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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第3章:自立編

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43/61

42:亜麻色



 今日と明日で一月が終わる。

 魔導具の材料は全部揃ったが、ルーカスはまだ帰って来ない。

 一回だけ届いた手紙には、「王都へ行く」と書いてあった。


 それはいい。

 未来の工房主として、いつまでもおんぶに抱っこじゃイカンのだ。

 ということで、俺は錬金術師認定試験を受けることにした。


「認定試験とか言ってるし」(笑)

「雰囲気づくりでしょうね」

「気持ちを高めてるんだよ」


 外野のヤジなど気にしない。気にしてやらない。

 先ずは自画自賛称賛絶賛の【刻印】から。

 お題は当然、今のところ最難関の空間拡張バッグ用複合術式。


「吼えろ【刻印】!」

「「「………おぉ~~~!」」」

「ふっ、チョロいぜ」(キメ顔)


 成功してるか確認できないんだが、まぁいい。

 そして本日のメインイベントは【造形】だあ!

 いや、イベントじゃなく試験だった。

 本日の最高配点課題は【造形】だあ!


「できたらすごいよね」

「ぶっつけ本番ですからね」

「材料が届いたの今朝だもんね」


 そう、ふと思いついて特急発注したのが三日前。

 届いたからこその受験!


「迸れ【造形】!」


 一〇〇パーセント天然ゴムの塊が蠢く。

 ゴムアレルギーの人は残念!

 うす~~~く、なが~~~く、ふと~~~く伸ばして一時停止。


「デカっ!? 怖っ!」

「こここ、こんなに!?」

「ええ、風呂で驚愕しました…くっ!」


 なにを言ってるのか分からんな。

 ここでカノン謹製の謎コラーゲン配合潤滑剤多め潤いジェルを塗り塗り。


「カモン!」


クルクルクルクルクルクルクルクルクルッ…パツン


「おぉ神よ! 会心の0.01ミリに感謝を!」

「実物見たことないんだけど、どうなん?」

「私も見たことないよ」

「色とサイズ以外は本物そっくりです」

「ユウトさん使ったことあるんだ? ふーん。ちょっとお話ししよ?」

「兄がくれた物を見ただけです! 本当です! 信じてください!」


 いやマジでイイ出来だと思うね。

 天然ラテックス100%のゴムが「高っ!」と思ったことを思い出したわ。

 ジェルも天然素材100%だから、女性に悪影響がでることもないはず。

 謎コラーゲンがどう効くのかは知らん。


「ねえセンパイ、パッケージないんだけど?」

「むっ、これが神の試練か…」

「アホだ」(笑)


 ユウトとカノンにパッケージのアイデアを聞きたいが、『私が初めて?』とか、『カノンさんが最初で最後ですよ』とか、どこかで聞いたことがあるセリフでイチャコラしてるからほっとこう。


