04:三人はムリ
どーもー異世界人でーす。と言っても構わないんだけど、シンプルにめんどい。
本音を言うと、どこぞに通報されたら困るし怖い。
「俺たちもこの大陸に来たのは初めてでね。買い取りはいいや。帰ろうか」
「いいの?」
「信用できないモン同士で売り買いも何もないだろ。ギルドに売るよ」
「待て、不躾な物言いをした。水に流してくれ」
フィッシュ・オーン! なんてね。
「じゃあ仲良くなる努力してくれる?」
「…妙な男だ。待っていろ、茶を淹れよう」
今度は別のドアの向こうへ消えた。最初の努力ってことだろう。
「イオリって上手いよね」
「なにが?」
「人たらし」
「心外ですわ! わたくし誠実と実直がモットーでしてよ?」
「ふふっ、イオリになら騙されてもいい」
「なに言ってんの、ったく」
努力の跡が見られない不味い茶を出してもらい、同郷の友達と逸れて困ってリリに保護してもらった的な話をつらつらと語る。
異端とまではいかないが、俺らの故郷は魔術師を危険視するお国柄だとか、そのせいで神秘じゃなく産業技術が発達して云々かんぬんと、軽く詐欺ってみた。
目は口程に物を言うの諺どおり、ルーカスの目は思考が読みやすい。
怪しんだり納得したり、思案したり。ここまで読みやすいと逆に怪しくもあるが。
「尤もらしく聞こえる話だ」
「だろ?」(笑)
「フッ、嘘つきなのか正直なのか判らんな、イオリは」
チャームポイントだからと嘯くと、ルーカスが本題に入った。
「銀の含有割合は判っているのか? 判らんなら【鑑定】するが」
「分かってるけど、鑑定って魔術?」
「無論だ」
「超見たい! やってくれ! 早よ!」
苦笑したルーカスが『鑑定』と呟いた。
「厳密に九割二分五厘か。残りも銅とは大したものだ」
「すげえ! 正解!」
「敢えてこの割合なのか?」
「あーうん、なんかそんな話を聞いたことある。理由は忘れた」
「残念なことだ」
すまんね、頭が残念賞で。
「はぐれた連れの一人は知ってそうだけどな」
「その話だが、珍しい髪色の少女はいるか? 毛先の方が色は濃い」
「「えっ」」
リリと顔を見合わせ、急いでスマホを出して電源オン! 画像カモン!
「こいつか!?」
「なっ…んと…」
「どうなんだよ!?」
「あぁそうだ、その少女だ。中央広場南の井戸端に座り込んでいた」
「行ってくる!」
「ちょっ! 場所わかるの!?」
「分からん!」
「もお! ルーカスさんまた戻って来ていい?」
「好きにせよ」
リリに後ろから「そこ右!」とか言われがら走る。
脚力と持久力には自信があったんだが、白猫だからかリリは普通に追走してくる。
「ふう、イオリ速いね」
「んな余裕の笑顔で言われてもねぇ。で、南ってどっち」
「あっち。一番大きな木があるとこ」
ぐるっと見回し、一際にデカい木へ向かって走った。
そこにいてくれと願いながら。
「いた…良かった…ココアっ!」
「へっ? センパイ!? ふ、ふぇえええ~~~ん!」
くしゃくしゃにした顔で大粒の涙を流しながらココアが駆けてくる。
俺も駆け寄って強く抱きしめた。
「怖かったよお! 寂しかったよお! うぇええ~ん!」
「大丈夫、大丈夫、もう大丈夫だから。無事で良かった、本当に良かった…」
泣きたいだけ泣かせてやろうと、抱きしめたままその場に座り込むと、
「見つかって良かったね」
「ああ、リリのおかげだ。ありがとな」
「イオリのためだもん」
「うぇ~…んん?」
ぴくっと体を震わせ泣き止んだココアが顔を上げ、俺の肩越しにリリを見た。
「(し、白ネコ? 可愛い…大きい…)ちょっとセンパイこの人誰」
「リリことリリアーナさん。戦士ギルドの職員さん」
「そういう誰じゃなくて、誰なの」
そうだったぁぁぁ! 正直に言えない関係の誰ですぅぅぅ!
