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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第3章:自立編

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49/61

48:画策



 道往きは快調で、三日目の午前中に魔獣の森の際に到達した。

 予想を遥かに超えて森林の密度は高く、木の一本一本が異様に太い。

 とまあ、それはいいんだが。


「想像の斜め上いってんな」

「怖いよ…」

「考えが安易すぎたね…」

「どんな生態系ピラミッドなんですかね…」


 森の際にはデカいヘビ。ショッキンググリーン単色のツルっとしたやつ。

 胴体の直径は三〇センチくらい。長さはよく分からないが長い。


「なあ、あれ毒持ち?」

「どちらも神経毒だ。毒性は同等なんだが、カエルは群れるし射程も長い。おまけに酸毒も分泌するから溶かしながら食う。お、打ちそうだから見てろ」


ゲコッ ゲーコ ゲーコ ゲーコ ゲコッ ドシュドシュドシュドシュドシュッ!


ギシャァァァァァァァ……ドスンバタンドスン……


「「「「うわぁ」」」」

「決まったな」


 体長一メートル近いずんぐりむっくりのカエル五匹が、鋭い先端の舌をすんごい勢いでヘビに刺した。

 のたうち回るヘビの胴体にはバックリ溶けた跡がいくつもあり、瞬く間に毒で動けなくなったヘビが地面に沈んだ。


 五匹がビョーンと跳んで食らいつく。


「さあ行くか」

「「「「いやいやいやいや!」」」」

「ん? 奥へ行かないとシカはいないぞ?」

「あの横を歩いて行く気かよ!」

「食いきるまでは他に目を向けやしない。ほら行くぞ」


 やべえ、ミレディが漢前だ。兄貴って呼ぼうかしら。

 いやそうじゃなく。

 ココアとカノンは顔面蒼白だ。ユウトも膝がカクカクしてる。


「ミレディちょい待ち」

「どうした」

「お前ら馬車で待ってていいんだぞ?」

「センパイは行くの?」

「さすがに独りじゃシカ引きずって来れねえだろ。いくらミレディが漢前でも」

「誰が男前だ!」


 ココアとカノンが『怖いけど…』と呟いた。

 俺だけ行かせることに気が引けるんだろう。


「ユウト、二人を連れて馬車に戻ってろ。反論は認めねえ。行け」

「分かりました。カノンさん、吉岡さん、ここは黒須さんに任せましょう」

「…ちゃんと帰って来てね?」

「心配すんな。ミレディの兄貴が肉盾になってくれる」

「お前ほんと失礼で酷いな!?」


 マジでブチギレ五秒前のミレディを宥め、背を押してヘビ食ってるカエルどもの横を抜け森の中へ。

 森の密度が高いから一気に薄暗くなる。


「イオリも待ってていいんだぞ。シカは――」

「土系統魔術で運べるんだろ。分かってんよ」

「錬金以外は苦手なくせに、そういう察しはいいな。何を企んでる?」


 ミレディはムダに勘がいい。


「状況次第だけど、ちっと試したいことがあってさ」

「フン、強化だろう」

「お前ほんとムダに勘がいいな?」

「お前はいつも一言余計だな? で、もう出来るのか?」


 難しい質問しやがる。

 試すって言ってんだから分かるわけないだろ。


「これくらいの厚さのミスリル板なら腕力で曲げれる」

「は?」


 経験豊富なミレディがこの反応か。悪くない。

 ぶっちゃけ、魔獣狩りよりもブーストに関するミレディの評価を知りたかったまである。


「ちょっと見ててくれ」


 カーゴパンツのポケットから作業用の革グローブを取り出しつけた。

 巨木の前に自然体で立ってゲートを開き、魔力を供給しながら高速循環をかける。

 肌から魔力が漏れ出る感覚を掴んだところで拡散しないよう留め、右脚と右拳に魔力を集中させ…


「しっ」


ドパンッッ!!!


「なっ!?」


 軸足が地面に跡を残し、古流の縦拳打が巨木に楕円形の破砕痕を描いた。

 円心の深さは二〇センチあるかないか。

 前回より深くなってるし、拳にダメージはない。

 この場の雰囲気のせいか調子がイイような。


「もうひとつ見てくれ」

「あ、ああ」


 今度は左足首から左膝、股関節、腰、脊柱、右肩、右肘、右手首、右掌の一連に魔力を集中させ…


「覇ッ!」


ドシンッ! ゴバーーーンッッッ!!!


