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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第3章:自立編

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45/61

44:出荷



 俺ら復活! 銀の車輪は癒しである!


 なんか五百万ユルグ近く払わされたが、まぁよろしい。

 一人に一人メイドを付けてもらったから妥当かもしれん。


 初日と二日目は、皆してメイドから「あーん」で食わせてもらったし。

 三日目は遅れ馳せながら喜びがこみ上げてきて、皆で抱き合いアオハルした。

 休息日だったリリともたくさん話をした。


 今日は二月末日の四十日。俺たちは確信を持ってルーカスの家へ向かっている。


カシュ ガチャン キィ…


 ほらいやがる。


「来たか」

「来たか、じゃねえわ!」

「じゃねーわー!」

「やっぱり意図的だったんですね」

「中々に古風なやり口だと思います」


 テンパってたからホテル三日目まで気づかなかったが、ルーカスはわざと帰って来なかった。

 領主に呼び出されると分かった時に、そう決めたんだろう。


「嬉しそうな顔してんじゃねえ」

「フッ、よもや【発火】を千も造っているとは思わなかったものでな」

「あそ。で、そっちはどう決まったんだよ」

「うむ、日付は確定しておらぬが」


 九月下旬から十月初旬あたりで、領主から男爵に叙される。

 九月下旬なら年内にシュミッツへ赴任、十月初旬なら年明けに赴任する。

 やはり王都でひと悶着あったらしいが、国王も渋々ながら承認したそうだ。


 暇に飽かせて迷宮都市へも行ったらしく、十席会と呼ばれる上位クランの月例会議に出席し、複合魔導具プロ仕様の追加注文を請けてきたと。


「数と納期は」

「六月末までに百だ」

「よゆー」

「であろうな。早い分は構わぬし、これに関しては各クランとの直接取引になる。護衛込みの輸送費は四百万ほどみておけば良い」


 皆で顔を見合わせた。商会利益と税金もなしで丸儲けってことか?


「ダンカン商会は知っているのですか?」

「無論だ。後ほど出荷のついでに承諾書を届けに来る」


 手回しの良いことで。こいつ帰って来たの今日じゃないな。


「イオリ、ココア、ユウト、カノン、よくぞ遣り遂げた」


 唐突だった。が胸に染みた。

 そう、俺たちは遣り遂げた。いい言葉だ。


 その他として、領都での戦勝式はルーカスが代理参列で済ませてきたそうだ。

 ユウトとカノンは、野盗団討伐報奨金として総額五百万シリンを受け取る。

 少ない気がするものの、ユウトは大喜びしてるからいいだろう。


 これで個人資産はココアが最下位に転落だが、遅くとも来月には五百万シリンなんぞ誤差にもならない大金を、遣り遂げた成果として手にできる。


「王都の土産という程でもないが、中位国民証の交付が認められた」


 テーブルに置かれたのは、ヴォーリッツ王国中位国民証と書かれた厚紙。

 クレカより二回りほど大きいくらい。

 国民証があるのは知っていたけど、ランクがあるとは知らなかった。


「中位って?」

「正規の職に就き身元が明らかな者だ」


 自然と四人で顔を見合わせ、半笑いになってしまう。

 身元が明らか?って感じだが、身元保証人の欄にはルーカスの名がある。


 ともあれ、中位国民証は八等級の戦士ギルド員証より使えるはず。

 今後はルーカスの紹介状や書付がなくても、材料注文を請けてもらえそうだ。

 完全な課税対象者になったわけだが、国民と認められたのは素直に嬉しい。


 そうこうしていると玄関がノックされ、ダンカン会頭と五人のゴリマッチョがやって来た。

 外壁の向こうに馬車の幌が五つ並んでいる。五台も要るか?


