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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第4章:立身出世編

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81:ブーストへの道のり



 引き続きブースト修得しようぜ!の会会場。


「リリは簡単に修得するって、魔力操作得意なん?」

「習ったことないよ?」

「リリはフィジカルブースト使ってるけどな」

「「「「えっ?」」」」


 ほんと無自覚属性だよなあ。

 自分が超絶カワイイことすら自覚してない。


「助走なしに余裕で窓口の上を跳び越えるじゃん。あれ無意識にブーストしてる」

「私すごい?」

「ぶっちゃけ俺の理想形って感じですごい」

「イオリの理想の女だって♪」

「あんたナチュラルに頭幸せだよね」


 ココアはナチュラルに核心を突く。


「俺の経験をなぞればいいとは思わんけど、はっきりしてる事実が二つある」


 一つは魔孔という言葉を知らなかった時、感覚的に魔力漏れを確信し、ブーストらしきことが出来るようになったのも同時期だったこと。

 もう一つは、魔力漏れを起こした部位が両手の指先だったこと。


 今だからそう理解できるだけで、当時は「魔力スゲー」くらいにしか考えていなかったのだが。


「ホレン草かな」

「魔術薬ですね」

「この手の気づきが早いのは流石だ、当たり」

「魔力導入ってこと?」

「その手前な」

「魔力循環だよココアちゃん」

「ルーカスさんが、魔力循環による魔力路の分岐と延伸について話してくれましたね。雇ってもらって一ヵ月と経っていない頃でした」


 ココアと顔を見合わせた。お互いに「はて?」って顔。


「何にしろ、とにかく循環あるのみって話だ」

「普通にずっと循環してるよ?」

「そこは負荷の問題だな」


 何も考えずにやってる常時循環は、ウォーキングみたいなもの。流量と流速を上げればジョギング、更にどんどん上げていけば一〇〇mスプリントを常にやってる状態へ持っていける。


 一〇〇mスプリントにも慣れてくるから、更に流量と流速を上げていくと、「な、なんなんだこの力の漲りは…!?」ってなる。それがブーストの入り口に立った合図だ。


「イオリの循環魔力は多くて速いもんね」

「それそれ、お前らも常に魔力感知をかけるようにするといい」


 俺のように広域展開しろという意味じゃなく、半径二mくらいの感知でいい。感知にも当然だが熟練度があり、感知対象の内包魔力量だけじゃなく、流量と流速が判るようになってくる。


 内包魔力量、流量、流速と総魔力量は比例関係にあるはずなので、魔力循環には魔力器官を発達させる効果もあるに違いない。


「何よりお互いの刺激になる。ユウトとカノンなんて負けず嫌いだから、感知して自分が劣ってると、おのれ!ってなるだろ?」

「うん、自覚してる」

「僕も否定できません」

「あたしあんまり負けず嫌いじゃないんだけど」

「ココアは流量と流速のコントロール精度が高いから大丈夫。カノンと比べれば三倍、ユウトと比べれば五倍は精度が高いし速くて滑らかだ」

「聞いたか愚民ども!」(ドヤ顔)

「うぅ、負けてられないよ」

「僕らと黒須さんたちの違いは何なんでしょう」

「違いっつーか、余計なことを考えすぎなんじゃね?」


 思考に意識を向けるか、感覚に意識を向けるか。その程度の違いしかないだろう。でも二十年以上そう生きてきたんだから、いきなり感覚派になれと言われても無理だ。俺とココアが術式理論に弱いのと同じ。


「リリは魔力循環してないよね?」

「うん、やり方も分かんない」

「なんでブースト出来るの?」

「わかんない」

「ココア、そこは便利な言葉があるだろ」

「ファンタジー?」

「ネタか?」

「ガチだが?」


 病んでやがる。確かに便利な言葉ではあるけども。


「種族特性だよ」

「「「「あ~」」」」

「リリまで感心すんなよ。自分で血統継承技能って言ってたじゃん」

「そゆこと?」

「そゆこと」


 初めて窓口を跳び越えた時は獣人スゲーとしか思わなかったが、あんなこと出来る獣人を見かけたことがない。で、常時感知をするようになってから謎が解けた。窓口を跳び越える瞬間のリリは、驚異的な超高速循環を経てブーストする。


