第39話:ヴェール奪還作戦
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危機に瀕したヴェールの街を救うため、ついに動き出したアルスとティア。
忍び寄る「異質な魔力」の正体、そしてスタンピードを引き起こした元凶の存在とは……!?
ゼクスとの連携バトル、そして不気味な新敵の登場に大注目の奪還作戦、開幕です!
「はい! もちろんです。ですが……街の中の魔物はどうしても一体ずつ倒していくしかありません。かなり時間がかかると思うのですが、今すぐに戦える人はいますか? 道中で見た感じだと高ランクの魔物が多かったです。対処するには恐らくBランク以上の力が必要かと思います。それと、現状を詳しく知りたいです」
アルスの問いに、領主ウォルターは険しい表情を浮かべつつも、落ち着いた声で答えた。
「この街には高ランクの冒険者が少なく……現在、この街唯一のAランクパーティが別の討伐依頼に出てしまっていて、あと一日は戻ってこない見込みなのです。ですが、Bランクの冒険者が四人、今も必死に街で戦っております。……それと、今回のスタンピードなのですが、あまりにも異常なのです。街の誰も、事前に魔物の接近に気づくことができませんでした。何の前触れもなく、いきなり魔物が外壁を壊して街の中へとなだれ込んできたのです。……まるで、その場に突如魔物が出現したかのようでした」
「……確かに、それはおかしいですね。では、まずこの領主邸の結界を強化します。俺が補強すれば、あと五時間は絶対に安全なはずです。……俺たちはこれから、このスタンピードを根本から止めに行ってきます」
「おお……! お願いいたします! どうかご健闘を!」
――領主邸を出た瞬間、待ち構えていたかのように魔物が数体襲いかかってきた。アルスは一瞬でそれを撃破すると、チラリと周囲を見回す。
『これじゃあ、ただ倒しているだけじゃスタンピードの本当の原因が分からないな……。仕方ない、ゼクスを召喚するか』
領主邸から少し離れ、誰の目もないことを確認したところで、アルスは召喚魔法を詠唱しゼクスを呼び出した。
「ゼクス、今この街はスタンピードの被害に遭っているんだ。俺は街の中の魔物を倒しておくから、スタンピードが起きている原因を突き止めてくれないか? 分かったらすぐに伝えてほしい。……もしかしたら、『魔族』が関わっているかもしれない。気を付けてくれ」
「ふむ、分かった。隠密行動で探ればいいのだな?」
「うん、頼んだよ」
ゼクスの言葉を確認すると、彼は影のように滑らかな動きで魔物の群れの流れてくる方角――スタンピードの中心地へと姿を消していった。
「ティア、まずはこの街の周りにいる魔物たちを片付けよう。援護を頼めるかい?」
「任せて! 私の補助魔法、しっかり受け取ってね!」
――それから、アルスたちは阿吽の呼吸で立ち塞がる魔物たちを次々と薙ぎ払っていった。
数分が経過した頃、遠くからゼクスが凄まじい速度で戻ってくるのが見えた。
「――アルス! このスタンピード、やはり魔族の仕業で間違いない! 奴が魔物どもを裏で操っていた。それと、この街の周囲には大規模な『認識阻害の結界』が張られた痕跡があったぞ。奴らはそれを使って魔物の接近を隠していたのだ。だから被害が大きくなった」
「分かった……認識阻害か。じゃあゼクス、君に認識阻害の結界を付与するから、ここで街の防衛を引き受けてくれないか? 俺たちは大元を叩きに行く。もし不測の事態になったら呼ぶかもしれない。頼めるか?」
「もちろんだ。ここは我に任せて、スタンピードを止めてきてくれ!」
ゼクスに後方を託し、アルスたちは押し寄せる魔物をなぎ倒しながら、元凶である魔族のもとへと突き進んだ。
森のひらかれた場所に辿り着くと、そこには魔物たちを使役し、嘲笑いながらスタンピードを引き起こしている「子供のような姿をした魔族」が佇んでいた。
「あれれ? もしかして、見つかっちゃった感じかな? ……君たち、相当強いねぇ。特に前衛の君だよ。魔力を隠しきれてないよ? ……それでも、かなり抑えている方なんだろうけどさ」
「どうだろうね」
「ふ〜ん、教えてくれないんだ……」
アルスが魔剣の手元の柄に手をかけ、一瞬で距離を詰めて剣を振るおうとした――その時。
「あ、やめておいた方がいいよ? いま僕に攻撃したら、その攻撃のダメージは全部君自身に返っていくからね。まぁ、僕の魔力も空っぽになっちゃうけどさ。……でも、このままだと僕の負けかな。すでにかなりの魔力を使っちゃってるし、今も使役するためにリソースを削いでるからね。本当は君と直接戦ってみたかったんだけど……今回は逃げさせてもらうよ。また次に会った時は、お互い本気でやり合おうね! すっごくワクワクしちゃうな! それじゃ、またね!」
魔族が言い終わると同時に、懐から『帰還石』を取り出した。眩い光が弾け、次の瞬間にはその姿が一瞬で消え去っていた。
「――くそっ! 逃がしたか……!」
「今はそれで良かったと思うよ、アルス。あの子が言っていたカウンターの能力が本当だったら、アルスが危なかったもんね。今はそんなことより街に戻りましょう! 残りの魔物を倒さなきゃ!」
アルスたちは街へ引き返しながら、路地に残っていた魔物たちを完全に殲滅していった。
「あとは街の中の敵かな……」
「――アルス! 街の中の魔物はすべて片付いたぞ! 魔族の方はどうなった!?」
街の中からゼクスが駆けつけ、市街地の安全が確保されたことを報せてくれた。
「ゼクス、ありがとう! でも魔族の方は帰還石を使って逃げられちゃったよ。ゼクス、もう召喚を解いて戻って大丈夫だよ」
「そうか……だが気を付けた方がいい。今後、いつあの魔族が再び襲ってくるか分からないからな」
「分かった、本当にありがとう!」
危機を脱したアルスたちは領主邸へと戻り、領主ウォルターにスタンピードの真実を告げた。
「本当ですか……!? 無事に退けてくださり、本当にありがとうございます! ですが……まさかその裏に魔族が関わっていたとは……」
「もしかしたら、また近いうちに私たちを狙って襲ってくるかもしれません。ですから、この街には長く留まれません。本当は復興作業なども手伝いたかったのですが……明日、ここを出ます」
「分かりました……。では、せめてこれを受け取ってください。今回の討伐報酬と、この『特製の魔石』です。この魔石は魔力を流し込むことによって、対象のものの時間をほんの少しだけ巻き戻すことができます。ただし、莫大な魔力を消費しますので、お使いの際はお気をつけください」
その言葉を聞いたアルスは、思わず大きな声を上げてしまった。
「えっ、本当にもらって良いんですか!? こんなに高価で貴重なものを……!」
「ええ、どうかお受け取りください。今回はこのヴェールの街を滅亡の危機から救っていただき、本当にありがとうございました!」
最後のページまで読んでいただいて、ありがとうございました!
ヴェールを襲ったスタンピードの裏には、やっぱり魔族の影がありましたね……!
攻撃を反射するような厄介な能力を持つ子供の魔族。今回は帰還石で逃げられてしまいましたが、今後の強敵になりそうな予感がします!
そして領主ウォルターさんからもらった「時間を少し巻き戻す魔石」……! チートなアルスがこれを使うとどうなってしまうのか、ぜひ今後の展開を楽しみにしていてください!
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ヴェールを旅立ったアルスたちの次なる目的地とは――!?
来週水曜日の更新も、どうぞお楽しみに!




