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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第4章:立身出世編

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66:シャリア・バラッカの本性



「は、腹減って死にそう………調子に乗ってもうた………」


 森の真ん中辺りで狩って腹割って良き魔石をゲットしてを繰り返していたら、木漏れ日が差し始めたのでダッシュこいて森を抜けたがもう昼だ。


 この森は魔獣の密度が高いわ。

 中央辺りは猛者が広めの縄張りを確保してるらしく、たぶん五十個を超える良き魔石をゲットできた。

 森の際に近くなるほど弱く小さい魔獣ばかりになる。


 これは魔獣領域が森の場合の決まり事かもしれない。


「こんだけ飢えてると三連チャンでも美味いな」


 遠目に神山ウェルンは見えるものの、流石に聖都は見えない。

 五〇〇キロメートルはないだろうが、四〇〇はありそうだ。

 スニーカーを潰す覚悟で走れば四時間はかからない。

 森でヒーハーしすぎて、聖都に着くのは夕方になっちまう。


「干し肉とのコラボも中々イケる。いやそうじゃなく」


 軽くなった背嚢を背負って駆け出す。

 意識明瞭化を解除しようかと思ったが、最大持続時間を検証してないので解除はしないでおこう。


 なんとなく干し肉を発火で炙ってみたら美味い。いやそれでもなく。


 残り少ない経口補水液をひと煽りし、地面を抉り蹴り聖都を目指した。









「ここはギリシアか?」


 予想どおり夕方に辿り着いた聖都ハシュアの街並みは、白い建物だらけ。

 側柱や外柱も白漆喰で塗られているから、真っ白で夕陽に映える。

 不思議な青緑色の水を湛える湖面に映る街並みも綺麗だ。


 視線を上げれば、湖とは反対側の神山ウェルンの麓に宮殿がある。

 聖皇宮ってやつだ。

 これまた真っ白なのだが、魔力光で間違いない翡翠色が、白い壁面を垂直に走っていて神秘的。

 宗教国家のイメージにもぴったり。


「そこの(たぶん)キレイなお姉さん、ちょっといいかな?」

「な、なんでしょう…」

「バラッカ商会の場所を知ってれば教えて欲しくてさ」


 そんなあからさまにホッとしなくてもよくね?


「西二条大路を聖皇宮へ向けて歩くと、右手側にあります」

「西二条大路はどこ?」

「あちらへ進んで一本目の広い道です」

「ありがと。お礼に干し肉食べる?」

「い、いいえ、結構です…」


 こらこら逃げるな逃げるな。


 彼女もだけど、ウェルニアの衣服はアラブ辺りを彷彿とさせる。

 生地はお決まりのように白で、女性は漏れなくベールを被っている。

 男性は細いターバンって感じだが、これはアデーレにも多いから目新しくはない。


 オシャレのしどころは帯の色みたいだ。

 女性の帯は淡い色合いで、男性の帯は濃い原色。


 アデーレの住人は性別に関係なくピアスをしてる人が多いものの、ハシュアの人はアクセサリーの類を付けてる人を見かけない。

 山一つ越えただけでこうも違うのは面白いものだ。


「おー、デカいな。ダンカン商会の五倍はデカい」


 聖都は建物の高さが決まってるのか、高くても五階建てくらい。

 バラッカ商会も五階建てなんだが敷地面積が広い。


 不可解なのは、魔獣領域が多いのに街が外郭で囲まれてないこと。

 外郭がないから敷地を広くとれるのだろうけど、逸れ魔獣が来たら確実に死人がでる。


「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか」

「魔石が欲しいんですけど、偉い人と話せます?」

「魔石でしたら私がご案内いたします」

「先に確認しておきたいことがあるので、どうにかお願いできませんか?」

「…では伺って参りますので少しお待ちください」

「ありがとう」


 お国柄なのか上品な雰囲気の人が多いね。

 口調も穏やかだし、俺の口の悪さが目立たないようにせねば。


 暫く待っていると、さっきの女性が『少しだけならお会いになるそうです』と言って五階へ案内してくれた。


 偉いさんとナントカは高い所がお好きの法則。

 エレベーターがあるなら解かるけど、階段の世界なんだから大変だろうに。


コンコンコン


「会長、お客様をご案内致しました」

「どうぞ」

(女…秘書?)