「パッケージも自然に優しい素材で作れねえかな」

「センパイ…」

「ん?」

「超超優しくしてね?」

「…どこ見て言ってんだよ」

「み、見てないもん!」

「痛っ!? なんで叩くんだよ!」


 四人してエキサイトしすぎ臭いので、気分転換がてら少し早いランチを食べに。


 この時期だけ山菜料理を提供する食堂に入り、カノン監修の山菜天ぷら盛り合わせを筆頭に、煮びたしや和え物、レギュラーメニューも併せて大量注文した。

 ここは女将さんと息子と娘が三人で切り盛りしているが、旦那さんが木こりなので、森の恵み食材が豊富だ。


「はいお待たせ。カノンちゃん本当にありがとうね」

「いえいえ、好評みたいで良かったです」


 天ぷらを食べたくて仕方なくなったカノンが、珍しく積極的に自分から提案したのが切っ掛けだ。

 衣用の水を冷やす冷蔵の魔導器が鬼高価なので、サクサクッとした衣じゃないが十分に美味い。

 天つゆも美味いが出汁の素は謎だ。


「なあユウト、天然の防水素材って知らね?」

「何に使うんです?」

「ゴムの個別パッケージ」

「なるほど…………難しいですね」

「ユウトさん、フラックス忘れてる」

「あたしも思った」

「亜麻! いやぁ、僕としたことがうっかりしていました」


 どうやら俺だけ知らないらしい。ココアに聞けばよかったわけか。


「あまがフラックスってこと?」

「漢字で書くとこう、亜麻。ちょっと耳かして」


 人に聞かれたらヤバいような物かと思えば、ナプキンに使った防水素材だと。


 亜麻という植物の茎を乾燥させ、腐るまで水に浸す。

 柔らかくなって繊維が取れる状態になったら、また乾燥させる。

 乾燥したら叩いて繊維を取り出す。

 その繊維を水で濡らしながら伸ばしたり撚ったりして糸を作る。

 作った糸で生地を織ると、通気性もある天然防水シートとして使えるそうだ。


「生地として売ってるってことか?」

「違う違う。センパイ漢字的に麻をイメージしてるでしょ」

「してる。防水できるわけねえとも思ってる」

「麻と亜麻は別物だよ。亜麻色って言葉聞いたことない? あれ生地の色」

「イオくんならアマニ油を知ってるんじゃないかな?」

「知ってる。オメガスリー脂肪酸たっぷりの健康志向オイル」

「亜麻の種を搾ったのがアマニ油なの」

「オーケー分かった。じゃあ誰が織ったんだ?」


 と問いつつも、こいつしかいないとココアをガン見する。


「あたし頑張った!」(ドヤ顔)

「魔術?」

「おふこーす」

「じゃあ服用の生地も織れると。早く言えよ」

「そっち? センパイさ、長い繊維だけ集めて糸にする大変さを分かってない」


 言われて思い出した。

 三人が裏庭で草を干したり水に浸けたりしてた。

 リリとココアとカノンがド早朝から出かけたことも何度かあった。

 ちょうど一ヵ月くらい前だった。


「そういえばさ、そろそろ持ってきてくれそうだよね?」

「そだね。お母さんたち頑張ってたもんね」

「黒須さん、亜麻の繊維を紡績して織った生地はリネンと呼ばれます」

「リネン知ってる。いや、タオル類がリネンだと思ってた」


 まいったな。

 造形と刻印に手をつけたタイミングだったとはいえ、もっと関心を持って手伝うべきだった。

 ココアの口ぶりからして、稼ぎたいけど雇ってもらえないお母さんたちの仕事を作ったんだな。


 ナプキンに使うくらいだから、亜麻の繊維は柔らかいんだろう。

 ココアが言った長い繊維が柔らかいのかもしれない。

 ココアたちはお母さんたちから買い取って、生理用品を造るに違いない。

 大量に、安定的に。


 俺なんぞよりよっぽど先を見据えてる。もう恥ずかしさしかない。


「手伝わなくてごめん。本当にごめん」

「もぉ」


 席を立ったココアが俺の頭を抱きしめた。


「皆のために一番頑張ってきたのセンパイだよ。ね?」

「うん、私たちは自分のためにしたことばかりだから」

「もし僕ら三人だけがこの世界に来てたらと思うと、ぞっとします」

「ホントそれ。あたしとっくに奴隷にされるか死んでる」

「私も」

「僕もですよ」

「センパイ、顔を上げて。あたしのおっぱい大好物なのわかるけどさ」(笑)

「抱きついてきたのココアだろ」

「似合わないヘタレかたしてるからじゃん。ねえセンパイ、ずっと愛してるよ」


 愛してる人に愛されるって、幸せだ。


「ありがとうココア。ずっと愛してる」

「うん♥ ゴハン食べたら亜麻糸工場に行ってみようよ」

(工場?)

「そうだね」

「差し入れにお菓子でも買って行きましょう。僕お金ないですけど」


 ここはもちろんと俺が菓子をごっそり買い、行った先は西広場。

 そこには横長な厩舎を想わせる建物が。いつの間に…


「こんにちわー」

「こんにちは」

「お邪魔します」

「っ!? 皆! ココアちゃんとカノンちゃんが来てくれたわよ!」

「「「「「「「「「「「「本当!?」」」」」」」」」」」」


 おばさんたちがココアとカノンに集り、「亜麻がもうなくなる!」と縋るように訴える。

 亜麻の刈り取りは秋らしく、今年は亜麻糸を高く買い取るから、秋には皆で刈り取りに行こうと話しておばさんたちを落ち着かせた。


「めっちゃ柔らかいな。亜麻色って、カスタードクリームっぽい金色なんだな」


 秋の刈り取りは俺も頑張ろう。



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