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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第3章:自立編

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49:魔力お化けの魔獣狩り



 ミレディが二頭の幼体を釣ってきた。

 幻惑されているため、二頭はじゃれ合いながらミレディの後ろをついて来てるのだが…


「デカいなオイ。どこに幼さがあんだよ」


 感知で判ってはいたものの、何がデカいって角がデカい。


 シカ魔獣の種名は斧角なんちゃらなのだが、まさにデカい斧みたいな角を生やしている。

 オスの成体なんて、頭を振って木を伐り倒すらしい。


 ミレディが釣ってきた幼体は二頭ともオスのようで、幼体らしかなぬ立派な角を生やしてらっしゃる。

 気合入れ直さないとバッサリやられそうだ。


「ここなら広さ的にイケそうだな」


 魔力を使った肉体強化は二種類ある。

 運動能力の強化と、脳機能を含めた感覚器官、つまり脳力と五感の強化だ。

 個人的にはフィジカルブーストと、ブレインブーストと呼んでいる。


 フィジカルブーストは、素の運動能力を飛躍的に高めると同時に、骨格や筋、内臓、血管、皮膚などの破壊強度まで高める。

 なんせ岩殴っても痛くなーい。


 ブレインブーストは、情報処理能力と感覚器官の機能を飛躍的に高める。


 フィジカルブーストなら、日常生活の中でもトレーニングはできる。

 ミスリル板を曲げてしまうような失敗に注意さえすれば。


 しかし、ブレインブーストは普段のトレーニングが難しい。

 視覚・嗅覚・味覚・触覚はまあいいのだが、聴覚が声や物音を拾いまくる。

 それを脳が処理するため、情報過多で作業や自分たちの会話に集中できない。

 家の中にいても、外の音声や物音を拾うくらい鋭敏になる。

 少しでもイラつくと、ブレインブーストが切れてしまうのも難点だ。

 首から上の魔力循環が難しいのと同じような理由だろう。


 が、この静かな森の中なら、感知さえ切ればイケそうな気がする。

 感知を切ると魔獣の接近に気づけなくなるが、そこはミレディ兄貴に丸投げで。


「ふぅーーー、よし」


 魔力感知を切り、ダブルブーストに集中する。


(っ!? と、とんでもない魔力の奔流……まるで人型の魔力だ…)


 循環する魔力の音まで聞こえる気がするものの、これは血流の音だろう。

 心臓の音もやたらとうるさいのだが、


「こりゃいい。シカがどう動くか予測できる」


 真っ直ぐ歩く時の足運びや土を踏む音と、方向を変える時の音が違う。

 ブーストした視覚と聴覚がいい仕事してる。


 一定のリズムで心臓を鳴らすミレディが、俺の横で立ち止まり身を翻した。


「(魔力圧で眩暈がするね…)いいかい?」

「おう、右のヤツからやる」


 首肯したミレディが『【解除】』と呟いた瞬間、シカが目の色を深紅に変え俺を視認した。

 一拍置いたミレディが『【高揚】』と呟けば、二頭がググっと体躯を沈める。


「ブモッ! ブモッ!」

「ブルルッ! ブモーーッ!」


 右の嘶きを切っ掛けに二頭が地を蹴った。ぶっちゃけ怖い……が!


「気合!」


 間合いが詰まり過ぎるとミレディのサポートに支障がでると思い、駆け出す。


 体一つ分先行してくる右のシカへ突貫すると見せかけ、サイドステップで左へ。

 釣られて左へ動くシカがもう一頭の進路を妨害する形に持ちこめた。


「し!」


 地面を抉り蹴ってからの高速サイドステップで右斜め前へ。

 ヘッドスライディングよろしく二歩目を踏み、加速度を上げて這うように間合いを詰める。


「ふっ!」


 踵から踏み込んで制動をかけ、前への運動力ベクトルを上へ向け、


「ふんっ!」


ゴボバッッッ!!!


「うへ!?」


 打ち上げで【獅子哮(ししこう)】を叩きこんだら、シカの頭が破裂した…怖っ!

 なんか色んな液とかが……臭っ!?


ドスン…


「ブモッ!? ブモォーーーッッ!!」


 頭を失くし崩れ落ちた仲間を認識したシカが、憤怒の嘶きを上げた。

 仲間の死骸を躊躇なく踏み越え、斧角を振りかぶり左目で俺に狙いを定めた。


ブォン!


 斧角の軌道予測に集中すると、


「ははっ」


 1秒1フレームかよってくらいのスローモーション。ならばこう!


 左半身になって斧角を紙一重で躱し、片手バク転で後ろへ跳ねる。

 着地と同時に深く屈み、片手をついて利き脚に力を込める。

 シカの右目は俺を捉えているも、動きが遅すぎるぜ。


 相撲、アメフト、ラグビー、どれでもいいが特攻待ったなし。


「ぬんっ!」


ドバッ!


 あまりの瞬発力と加速度に、思わず口角が吊り上がってしまう。


 コンマ秒で間合いを潰す。

 斧角の底面を掌底で跳ね上げ、右肘撃を首へ叩き込む。

 八極拳なら外門頂肘。


「ふんっ!!!」


ドゴシュッッッ!!!!!


「おう!?」


 首折り狙いだったのに、上半分が抉れて飛んでった。

 服、【清浄】でキレイになるんだろうか…



◆―― ミレディ回想 ――◆


 終わってみれば、危なげの欠片もない圧勝。

 少なくとも、三等級の強化使い格闘士より速く、強い。

 ミレイアなど軽くあしらわれるだろう。

 イオリの魔力量と強度に鑑みれば、当然と言えるのだけど。


 しかし、体術込みの闘技が洗練されすぎている。

 イオリが使う闘技は、例え一等級探索者でも見たことがないだろう。

 どんな御仁から、どんな指南を享ければ身につくのか。


 悩ましい。『安全に稼ぐ』の言葉が悩ましい。

 それでも、パーティーに欲しいと想わずにはいられない。


◆ー◆ー◆


「なあミレディ。……おい!」

「っと、すまん。どうした?」

「これさ、光系統の【清浄】でキレイになると思う?」

「知るか。高い金払って衣服に【清浄】をかけるのはお前たちくらいだ」


 初めての時、教会のおっさんにも「はい?」って聞き返されたもんな。

 つーか、服以外の何に使うんだよ。


 仕立て屋に一着だけでも特急で作ってくれって頼んでみるか。

 追加料金払うって言えばやってくれるだろ。

 労働基準法? それ何フレーバー? って世界だし。


 あー腹減った。ブースト使うと腹減るのが難点だよな。

 さっさと戻ろう。


「俺が引きずってくから索敵してくれ」

「魔力はもつのか?」

「余裕。三日に一度は気づくくらい増えてるし」

「どんな魔力器官を構築したんだ…」

「魔力器官って、やっぱ人によって違うんだ?」

「当然だ」


 高位の魔術師は、独自の理論や使い勝手に応じて構築を変えるそうだ。

 正に魔改造って感じ。


 基本形は石造りの浴槽みたいな構造らしいが、浴槽を見たことがない人は風呂用のデカい桶とか、井戸とかをイメージして構築するらしい。


「【地槍】【地槍】【地槍】【地槍】」


ドシュドシュドシュドシュ!


「えぇ…」

「何だ? カエルも持って帰りたいのか? 積めるヒツジが減るぞ?」

「んなわけねえだろ」

「毒腺だけ取るか? それなりの値で売れるぞ?」

「要らん」


 楽に汚れず倒せていいなと思っただけだ。



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