カチャ


 扉の向こうには、赤いベールを被り口元を隠す女性が執務椅子に座っていた。

 切れ長な目と、通っている鼻筋からして、クールビューティ確率は九九パー。


「初めまして、イオリ・クロスと申します。不躾な往訪に応えてくださり、ありがたく感謝します」


 このところルーカスに仕込まれている礼儀作法が役に立った。


「ご丁寧なご挨拶に安堵しました。当商会の会長を務めるシャリア・バラッカと申します。どうぞそちらへお掛けください」

「ありがとうございます」

「会長、私は廊下でお待ちします」

「そうしてください」


 三人は厳しい幅のソファに腰を下ろすと、会長が対面に腰を下ろした。

 お茶とかは出ないらしい。

 まあ、どこの馬の骨ともって感じだもんな。


「私はヴォーリッツ王国ローメンス辺境伯領のアデーレから、質の高い魔石の買い付け来ました」

「アデーレからわざわざこちらへ?」

「はい、魔導製品に使える魔石の買い占めが起きているもので」


 おっと、感知をかけられた。なかなか巧いな。


「商人には見えませんが、どういったお立場ですの?」


 減圧して魔孔を開くべきか、減圧しないで開くべきか。

 感知が巧かったからなしで開くか。


「もう一度感知をかけてください」


 驚いた様子の会長と目を合わせたまま魔孔を開くと、魔力に干渉された。

 会長が大きく目を見開く。


「っ……凄まじい……ですわね…」

「錬金術師の端くれを自負しています」

「……もしや、シルバラッド錬金工房の?」


 あいつとことん有名だなあ。


「はい、年末か来年初には後継として工房主を拝命する予定です」

「まあ! それであれば、私に会わずとも喜んでお売りしますのに」

「嬉しい言葉ですが、先に品質と数、納期、支払い方法を確認したく」

「誠実ですのね。お伺いします」


 魔石は大きくても親指の先大くらいで、十回以上の魔力充填に耐える品質。


 数は千個以上。あるなら二千でも三千でもいい。


 希望納期は今日から二ヵ月以内にアデーレ着。


 支払い方法はヴォーリッツ王国の信用会計保証券札。

 証札はウェルニアの課税率から一割の減免が可能なのか。


「特権工房でらっしゃるのね。喜んでお取引いたしますわ」

「条件を満たせると理解しても?」

「ええ、数も在庫だけで千五百個は確実にあります」

「マジか!? あ…」

「ふふっ、そちらが本性なのね。嫌いじゃないわよ?」

「あれま、会長殿もそれが本性?」

「シャリアと呼んで。イオリと呼んでいい?」

「もちろんだ。は~、肩凝ったわあ」

「分かるわあ。貴族の気が知れないわよね」

「それな」(笑)

「それよ」(笑)


 案内してくれたアミーナという名の従業員を呼び入れると、二人して足を組み肘掛けに肘をついている俺たちを見たアミーナは、ため息をつき頭を振った。


「どうして三十分ももたないのですか…」

「この前は頑張ったでしょう?」

「一時間経つ前に逃げ出しただけじゃありませんか」

「何を言ってるのか分からないわね」

「とにかく素足を隠してください! はしたない!」


 そうね。結構キワドイとこまで見えてるからね。


「ところでどうする? 持って帰る?」

「いや、また山越えして帰るから工房に送って」

「山脈を越えて来たの!?」

「えっ!?」

「八日までに帰んなきゃいけないもんでね」

「いつアデーレを発ったの?」

「一昨日の昼」

「!?」

「………ねぇイオリ、今夜はうちに泊まらない?」

「会長!? 駄目ですよお客様! 会長の毒牙にかかってしまいます!」

「毒牙ってなによ! 毒なんてないわよ!」


 論点はそこじゃないと思うんだが。



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