「ば……馬鹿な……!?」


 深く踏んだ震脚が木の根ごと地面を穿ち、大地の反発力と筋力を関節の連動で右掌に伝播させ、掌底打が巨木の深部を粉砕した。

 円形破砕痕の奥に粉砕された木屑が貯まっている。

 アニメでしかない結果に、我ながら震えてくる。


「ふぅ。最初のが【岩崩(がんほう)】で、今のは【獅子哮(ししこう)】っていう浸透勁の打撃だ。どう思う?」

「本気…いや違うな。全力でやったのか?」

「どっちも八…えぇと、今日の八割だな。少しずつ上げながら試してる」

「前々から思っていたが、イオリは頭がおかしいな?」

「お、ケンカか? ケンカだな?」

「茶化すな。どこで試してるんだ?」

「黙秘権を行使する」

「ど・こ・で・た・め・し・て・る」

「うるせえな? ルーカスに喋るなって言われてんだよ。ココアたちも知らん」

(シルバラッド様が口止めなさる程ということか……)


 ミレディが、哀れな木と俺を交互に見て、思案を始めた瞬間に手刀!?

 薙がれる手刀を半身のスウェーで躱した。


「てめえ、魔術師のくせに意外と速いじゃねえか」

「イオリも錬金術師だろうに」

「まぁそうね。で?」

「私が幼体を釣るから狩ってみないか?」


 そうこなくちゃ。


「やる」

「索敵をやったことはあるか?」

「むしろ得意」

「おかしなな錬金術師だ」


 感知をかけろ的に顎をしゃくられたが、森に入った時から感知はかけている。

 色んなのがいるものの、大きさ的にこれだろう。

 シカっつーよりエルクだな。


「シカって群れる?」

「もう見つけたのか? この森で群れるのはシカくらいだが、数は判るか?」

「大型が五と、中型が九、小型が馬くらいで六」

「(干渉魔力波を全く感じない…)動きも感知できるか?」

「水場でまったりしてる感じだな」

「は? そんなことまで判るのか?」

「最近の趣味は魔力感知だぜ」(キメ顔サムアップ)


 兄貴が不審者を見る目を向けるので、説明してやろう。


 二重減圧で魔力強度をグンと下げ、更に線化して細かい網目状かつ球形に編む。

 自分を中心として網球魔力を一秒に一回展開し続けると、魔力を持つ全てを感知できる。


 魔力量や大きさは当然ながら、それが動いているのか静止しているのか。

 動いてるならどう動いて何をしているか。

 かなり正確なイメージが脳裏に浮かぶ。


 シカは寝転がっているヤツや、首を上げたり下げたりしているヤツもいる。

 水場だと分かるのは、ここが領域だからか、水も僅かに魔力を帯びている。


「まさか、ずっと感知をかけてたのか?」

「分かんなかっただろ。魔術師にバレない方法を考えるのに苦労したわ」

「……距離や位置も判るか?」


 頷いて小枝を拾い、地面に〇を描いていく。

 俺とミレディ、哀れな木、馬車にココアたちで、川はこう流れてる。

 ここから四〇〇メートルほど先に水場がこんな形であって、シカはこんな位置どり。

 小さいのはちょろちょろ動くが、母親だろう中型からそう離れることはない。


 あと、群れの周りを遠巻きにうろつく、大型犬サイズの個体が四頭いる。


「こんな感じ」

「そこまで出来てなぜ錬金術師なんだ?」

「安全に稼げるから」

「説得力が凄いな…」


 ミレディは闇系統魔術の【幻惑】を二体の幼体にかけ、親に気づかれないないようゆっくりと釣りだす。

 俺は群れから三〇〇メートルほど離れた川沿いで待機。


 俺と幼体の距離が一〇メートル程になったところで、ミレディは【高揚】をかけて【幻惑】を解く。

 戦闘態勢の俺に気づいた幼体たちが襲いかかってくる、と。


 感心するくらいプロフェッショナルだな。いや待て。


「二体に襲われるじゃん。ヤバいじゃん」

「心配するな。無理そうならイオリから遠い方を私が仕留める」

「じゃあ近い方に速攻かけて、イケそうなら二体目もやる」


 頷いたミレディは群れの方へ歩き始めた。

 歩速が速いのに、足音や衣擦れの音がしない。

 ミレディ兄貴は漢前。このフレーズが俺の中でもう流行ってる。



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