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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第1章:出逢い編

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03:マメ知識



「ユウトは真ん中分けの黒髪で、身長は俺より頭半分くらい低い。カノンは前下がりボブな黒髪に茶色い目。ココアはコレ」

「わっ!? なにそれ!?」

「んー、過去を切り取って残す的な?」

「すごーい!」


 ココアの画像はあるがユウトとカノンはない。

 いやカノンはあったけどココアに『今消さないと今殺る』と凍えつく目で言われたから消した。


「イオリもだけど、ココアの髪色も綺麗」

「あ、俺も地毛は黒だから。これ脱色して染めただけ。ココアも同じ。てかココアは目の色も変えてる。ほら」

「これ変えてるんだ…ジャパンはすごい国なんだね」

「この辺と比べればそうかもな」


 スマホもついでに売っちまうかな。充電四十八パーだし。

 そういやココアはデカい予備電二つ持ってたっけ。充電した方が高く売れるか?


 希望的観測だけどアデーレにいる可能性は低くないと伝えたら、魔術師ギルドと商工業者ギルド、学術者ギルドにも〝探し人〟の貼り紙を出してくれると。


「三人とも二十一歳?」

「んや、ココアはまだ十九。ユウトは十九か二十歳。カノンはもうすぐ二十一」


 ユウトの誕生日は知らないと話した。

 場合によっては三人ともバラバラに逸れている可能性もある。

 近辺にいるなら必ずアデーレに来る。


「精霊祭が終わっても見つからないなら、占術師に視てもらう方がいいね」

「えぇ…」

「嫌なの? お金は私が出すよ?」

「嫌とか金じゃなくて、当たるのかって話」

「当たるってどういう意味?」

「ん?……もしかして、魔法?」

「ジャパンには魔法が残ってるの!?」

「え、いや、残ってないない」

「びっくりしたぁ。魔術に決まってるでしょ? 近くにいるなら視えるよ」


 なるほど、当たる外れるじゃなく視るわけか。すげえな。

 これで見つかったら、リリは俺ら全員の恩人だ。


 今夜は祭りに行かず話をしようということで、先ずは模擬戦のことを聞く。


 戦士を名乗るからには戦えなくてはいけないため、戦力評価で元戦士のギルド職員と手合わせをするそうだ。

 その結果で格付けが決まり、「まぁ小悪党を捕まえるくらいなら出来るか」って感じなら一番下の十等級。

 基本的に最高が一等級なので十段階ということ。


 基本的という理由は、稀に特等級になる鬼猛者がいるから。

 今は世界に二人だけ特等級がいるものの、この辺に来るなんてあり得ないらしい。


「ま、ダメならダメでいいし」

「イオリなら十等級くらい取れるよ」

「そ? なぜ?」

「細く見えるけど脱ぐといい体してるから。膂力もあるし」

「リリがエロい」

「違っ! そういう意味じゃないもん!」

「冗談だって」(笑)