「それは、ほら、助けてくれた的な? 言うたら特殊救助隊の人的な?」
「ふ~~~ん、特殊なことして助けてくれたんだぁ? あたしが寂しくて死んじゃいそうな時に、センパイはしてたんだ?」
何も言いたくない! けど何か言わないといけない流れぇ!
「ナンノコトカナ」(白目)
「こんのエロ魔王っ! おっぱい星人っ! 死んじゃえバカぁーっ!」
「痛い痛い痛い! ごめんってごほぉ!? み、鳩尾にトゥキックは鬼畜…」
「バーカ! バーカ! センパイなんてもう知らない! フンだ!」
ココアがすたすたと、いやドスドスと歩いて行く。どこへ行く気だろう。
とか言ってる場合じゃない。
これは「追いかけてこいやゴラァ!」のサインに他ならない。
「イオリ? なんかごめんね? イオリの恋人なんだよね?」
「恋人じゃないけど、好きな子。俺もごめんなリリ、本当にその…」
「ううん、私はイオリに抱かれて幸せだったよ。これからも抱いてほしいし」
「そう言ってもら……え?」
「ん?」
幻聴カナ? 追いたいんだけど確認したいという、このどっちつかずさんめ!
「あ~~~リリも来てくれ!」
リリの手を掴んでココアを追い、ココアの手も掴んだ。
「……なんか一周回ってすごいねセンパイ。普通はどっちか選ぶんだよ?」
「いや分かってるし勘違いすん――」
「無理に選ばなくていいと思う」
「へっ?」
「……どういう意味ですか。(ほんと胸大きい。めっカワだし)」
「取り敢えずベンチに座ろうよ。お互い子供じゃないんだから、ね?」
「……分かりました」
すげえ殺し文句。拒否ればお子様認定というプライド直撃弾。
というか、なぜ俺が真ん中なんだろう…何なら地面に正座の方が気楽よ?
「イオリは素敵な男性だと私は想ってる。ココアは想ってない?」
「(呼び捨て…)リリアーナに言う必要ないし」
「リリでいいよ。素敵な人を、たくさんの異性が素敵だと想うのって当たり前だよ。どこを素敵と想うかは違うだろうけど、素敵だと想える人が目の前にいるのに諦めたら、ずっと後悔する。たぶん死ぬまで。ねえココア、ここはジャパンじゃないよ?」
「………」
これは刺さる。つーか、俺には刺さった。
べたべた纏わりついてたモンが落ちた気がする。
そうなんだよ、ここは日本じゃない。だからこそ……よし決めた!
「俺は――」
「センパイ黙ってて」
「えぇ…(ココアが好きだからココアを選ぶって言おうとしたのに…)」
「あたしステキってよく分かんない。あたしにとってセンパイはカッコイイし、背が高いし、頼れるし、優しいし、モテるから彼女になったら自慢できる。リリのステキってなんなのよ」
真ん中キツイっすけど嬉しいっす。
「最後以外はココアと同じ。イオリに抱かれると安心するし…気持ちいい。頭が真っ白になったのなんて初めて。起きてイオリがいたら幸せ。それが私の素敵」
誰か今すぐ俺を殺してくれ。ココアの睨みで死ねたらいいのに。
「ずるい……あたししたことないから分かんないよ……」
「誰ともしたことないの?」
「悪い!?」
「ううん、羨ましい。ココアはイオリを最初で最後の男性にできる」
めっちゃ見られてる…何が正解か分からんけど、素直に言うしかない。
「ココアの最初で最後になれたら最高にハッピーだ」
「…ほんと?」
「ほんと」
「あたしを悲しくさせない?」
「悲しくさせて悪かった。もうさせない」
「……………仕方ないから許してあげる。でも三人でするのはムリ」
「はい?」
「ねえココア、順番を決めよう? どうしてもの時は二人で仲良く相談しよ?」
「うん、それならいいよ」
「いやいやいや、いやいやいやいや! それで纏まんのおかしくね!?」
ウザい子を見るような目を二人から向けられた。謎すぎる…




