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第10話 パソコン部は、非推奨?

 先輩から解放されたあと、教室についてからは咲恵の話を適当に流し、無難に授業をこなし、何言ってるのか分からない周囲の会話に適当に「えーほんとー?」「だよねー」「あはは……」とか言って相槌を打ちながら休憩を過ごし、昼休みに入って用事があるからと私はすぐに教室を出た。

 クラスメイトとの会話は正直咲恵との会話に比べると楽だった。楽だけど、咲恵とのほうが話をしている、と感じる。

 とりあえず昼を人気の少ない外でこっそり食べる。職員室に退部届を出しに行きたいので、あまり女子と話して時間を消費するわけにいかない。

 ――ところが。

「あれ?川田さん一人なの?俺と一緒に食う?」

「川田さんがお前と食うわけ無いだろ。ごめんね、キツく言っとくから。あ、俺は堀田」

 とか。

「あれー?川田さんみたいな子が一人なの?ハブられてるならうちらのグループ入る?」

 とか。

 とにかく一人にしてくれない。大人しく教室で食べてなさいよ。

 どこか隠れるところは……、かと言ってトイレもイヤ……。

 もういいや、後で食べよう。

 広げた弁当に蓋をして片付け、職員室に向かう。

 職員室に近づくとどうにも騒がしい雰囲気を感じる。教師が大きい声で話しているようだけど、別に怒気とかは感じられない。

「川田くん、陸上もいいけどテニスもいいよ!川田くんなら体力もありそうだしバッチリだ!」

「いやいや、川田くんにはぜひ我が剣道部に」

「いや柔道部」

「ワシが見てる部も活躍できると思うよ」

 最後のは野球部だ。テニスはともかく、高2で未経験者に武道や野球を勧めるなよ……。

 どうやら理久が陸上部に入ると言いにきたのか、他の部にと教師から勧誘されているようだ。

「すみませーん。退部届けって~」

 教師たちの声が途切れたタイミングで、わざと声を大きくして職員室の扉を開けた。

 どうせなら理久を助けてやってもいいだろう。

「じゃっ。そういうことで!」

「ああ待って」

 そういうと立ち上がった教師は、壁際にある書類箱から用紙を取り出した。

「入部と退部はこの用紙に書いて。書いたら担任に渡してくれたらいいから」

「はい」

 用紙を受け取った理久がこちらに歩いてきた。

「ありがと」

 そしてすれ違いざまに感謝の言葉を口にした。しかしなぜだろうか、どことなくその声にトゲを感じた。

「それで、お姉さんの方の用事は?」

 近くにいた若い女教師から声をかけられた。よく、川田兄、川田妹と教師に呼ばれたが、これも逆に。当然か。

「あ、はい。私も部活を変えたくて」

「陸上部を辞めるの?……まあ、わかるよー。うんうん」

 そう言いながら立ち上がり、先程別の教師が用紙を出した場所へ向かう。

 大人がそんな余計な一言をつけるなんて……。

「それで、変えるってことはどこか入るのね?」

「はい、文芸部に……」

「あそこは弟さんが辞めちゃうと2人になるところだったからちょうど良いわ」

 私の回答に教師はそう答えたが、どうしようかな……。清水と話す機会が激減しちゃうの残念に感じるなあ。清水は活字は読まないけどそれ以外の趣味は合うから……。たしかあいつはパソコン部だったかな?

「あ、でもパソコン部とも迷ってます」

「えっ……?」

 そういうと女教師はビックリしてから困ったような表情を見せた。

「あそこは……おすすめしないかな~。あはは……」

 え、どうして。

「どうしてですか?」

「え~っと……。そうね……全員オタクっぽいとか?男の子しかいないとか、そういう感じで……」

 ああ、そういう。

「私もオタクなんで大丈夫ですよ。男の子ばっかりなのは、まあ大丈夫……?」

 あんまり言い切っても怪しいので不安アピールしておけば女子っぽいかな。

「川田さんもそういう趣味あるのね。だったら構わないけど……。あ、あと両方入ってもかまわないわよ」

 なるほどそれもあり、か。

「じゃあそうします。退部と、入部二枚ください」

「全部1枚でかけるわ、ほら」

 そういって用紙を渡してくれたので見てみる。

「わ、わかりました……」

 唖然とした。用紙を見ると二列二十行の表状になっていて、左の列が部名、右の列が「入部」「退部」のどちらかを書くということらしい。 誰が二十部も同時に出入りする可能性なんか考えたのよ……。

 ありえないでしょ。

「ありがとうございます、すぐ持ってきます」

 用紙を受け取り廊下に出ると、持ってきていたボールペンを取り出しさっさと書いてしまう。

 陸上、退部。文芸部、入部。パソコン部、入部。職員室にまた入り、担任教師を呼ぼうとしたが、別に誰でも良いらしく先程の教師が受け取った。

「はい、受け取りました。……ん?川田さん。ここ間違ってますよ?こんな間違いあるんですね。はい」

 そういうと私に用紙を戻して言葉を続けた。

「ここ、名前のところです。弟さんの名前になってますよ。取り消し線でいいのでここでサクッと直しちゃってください」

 しまった。言葉はかなり気にかけていたけれど、名前を書くという事で失敗するとは……。テストとかじゃなくてよかった。

 壁を机代わりにさっと直す。

「直しました」

「はい、受け取りました。もう今日から新しい部活行ってもらっていいですよ。いやー、しかしオタサーの姫ならぬオタ部の姫ですね!」

「……!?ちょっ、ちょっとやめてくださいよそんな言い方!」

 一気に赤面した。怒りによるものか恥ずかしさによるものか自分自身でもわからないけれど。

 隣の教師も先生、私らその言い方はちょっと……。と、指摘している。

「いやあ、残念ですね~。私が姫だったんですけど、逆ハーレムの消滅です……しょんぼり。ま、仲良くやりましょうね」

「まさか、先生が……」

「はい、ようこそオタ部……じゃない、パソコン部へ。私が顧問の松川です。学年違うからあまり目にしたこと無いかもしれませんね」

「ええ……。よろしくおねがいします」

 ここまでの印象が悪すぎてあまり仲良くしたくないですけれど。あと後ろで、ひくついた笑顔の教頭が待ってますよ。

 その教頭が松川先生の肩に手をおいた。

「松川先生?ちょっとこちらに」

「ひっ――!あ、私はまだ川田さんと話を」

 こっちに飛び火させないで。

「いえ、用事なら終わりましたから。それでは失礼いたしました~」

「ちょっと、そんな、ああっ!?」

 座ってる椅子ごと文字通り引きずられていく松川先生を尻目に、私は職員室を出た。

 今日は、文芸部にしよう。

 松川先生が思い浮かび、今日はパソコン部を避けようと思った。

次回更新は6/14までの予定

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