 あれはもう生まれながらの本能的な業、それこそ血統継承技能としか思えない。

 何が驚異的って、リリの魔力路は全身を網羅している。これが白ネコならぬ白亜の種族特性でないなら、何だと言うのかって感じだ。


「リリのブーストについてはリリの考えに任せる。危機的状況になれば血統継承技能が仕事すると思うし、リリは素の運動能力が高いからな」

「夜のリリってすごい跳ねるもんね」(笑)

「それな」(笑)

「うぅ、なんか恥ずかしいよ…」


 循環の効果って、魔術師界隈だと常識なのかもしれない。

 ミレディが魔術講座の時、双子に同じようなことを言ってた。


「ってことで高速大量循環のお時間だ。圧縮の熟練度も上がるから頑張れ」

「ねえイオリ、私も一緒にやりたい。でもやり方が分かんない」


 リリが一番強くなりそうで怖いんだが…


「俺の手に手を乗せてみ。両方な」

「こう?」

「そう。目を閉じて、自分の体の中に意識を向ける」


 右手からリリの左手に魔力を導入し、リリの体の輪郭をなぞるように循環させ、リリの右手から魔力を引き取る。魔力路が全身を網羅してるからスムーズだ。


「イオリの魔力が流れてる…」

「これが循環。もっと判りやすくいこうか」


 魔力波動に変調をかけ、リリの固有波動とシンクロさせていく。

 完全にシンクロさせるには俺の熟練度がまだ足りてない。でも、リリの魔力を牽引する感じで循環させるくらいは出来る。


「あ…私の魔力…循環してる…」

「(感度高えなあ)流れろ、巡れって、魔力に意識を乗せてみ」

「うん」


 ほぉらごらんなさい。もう意識的循環をマスターした。

 邪魔にならないよう俺の魔力を抜き取って完了。


「上出来だ」

「やった♪ イオリありがと♥」

「早いんだが! でも負けないし!」

「私も負けないよ!」

「僕もです!」


 循環、魔力路延伸、魔孔発生、フィジカルブースト、ブレインブーストまで進んで漸く皆の安全度は高まる。一ヵ月かそこらでどうなるもんでもないし、リリ以外は錬金術への応用が出来てナンボって話もある。


 ココアは年内にイイ線までいきそうな気がする。

 カノンの年内は無理だろうし、ユウトは下手すると一年がかりって線もある。


ピンポンパンポンピンポ~ン♪ ピンポパンピンポ~ン♪


「俺が出るからやってていいぞ」


 ドアノッカーはイラっとするので、ドアチャイムを造った。何気に来訪者が鳴らしたのは初めてだが悪くない出来だ。


「誰だ?」

「ダンカンですぞ!」


カチャ


「なんなの休息日狙って来てんの?」

「居ても立っても居られず。ともあれ入らせもらいますぞ」


 何を言いに来たのかは察しているので、玄関脇の小部屋へ背を押して入らせた。


「クロス殿!――」

「この距離で声張るな万年筆だろ?」

「然り! ライカに入られてはこのダンカンの立つ瀬がありますまい!」


 怒ってる(笑) 随一の取引先を自負してるらしいから分かるけども。


「落ち着けって。ライカが国内で売るのは王都圏だけだ」

「は…? それは真で?」

「真だ真。不義理はしねえから安心してくれ」

「信じておりましたぞクロス殿っ!」

「唾飛ばすな顔近えわ!」

「これは失敬。されば注文を請けてもらえるのですな?」

「ああ、うちの書式で注文くれればいつでも請ける」

「やれやれ、安堵しましたわい」

「売って終わりの商品じゃねえから、暇見つけて工房へ来てくれ」

「インクとペン先の交換ですな?」

「よくご存じなこって」

「されば明日の午後に工房へ伺います故、今日はこれにて」

「はいよ」


 現金なおっさんだ。ウチもそろそろ事務方の従業員を雇うべきかもな。



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