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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第3章:自立編

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52:昼焼肉で飲もうぜ?



 魔獣狩りから戻った三日後の昼前、ミレディがルーカス宅にやって来た。

 解体職人ラモンから、解体が終わったと連絡があったそうだ。


 解体料をミレディに払わせることもあり、シカとヒツジの肉を分けることになっている。

 分ける肉の売却額より解体料の方が安い気もするが、さておき。


 ギルド裏の解体場へ行くと、肉の塊がフックチェーンに吊り下げられていた。

 その前にはノコギリの峰で肩をトントンしながら肉を見上げるラモンと、バインダーっぽい物を小脇に抱えラモンの話を聞く職員が一人いる。


「お、やっと来たか。早いとこ決めること決めてくれ。肉が温もっちまう」


 三日も経ってんのに何を今更と思ったが、吊られてる肉塊をよくよく見れば白い冷気を垂らしている。


「奥にあるデカい箱って冷凍庫?」

「私の兄さんが魔獣狩りをしてた頃にやっと導入された代物だよ」

「へぇ」

「俺もシカを捌きながらライゼンのことを思い出したぜ」


 ミレディの兄貴が迷宮で死んだのは八年くらい前だと聞いた。

 魔獣を狩ってたのは更に前なのに、ラモンはそれほど老けてない。

 ミレディの兄貴と一緒に狩りをしてたんだろうか。


「懐かしいね」

「ところでよ、どうやってシカを仕留めたんだ? ミレディじゃねえだろ」


 ココアたちが俺を横目で見る中、ミレディはカノンの肩をぐっと抱き寄せた。


「この子が圧縮した風球で吹き飛ばしたのさ」

「ぇ…」

「ほお! ってこたあ嬢ちゃんが嵐風の乙女か! いや大したもんだ!」

「えぇ…」


 カノンは半眼になってるけどグッジョブだミレディ。

 こういう場面があると、ルーカスが口止めするのも納得できる。


「査定担当のユーリです。そろそろ持ち帰る部分を決めて頂けますか?」

「私はシカとヒツジの腿肉をこれくらいもらうけどいいかい?」

「そんだけでいいのか? それに仔ヒツジっつたら厚切りチョップじゃね?」

「私は好きだけどね。母さんが脂身は臭いも苦手なんだよ」


 なるほどね、ミレディはホント親孝行だ。


「俺らはどうする?」

「一番食べるセンパイが決めていいよ」

「そうだね」

「僕もそれで構いません」

「じゃあヒツジ一頭とシカは縦割りの半身で。荷車借りれる?」

「どうぞ使ってください」

「縦割りときたか。骨(のこ)がいるな」

「背骨は避けてもいいぞ?」

「そいつは楽で助かる」


 解体職人の面目躍如とばかりに、ラモンは冷凍肉を物ともせず切り分けていく。

 こういうプロの仕事を見てると、いつか解体を習いたいと思ってしまう。


「なあユウト」

「はい」

「瞬間部分解凍ってできる?」

「出来ると思います。もうじき昼時ですもんね」

「焼き肉ランチ! わーい♪」


 ココアも小躍りする昼焼肉と昼酒が決定した。仕事もないしいいだろう。


「ミレディ、シカのバラ肉と厚切りチョップの炭火焼きで昼酒なんてどうだ?」

「いいねぇ。遠慮なく呼ばれるよ」

「先に帰って焼き台の用意をしようかな?」

「悪いけど頼むわ。あ、エールと白ワインを冷やしといてくれ」

「エールは炭酸添加した方だよね?」

「そっち」

「あたしも手伝うー」

「ありがとココアちゃん。じゃあ行こっか♪」

「おー♪」


 査定担当のユーリが「いいなぁ…」って目で見てる。

 ギルドの月給じゃあ、魔獣肉を腹一杯になるまでってのは無理だもんな。


「もうすぐ昼休憩だろ? 来るか?」

「いいんですか!?」

「焼き肉はワイワイやりながら食う方が美味いからな」

「ありがとうございます! 昼休憩の順番を変えてもらいます!」


 あー、そういうのもあるんだな。


「リリも連れて来てくれるか?」

「リリ…リリアーナさんでしょうか?」

「そう、超絶カワイイ俺のカノジョ」

「う、噂は本当だったんですね……承知しました」


 あれ? 失恋させちゃった? ざまーみろ(笑)

