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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第3章:自立編

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59:クラン金色狐



 ド早朝の日課がランニングから素振りに変わった今日この頃、漸く無駄な力みがなくなってきたと感じながらも、四つん這いで汗ダーダー。


「あ"~~~~暑いっ!」


 五月が夏ってのは未だにピンとこない。

 一年で最も暑くなるのは五月下旬らしいが、これ以上暑くなったら熱中症で死人が出るんじゃないかと心配になる。


 まあ、この辺の夏は湿度が低いから、日陰に入ると涼しくさえあるんだが。


「よし復活! 今日はビッグイベントだから早めに行くべ」


 部屋に上がると、昨夜仕込んでおいたフレンチトーストをリリが焼いている。


「おはようイオリ♥」

「おはよ。バターのいい匂いだ。と言いつつリリの匂いを嗅ぐ」

「くすぐったいよぉ」


 ほんと何だろねリリの甘い匂いって。

 永遠に嗅いでられる。

 いやそうじゃなく。


「ユウト起こすから上着て。俺が焼いとく」

「ありがと♪ チュ♥」


 早くに出勤するリリが顔を合わせるのは俺だけだが、最近は汗ダーダーになるからユウトを起こして桶風呂に湯を溜めてもらっている。

 一方で、朝メシを食ってから身支度をするリリは、薄いキャミを着てるだけ。


 そう、魅惑の先っちょが丸わかり。

 スレンダー巨ぬーのリリは、ココアが言うにHカップらしい。

 ココアは『あたしはあたしのGカップを強く主張する! 例えギリFカップだとしてもだ!』と自分で言ってケラケラ笑ってた。


 そんなココアはブラの試作を続けているものの、コスを作るのとは勝手が違うらしく悪戦苦闘している。

 【造形】も試していたがデザインと色と着け心地しか気にしてなかったため、カップ部分の構造がよく判らずダメだったらしい。

 着けてるブラを分解したいが替えはないので踏ん切りがつかないって感じ。

 服飾魔術に本腰を入れたのはそのせいかもしれない。


「えーと…あった」


 焼き上がったフレンチトーストを皿に移し、砂糖無添加の重いホイップクリームにプレーンヨーグルトを混ぜ、ワンスプーン分を添える。

 粉砂糖を振って、メイプルシロップに違いないシロップを瓶ごと置いたら出来上がり。


カチャ


「ユウト家事だ!」


 発音は火事と同じだし風呂の用意は家事である。


「ふぁ~……おはようございます……」

「ぉはよう…イオくん……ん~~~っ」

「おはようカノン、乳はみ出てるぞ」

「やだっ!? もぉ…」

「いつもの嘘に決まってるじゃないですか」

「いつもの言うな。悪ぃけど風呂ためといてくれ」

「はい」


 男子は起き抜けに立ち上がれないのでダイニングキッチンへ戻る。

 なんせ勃ってるもんでね。


「紅茶淹れるけど飲むか?」

「うん♪ いつも不思議なんだけど、どうしてイオリが作ると美味しいの?」

「心の中で美味しくなぁれ萌え萌えきゅん言うてるから」

「なにそれ」(笑)