「これはまた壮観でございますなシルバラッド様。木っ端貴族二家や三家の総資産を超えておりましょう。いや失礼をば。クロス殿、先ずはこちらを」


 ルーカスへ目を向けると頷かれた。


「どうも」


 思ったとおり直接取引の承諾書だが……


「あたしたちの名前だ」

「ほんとだ」

「なるほど、そういうことですか」

「どういうことだよ」

「魔導製品は僕らの領分、ということですよね?」

「然り。魔術薬の製造販売には免状が必要となる故な」

「あ~そういうことね…って、え? 納得してんのあたしだけ?」

「ココアだけ。だっておかしいだろ」

「なにが?」

「例えば、【治癒】の魔導具を造ったらどうなるよ」

「む、そだね」

「その話は後日だ。ダンカン、始めてくれ」

「承知しました。始めなさい。取り違えぬよう丁寧にな」

「「「「「へい!」」」」」


 ゴリマッチョたちが木箱と麦藁束を運び込み、一箱に二十五個の複合魔導具を詰めていく。

 麦藁は緩衝材か。何かにつけて環境に優しいな。


「造ったそばから箱詰めすりゃ良かったな」

「お部屋が広くなってくー」

「嬉しいような寂しいような」

「解かります。苦労の塊ですからね」


 複合魔導具は一三〇〇グラム前後。魔石付きは五〇グラム増しくらい。

 二十五個なら木箱の重量込みで三七キログラム超。

 十四箱で五二〇キログラムほど。


 【発火】魔導具は一箱に五十個か。

 ノズルがアルミナ製だから、余裕で五〇〇グラムを切る軽量っぷり。

 仮に五〇〇グラムとしても、一箱で三〇キログラム足らず。

 二十箱で六〇〇キログラムほど。


 総重量は一トンと一二〇キログラム。

 鬼積みすれば一台でイケそうだが……出荷先が五ヵ所なのか?


「じゃあな、今夜は寝かさないぜ火も点けちゃうぜマンと火を点けるぜマン」

「まだ言ってる長いし」

「私たちは何も言えないね」

「はい、何も思いつきませんでした」


 商品名は付けないことで落ち着いた。

 日本人的感覚で「商品には商品名を」ってノリだったが、ダンカンに言わせれば「道具の名称は使っている者が好きに付ける」と。

 小洒落た商品名を付けようとした俺らが間違っていたわけだ。


「クロス殿、こちらが商品の預り証明になりますのでご確認を」


 当然のように渡されたんだが、こういうのは工房主の仕事なんだろうか。

 いや、担当が決まってないからノータイムで俺にくるんだな。


「今から書類担当はユウトで」

「え…まあ、構いませんけどね。では私が受領します」


 ユウトが預り証に目を通し、質問を始めた。


「要旨は責任や所有権の移転を、商品や案件ごとに切り分ける点ですよね?」

「左様ですな」

「過去の実例を三件ほど書面に纏めてください。費用が発生するなら請求書を」

「書面作成代を払って頂けると?」

「仕事ですから。但し、作業工数や時間単価が明確な請求書でお願いします」

「なるほど、不当請求は認めないと」

「当然です。そちらの単金が改定される場合なども事前通知をお願いします」

「承知しました。クロス工房は手強いですな。いや実に結構」


 俺とココアは意味が分からず半笑い。

 カノンは目をキラキラさせている。

 ユウトがいて本当に良かった。


 手塩にかけた魔導具たちを積んだ馬車を見送り、迷宮都市からの追加注文分と魔術薬についての話を始める。

 なんかユウトがノリノリだ。


「材料の発注と納入を経験して、懸念を覚えました」

「単価と納期か」

「はい、ルーカスさんへの配慮が非常に大きいですよね?」


 有名人ルーカスへの配慮が材料の値段や納期に反映されているため、シルバラッド錬金工房の材料購入原価は低く、納期も短い。

 そういった恩恵を、クロス錬金工房も受けられるのか。

 それがユウトの懸念だ。


 絶対にやると決めているわけじゃないが、俺たちは便利な魔導製品を低価格で売りたい。

 金持ちが楽を出来るのはジャパンも同じ。

 だからといって平民の暮らしが不便すぎると、回り回って俺たちも不便な目に遭う。

 今がそうだし。


 大変すぎる仕事や家事を、ほんの少し楽にする魔導具を安く売りたい。

 だから原価が上がると困る。ものすごく困る。


「ほんの少しか」

「楽にしすぎると困る偉いさんが出てくるんだろ?」

「言い得て妙だ。具体的に何を造りたい」

「井戸水とか排泄物を浄化する容器。これは絶対に造る」

「ふむ、仕事を失う者は出ぬ。貴族が文句をつける物でもない」

「それで、どうなんでしょう?」

「お前たちが配慮してもらえるよう、私は身元保証人になったのだがな」

「「「「あ~」」」」


 したり顔ルーカスの一言で解決してしまった。


 魔術薬についてはルーカスから注文を請け、ルーカスに納品すれば良い。

 もしもの時に責任を取れという趣旨の免状らしいので、ルーカスが全数を【鑑定】して出荷すれば問題ないらしい。


「はい終了。材料発注しに行くか」


 なんだかんだで、ルーカスには頭が上がらないと。



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