 耳がダンボになってるラモンも誘ってやるか。


「ラモンも来るかー?」

「応よ! 恩に着るぜ!」

「すみません、先に買い取り分の査定額をお伝えしてもいいでしょうか」


 気が早ってんな。とっとと休憩の順番変えなきゃだもんな。


「イイ感じでよろしく」

「シルバラッド様のお身内ですのでもちろん」


 シカ一頭半分の肉と角四本が税引き後で四八〇万シリン。

 ヒツジ五頭分の肉が税引き後で七五〇万シリン。

 締めて一二三〇万シリン。

 狩りの依頼料が四、五〇〇万って相場も納得の価格だ。


「肉の高値がハンパねえな。文句なくオーケーだ」

「良かったです。解体費用の四十五万ユルグはラモンさんにお支払いください」

「うちの兄貴が払う」

「だから兄貴と言うな!」

「うちの漢前が払う」

「お前はっ!」

「はいはい嬉しいのは分かったからお支払いして差し上げろ」


 なんか「言い逃げするな」とかヤイヤイ言ってるが逃げてないし。

 荷車取りに行くだけだし。


「なあユウト、鞣しを頼む革職人って工房街だよな?」

「はい、東大通りから一本入った所で、大した規模の工房を構えています」

「持ち込みは焼き肉食ってからだな」

「鞣しと染色の納期は二ヵ月半らしいので、急ぐことはありませんよ」


 意外と早い。半年くらいかかると思ってた。

 二ヵ月半ってことは六月下旬か。

 なんちゃってアイテムボックスを造るのが楽しみだ。

 でも魔晶の納期が半年なんだよなあ。あー九月が待ち遠しい。



 肉と皮を満載してルーカス宅へ帰ると、ルーカスとカノンがデカいテーブルを外へ出そうと四苦八苦していた。

 ココアは魔法少女アニメのエンディング曲を歌いながら炭火を熾している。


「俺がやるから下がれ虚弱ども」

「くっ」

「イオくんが酷い」(笑)

「世界人口の大半が虚弱になりますよ」(苦笑)


 いい加減にメシ食う用のデカい折り畳み式テーブルを造らないとだな。


 肉の瞬間部分解凍と切り分けが終わったタイミングで、軽やかにスキップするリリを先頭にラモンとユーリがやって来た。


「イオリ~♥」

「お疲れさん。昼間のリリもカワイイな」

「嬉しい♪ イオリも素敵だよ♥」

「シルバラッド様、ご相伴に預かるべく参りました」

「戦士ギルド査定官のユーリと申します。何卒お見知りおきください」

「我が弟子たちが世話になっている。今後ともよろしく頼む」

「「はい」」


 ユウトとカノン合作のステンレス製真空断熱タンブラーにエールを注ぐ。

 微炭酸のエールには、カノンが炭酸を圧縮充填してキンキンに冷えている。

 アメリカのライトビールみたいな味わいにグレードアップして最高だ。


「んじゃ始めるか。先ずは俺らの故郷の味に寄せたエールを試してくれ。乾杯!」

『乾杯!』


 かぁーーーー美味いっ!

 ラモンたちは強い炭酸に一瞬驚いたようだが、すぐさまゴクゴク飲み始めた。


「くうっ! このエールは何でこんない美味いんだ!? ゲフゥ」

「エールの価値観が変わる美味しさです! ゲフゥ」

「野営食といいエールといい、イオリたちの故郷は食い道楽の集まりかい」

「ははは、げっぷは出るけど美味いだろ。肉もじゃんじゃん焼いて食ってくれ」


 言いながら強火で表面をカリッと焼いたラムチョップをガブリ…


「美味っ!? 柔らかっ!? これヤバい! また狩りに行くしかねえ!」

「ジューシーで美味しーーーい!」

「ん~~~皆と一緒だし美味しいし幸せ♪」

「本当に美味しいね! ラムは少し苦手だったけど全然平気だよ!」

「これは絶品ですね。感動的に美味しいです」


 薄めにスライスしたシカのバラ肉も怖ろしく美味い。

 噛むほどに旨味が湧きだすとはこのことだ。

 狩った魔獣だからジビエなんだが、熟成なんぞ不要だと思える。


「年末に市場で買った魔獣肉より断然美味いよな」

「これまた食べたくなるやつだよ」

「ユウトの水系統魔術が効いてるんだろうね」

「それはあるな。ユウトぐっじょぶ」

「ありがとうございます。カノンさんのエールも最高に美味しいです」

「今度はホップとアルコールも添加してみようかな♪」


 其々が思い思いに会話と酒と肉を大いに楽しんだ。

 千鳥足で帰っていったユーリが午後の仕事をちゃんとしたのかは知らん。

 まぁ無理だとは思うが。



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