 模擬戦の流れで「合気柔術とは?」と質問されて困った。

 蘊蓄を垂れることは出来るが、理解されるとは思えない。

 ジャパンの古流武術とだけ答え、体感してもらうことにした。


「俺をか弱い女の子に見立てて襲ってみて」

「楽しそう!」


 キミ基本Mだけど急にSっ気出す時あるよね。

 などと思っていたら、正面から右手首を鷲掴みにされた。

 判っちゃいたがリリの利き手は左だ。女の子の割に驚くくらい握力が強い。たぶん六〇くらい。

 ま、この世界だと「箸より重い物は持てませーん」とか言ってらんないわな。


 視線を手首からリリの目に移しつつ、リリの右上腕を素早く軽く掴む。

 その瞬間に体重ごと掴まれてる右手首を下に振り落とせば外れる。そして叫ぶ。


「キャー! 誰か助けて―ーーっ!」

「今のどうして?」

「(無視されたんだが)今のは技じゃなく意識の誘導ね」


 リリが左手、延いては左腕の筋力を使うには意識を向けなければいけない。

 今のシチュエーションなら特に「逃がさない」と意識を集中させがち。

 そこで関係ない右腕を軽く掴むと、意識が右腕に向いて警戒する。

 つまり、左手の握力や握っている感触に向けていた意識が薄れてしまう。


 その瞬間に踏み込んで肘の逆関節をとるように手首を返せば確実に外せるが、か弱い女の子設定で相手がリリなら、体重をかけて手を下に振り下ろすだけでも外せる。


「こんどは基本技を使うから同じように掴んでみ」

「もう油断しないよ! えい!」

「いくぞ? ほれほれほれ」

「えっえっあぅ…」


 掴まれてる右腕でリリを押した瞬間に引きつつ、右手首を内側に返しながら左手でリリの左手を外へ捻り引き倒す。四つん這いになったリリが俺を見上げた。


「今のはリリの力と力の方向と体重を利用した。痛くなかっただろ?」

「うん、不思議」

「初めてやられるとそう感じるよな。まあ、相手が猛者だとこうはいかない」

「ジャパンの人は皆できるの?」

「古流だって言ったろ? 俺の師匠は爺さんだ。鬼のように強い」


 リリを立たせて腰を落ち着け、今度は錬金術師の話へ。

 リリはもっと合気柔術の話を聞きたい様子だったが、脳を含めた人体の仕組みから説明することになるのでカンベンだ。


「錬金術師ってたくさんいる?」

「アデーレには三人いるよ。イオリは魔術のことあまり知らない?」

「ぶっちゃけ全然知らない。ジャパンは魔術を使わないんだよ」

「だからかぁ」


 魔術師モドキは多いが、ギルドや国に認定されるような魔術師は希少な人材らしい。

 そして魔術には六つの系統が存在し、三つの系統外も存在する。

 錬金術は系統外の一つに分類されるそうだ。


「知り合いが高位の錬金術師だから紹介してあげるね」

「怪しげな婆さんだったり? 毒リンゴ作るみたいな」

「なにそれ(笑) 素敵なおじ様だよ。ちょっと強面だけどね。名はルーカス」


 素敵な強面おじ様ルーカスは、大した錬金術師のようだ。

 この街で生まれ育ち、猛者が多いなんちゃら帝国へ行き国家認定魔術師になるも、「私が助けたいのは弱き者だ」と言い放ってヘッドハントを蹴り帰郷した。


 魔術薬だけじゃなく普通の薬師としても優秀で、流行していた疫病を三ヵ月ほどで終息させた。

 それも無償ボランティア。なもんで、この街では英雄的な庶民の味方として尊敬を集めている。


 そんなおじ様は、魔導具のコア部品製作にも突出した才能を見せつけるそうだ。

 魔銀はコア部品に使う金属なので、間違いなくリングを買ってくれると。


「俺も少しは世のため人のためになることしたいもんだ」

「難しいよね。私も自分のことだけで精一杯だもん…」


 そんな悲しそうな顔で言うんかい。


「ほんとそれな」


 嫌でも悟らされた。リリは今の自分が嫌いなんだろう。

 そう考える原因がシェインって人なのかは分からない。

 けど、リリは自分じゃなく、誰かのためになることをして自分を変えたいのかも。

 そんな時に困ってる俺が現れた。


 なんて、俺は俺でリリとこんな関係になった言い訳が欲しいだけだな。

 どうしようもないクソ野郎だ。


「眠そうだぞ?」

「うん、少しだけ」

「片づけはやっとくから寝なよ」

「……傍にいてほしい」

「断る理由がないね」


 弱いな、リリも俺も。




 色んなアレコレとナニで疲れてたのか、俺も寝てしまった。

 起きたら祭り最終日の朝という乱れっぷり。


「ルーカスさんのお家に行ってみようよ」


 祭りだから会えないってことはないのかと思い、生活用水を井戸で汲み上げてからルーカスの家へ向かった。

 裏路地をあっちへこっちへと進むリリについていくと、「趣味はガーデニング?」と聞きたくなるデカい一戸建てに着いた。まぁ薬草なんだろうけども。


「ルーカスさーん、リリアーナでーす」


 数分待って出てきたルーカスは、俺をチラ見してリリを招き入れた。


「急病人という様子でもないが、どうした」

「彼を紹介したくて来たの」

「どうも初めまして、イオリです。これを買ってもらえないかなと」


 中指のリングを抜いてテーブルに置くと、彼は俺の親指と小指と耳を見てから無言で奥の部屋へ消えた。戻ってきた手には天秤と小箱。小学校で使ったやつか。


「親指と耳は銀じゃないようだが」


 リングの重さを量りながらノールックで聞かれた。


「クロム系のステンレス鋼」

「お前、何者だ?」


 なぜ睨まれるんだか。


「イオリはジャパンっていう遠国から来た人だよ。東の果ての島国だって」

「信用ならん話だ」

(正解。こいつ、この世界に詳しそう)


 ちょいと仲良くなっとく方がお得かもしれない。

 さてどう詐欺ろうか。

 匙加減が難しい。

 押すより引く方が良さそうだな。



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