「なあに」

「あなた、何か変わった……?」

 ドキっとすること言う。実際の所、何か程度じゃないくらい変わっている。

 そもそも服をこんなに買い直さないといけなくなっている事自体がおかしいわけで、そこに気づかれたりすると認識に綻びが出たりするのかもしれない。

「あー!姫ちゃん!」

 突如、あまり会いたくない人の声がした。しかし、お母さんの思考が切れるのにはもってこいだったかも。

「松川先生……。その呼び方やめてくれませんか」

「ええー。オタクの集まりに女の子が一人、それはもう姫でしょう?定番じゃない」

 それはそうかもしれないけど、自分がそうなのは嫌だなあ。

「こちらは?」

 ああ、お母さんは知らないか……。

「最近入った部活のうちの1つ、パソコン部の顧問の先生だよ」

「まあ。これはこれは。娘がお世話になっております」

 まだ顔出してないけどね。

「いえいえ、女の子が私しかいない部活だったので、仲間が出来たみたいで嬉しいですよ」

 先生は女の子と言って良いのかな……。

「そういえば姫ちゃん。昨日は来ませんでしたけど、月曜は来てもらえますか?紹介しますから」

「ええ、まあ、はい。わかりました」

「やったあ!ありがとう姫ちゃん!楽しみにしてるわね!」

 だからその呼び方、やめてほしいわ……。終始私のことを「姫ちゃん」と呼んだまま、松川先生は去っていった。

「ちょっと、変わった先生なのね……」

「ちょっとじゃなくて、変わった先生よ」

 二人で去っていく松川先生を見ていると、理久が戻ってきた。

「いや~、おまたせ。それじゃ焼肉行こっか」

 え?焼肉……?なんだろう、好きだったけど、あまり気乗りしないなあ。

「他に選択肢ないの?」

「俺は焼肉が食べたい。お姉ちゃんもそうだと思ったんだけど……あ、お姉ちゃんか……。じゃあ何あるか見てからきめようか」

 案内板を見ると多種多様な飲食店の写真が並んでいる。

「う~ん、もうちょっと軽いものがいいなあ……。パスタとか……」

 今の姿になって食の好みに変化が……?

「パスタ!女子か!」

「女子なもんで……。お母さんは?」

「私は何でも良いから二人で決めてちょうだい。でも、その2つならパスタのほうがいいわね」

 とかいいつつ、お母さんすごい一点を注視してるの見えてるよ。

「お母さん、中華食べたいんでしょ」

「はい」

 まあそれでも良いか。

「じゃあ私もそれでも良いわよ。あとは理久だけど、まあもうここは多数決で決まったようなもんよね」

 私がそう言うと理久は大きくため息をついた。

「まあ、仕方ない。諦めるよ……。その代わり!青椒肉絲とレバニラと蠔油牛肉(ハオユーニューロー)と回鍋肉頼むからね!!」

 どれだけ肉食べたかったのよ……。

 結局、宣言した以上に、肉料理ばかりを食べて、見てるこっちがお腹いっぱいになるくらいだった。

 食べた本人はお腹を痛くしていた。食べすぎよ……。


 家に帰り、部屋に入ると姿見が目に入った。

 今日買ってもらったスカートを穿いた私。まじまじと見なかったけど、こうしてみると……。

「いい感じじゃないの」

 私、やはり可愛いのでは?

 身長がないために、どうして、スラっとした感じのフォルムではないけれど。今朝穿いていた方はどんな感じに見えるんだろう。

 ちょっと穿き替えて、再び鏡を見てみる。

「うん、穿き心地は慣れないけど、悪くないよね。私何着ても似合うんじゃない?」

「そんな事自分で言って恥ずかしくないの?」

「ひゃああああ!?」

 コンコン——。

「入るよ?」

「ま、まって!着替えるから」

「は?何いってるの、昨日一昨日はそんなこと言ってなかったのに。羞恥心芽生えちゃった?」

 確かに?

「じゃあいいよ。でも何の用?」

 理久は勉強を少しでも多くするべきだと思うんだけど。

「いやあ……」

 ガチャ——。

「一人ファッションショーしてそうなお姉ちゃんみようと思って」

「出てけー!」

 嫌がらせを受けた私は、明日はひたすら勉強させてあげようと決めた。

 どうせ必要だしね。

牛肉のオイスター炒めに、蠔油牛肉って名前があるの初めて知りました。

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