「ココアが缶コーヒーにやるやつ」


 ちょっと美味しく感じてた俺は頭がおかしいというね。


 出勤するリリを見送ってから風呂で汗を洗い流し、カノンがフレンチトーストを焼いてくれたので、ココアを起こして次々と口に放り込む。

 余裕で一万キロカロリーを超えているはずだが、太る気配がないのでヨシ。


 皆で後片付けと部屋の掃除をして西広場へ。


 広場前には幌馬車と箱馬車が停まっていて、四人の男女が会話を交わしながらうちの工場を覗いている。


 ガンドウとどっこいで体格が良い大剣士。

 ミレディから聞いたとおり俺と体格が似てる狼人の剣士。

 遠目でもしなやかな肢体の黒猫人は、短剣士にして弓も使える斥候。

 ドレス染みた服で白銀の長杖を持つ支援術師は、聖皇国伯爵家のご令嬢だとか。


 さて、どんなファーストコンタクトが良かろうか……よし決めた。


「大変だ! 朝から泥棒がいるぞ!」

「ばっ!?」

「違う!」

「それ誤解だから!」

「私たち盗人ではありませんわ!」


 ココアたちに呆れた目を向けられ、早起きな近隣住人たちがザワつく中、軽く手を挙げながら四人に歩み寄る。


金色狐(こんじきこ)の皆さんよろしくどーぞ」

「ちっ、そういうことか」

「あぁ例の…焦ったぜ、ったく」

「あはは、ミーが言ってたとおり綺麗な髪色してるね」

「そういうことですのね。人が悪いですわ。(後ろの三人は凄まじいですわね)」


 いよいよ今日は、ミレディとお袋さんが迷宮都市へ旅立つ。

 四人はミレディのパーティーメンバーで、引っ越すついでに迷宮都市へ出荷する複合魔導具を輸送してもらう。


 直接取引だから輸送はこっちで手配しなければならず、護衛は必須だよなと考えた時にミレディの顔が頭に浮かんだ。


 そこで相談したところ、パーティーメンバーが引っ越しの手伝いに来るから、報酬次第で輸送を請け負うとミレディから提案された。

 信頼性は抜群なので、四百万シリンの報酬を提示したらミレディが即決。


「(感知を止めろっつーの)イオリ、ココア、ユウト、カノンだ」

「俺はリーダーのクラウドだ。今回の依頼、正式に請けさせてもらう」

「よろしく頼むわ」

「シドだ。いい体躯してるな?」

「シドもバランス良さそうだ」

「へっ、ありがとよ。(戦れそうな雰囲気があるぜ)」

「ボクはルカだよ」

「(ボクっ娘きた)しっぽ触ってい痛っ! スネを蹴るなスネを!」

「正座させるよ? 三時間」


 これマジなやつだ。


「すんませんでした」

「あはは、面白いね。触らせないけど」

「アンネリーゼですわ。皆さんは四人ともに錬金術師と伺ったのですが?」

「(それで感知か)端くれだけどな」

「…貴方は魔力がありませんのに、錬金術師を名乗っていますの?」

(((あ~)))

「俺なんちゃってだから」

「そ、そうですのね。(意味が分かりませんわ)」

(バカだ(笑))

(なんちゃってで魔孔を閉じられるなら楽なのになぁ)

(強豪探索者にも感知されないんですねぇ)


 そうこうしていると、お袋さんとミレディが階段を下りて来た。

 お袋さんは固い笑顔で目礼し、そそくさと箱馬車に乗り込んでいく。


 お袋さんとは何度も顔を合わせてるが、あの人こそ本物のシャイだ。

 最高に美味いパウンドケーキを食えなくなるのは残念でしかない。


「待たせたね。荷を引き取りに行こうか」


 シドが幌馬車の御者台に上り、ミレディたちは箱馬車に。

 旅の荷物だけが積まれた幌馬車の荷台に便乗し、カッポカッポと工房へ。


 ミレディが畏まった挨拶を始めると、クラウドとシドが歩み寄ってきた。


「荷積みを手伝おう」

「ありがとな。でも百個だけだから手伝ってもらう程じゃねえよ」


 荷造りして積んである四箱の底箱に腕を回し、軽くブーストしてリフトアップ。


「おいおい…」

「ミレディが買った物より軽くなってるのか?」

「いや、あれより軽くすっと外装が脆くなる」

「見かけによらず凄い膂力ですわね…」

「クラウドも持てる?」

「どうだろうな。イオリ、試してもいいか?」

「今ブーストしてっから持てるだけだって」

「はあ!?」

「そんなの嘘ですわ! 微塵も魔力を感じませんもの!」


 嘘つき呼ばわりされてココアたちへ目を向けると、三人してウンウンと頷いている。

 どういう意味の頷きだコラ。


「リゼ、シド、イオリが言ったことは嘘じゃないよ。頭はおかしいけどね」

「待てこら兄貴、宇宙(そら)の果てまでぶっ飛ばすぞ」

「だから兄貴って呼ぶんじゃないよ!」

「お静かになさって。ミレディさん、解かるように説明してくださるかしら」

「信じられないことだけどね、イオリは魔孔を閉じたまま強化してるのさ」

「んなこと出来んのかよ!?」

「………信じられませんわ」

「そうだろうね。イオリ、魔孔を開いてくれるかい」

「へいへい」


 毛細魔力路の先端に形成された魔孔を開く。


「だっ!?」

「うっ!? ど、どんな強度をしていますの……」

「あんたまた強度が上がってるじゃないか。どんな体してるんだい」

「これはこれで苦労があんだぞうるせぇな」


 魔孔を開いたまま歩いてると、周囲の魔術師が二度見してくる。

 最初の数人が女魔術師だったもんで「モテ期?」と思ったら違った。

 隠蔽してるとブーストできないし、魔孔を閉じて維持するのはすげぇ疲れる。


「金払ったりしたいから、とりま積ませてくれ」


 荷台に跳び乗って箱を横並びに並べ、魔孔を閉じて家に入った。



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