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第16話 しろい、出汁と問題集

「何だお姉ちゃん、包丁は普通につかえるんじゃない」

 とりあえずは私が起きてからまだご飯を食べてないこともあり、朝昼兼用で親子丼を作るということになった。

「言ったでしょう、調理実習程度はできるって」

 渡された野菜たちを切っていくまでは私でも余裕にできる。

「でもキッチン高くて使いづらいんだけど」

「そればかりはどうにも。そのうち台でも用意してもらって」

 元々ちょっと高かったけど、さらに高く感じる。背がさらに低くなってるので当然なんだけれど。

「あれ?お肉はないの?」

「冷凍庫にあるよ?」

「お肉はチンしたらできあがるの?」

「お姉ちゃん?冷凍イコール、冷凍食品じゃないよ?」

 分かってるわよ、アイスクリームとかもあるもんね。

「え?アイスみたいに凍ったまま?食べるの?」

「だから食材だって……」

「えっ。凍ってるけどどうやって使うの……」

「…………」

「…………」

「…………もう出て」

「はい」

 今日は見るだけになった。理久曰く、冷凍された食材が色々とあり、日にちももつし、使いやすい。解凍してから使ったり、そのまま使ったりと様々。とのことで、結局のところ私は料理について知らなすぎる。まずは家で、テレビで、動画でと、人の料理を見れば良いと言っていた。

「で、肉の表面焼いたら一回まな板とか適当なところに出しておいて、野菜を炒める。火が通ったら水を入れて肉も入れる。沸騰してきたら顆粒だし」

 なんだろう、あのサラサラ入れたの……。

「今の何」

「顆粒だしだよ。まあ簡易的に作れる魚とかカツオ節とかの合わせ出汁だよ」

「ふ、ふ~ん?」

 いきなり実践見せられても分からないと思うのよね~。

「で、次に醤油、酒、みりん、砂糖。俺は甘め好きだから砂糖とみりん多めかな~」

「えっ、計量しないの!?」

 いきなりおたまの上にのせてたぱぱっと調味料をフライパンへ入れていく理久を見て慌てる。

「測ってもいいんだけど、慣れると目分量だよ。基本は1対1だし。あとはそうだね、この料理は~、とかでいい感じに調整する感じ」

「そんな馬鹿な。でもレシピには分量書いてあるじゃん」

「あんなの、数値だけ守ると失敗するよ。調理してる間に水だって蒸発するんだから、あんなの見ながら作ってる人なんて手際早くないこともあるし、余計にそうだと思う」

 ……結構料理できたんだね。知らなかったわ、単なる陸上熱血少女(元)なのかと思ってた。

「ま、あといい感じだと美味しい匂いするし。醤油入れすぎると明らかに醤油の濃い臭いするし。でも塩は臭いないから分かりづらい。だから俺はあんまり塩使わないな~。他で塩分稼いじゃう。白だしとか、コンソメとか、中華調味料とかさ。和食はとりあえず味に自信なければ白だし入れると良いよ」

 理久がもはや何言ってるのかわからない。白だしって何、白くなかったけど。

「ごめん、情報過多です」

「あ、ごめん、そうだよね」

 理久の口調がまた以前に戻っている。

「また口調が」

「あ、そうだね……。でも中性的くらいなら別にいいかなって」

「ちょっと考え方を変えたくらいで通用するといいわね。私ならわざわざ自分から危ない橋に寄るような事しないけれど」

「お姉ちゃんは完璧すぎててちょっときもいし、女子高生としてはちょっと不自然に大人びてるような」

 そりゃあ、丁寧な口調のほうがやりやすいから……。

 あ、いい香りがこちらにもしてきた。

「そろそろ完成?」

「俺の分はね」

 どういうこと。

「ハイ注目。よく見て、こちらに同容量の食材がもう1セットあります」

 確かに?

「これからお姉ちゃんに自分で作ってもらいま~す!イエー!勉強優秀なお姉ちゃんのことだから私の見てたら分かったよね?」

 説明もなく分かるわけがない。

「分かってないけど……。せめてレシピとかないの?」

「無いなあ。レシピが欲しいならネットで適当に探して。でも俺が作ったのと同じのは多分無いよ?」

 料理はレシピ通りにつくるものではないのか……。

「まだ、私には無理だと思うから、作ってもらえない?」

「仕方ないなあ~」

 そう言ってもう一杯分を調理する理久はなんだか楽しそうだった。

 出来上がり、差し出された親子丼は見事なまでにふわとろで悔しいくらいに美味しかった。どうしてあの適当な感じがこんなに美味しくなるのは理解できないけれど、きっと白だしが良いんだろうな、白だし。それどういう物なのか知らないけれど。

 

「ねえお姉ちゃん。さっきご飯食べてる時、服を買いに行くとか言って、起きてきたお母さんにお金も貰ってたじゃん。早く行こうよ。そのまま夜も外食でしょ?」

「理久が、目の前のものを片したらね。どうせお母さんも用意中みたいだし」

 理久の前には数学の問題集が置いてある。今度は私が理久を見る番だ。

「片……せるかなあ。解かないと片したことにならない?分からないやつは空いたままでも?」

 まあ……どれだけ考えても分からないものは答えでないか。

「構わないけど、途中まででも書いてね。どういう考え方したとかもみたいから」

「え?途中?」

「え?」

「どう考えたら良いのか分からないのもあるけど」

 全然だめじゃないの。

「まあ……そういうのは仕方ないかな」

「やった!」

 そして十五分ほどが経過して。

「お姉ちゃん、終わったよ」

「はやいね、どれどれ」

 見るとだいぶ白い状態だった。約半分は途中式もない。

「どう?全然だめでしょ?」

 理久は得意げに鼻を鳴らしながらそう言った。

「自慢げに言う事じゃないでしょ……」

「だ、だよね……」

 しかしこれは酷い。いっそ頭でも打って忘れたとか言って周り納得してくれないかな……。いや諦めるのはまだ早いか。

「今日の夜から明日の夜まで。ずっと私と勉強だからね」

「ええ、やだなあ……」

「理久だけ、認識が綻んで理久のまま以前の姿に……とかの方が嫌でしょ?」

 神様の上げたわかりやすい一例を思い出させてみる。

「絶対嫌だ」

 だよね。

「だったら、頑張りましょうね~。優しいお姉ちゃんが見てあげますからね♪」

「お姉ちゃん……。ちょっと本当にもともとお姉ちゃんだったみたいになっていて、以前からそういう()があったんじゃないかって、怪しんじゃうんだけど」

 実は言ってから自分でもそう思った。気がついた頃には、完全に男子だった気持ちとか失っちゃったりして。

「確かに元々、むさ苦しい感じではなかったけどね、お姉ちゃん。インドア派な上に体格も小柄だったし」

 TSって、親和性が高くて順応しやすいとかあるのかな……。創作物しか参考になるものがなく、前例なんてないのでそんな事を考えたところで答えはないのだけれど。

「おまたせー!二人とも行きましょー」

 お母さんの用意ができた様なので一旦ここまでだ。

理久の親子丼の作り方は概ね私自身の作り方と一緒です。

面倒ならめんつゆと水だけでもいいね。ああ……でもみりんと砂糖は足したいかも。

(一人前)

ご飯……食べたいだけ

鶏モモ……食べたいだけ

玉ねぎ……食べたいだけ

しめじ……食べたいだけ

玉子……ご飯に合わせて適当

顆粒だし、酒、みりん、砂糖、薄口醤油、白だし……直感


おいしいよ!!

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