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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第2章:新生活編

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39/61

38:価格設定

普段どおり18時にも投稿します。



「されば評論を頼む」

「はい、文句のつけ処がありません。小ささ、軽さ、形状、携行性、付加機能、使い勝手、効果、消費魔力量の全てが秀逸です。下層以深へ潜るパーティーは確実に欲しがります。だからこそ…」


 四十一階層から下が下層だ。四十階層までは中層、二十階層までは上層になる。

 現在の最深到達階層は、七十九階層。

 八十階層の守護者を倒せず停滞しているそうだ。


「これまでの優位性が損なわれるか」

「仰るとおりです。特に、私のような闇系統魔術師は恐怖さえ覚えます。稼ぎが大幅に減るのは火を見るより明らかです」


 なんのこっちゃと尋ねてみれば、パーティーで稼いだ金の分配額は等分じゃないらしい。

 高等級パーティー程その傾向は強くなる。

 細分化された貢献項目には点数があり、探索ごとに個人の合計得点で貢献度を明確にする。

 合計得点に応じて分配率は決められる、と。


「道理であるな。されば売価を上げるしかあるまい」

「是非ともお願いしたいところですが…」

「なんなんだよミレディ、さっきから歯切れが悪くないか?」

「以前話したであろう。複製品の懸念だ」


 はいはい、あったねそんな話。


「それコピーできねえから心配すんな」

「は?」


 俺を信用しないミレディがルーカスへ目を向けた。

 ルーカスが大きく頷く。


「事実として複製は至極困難だ。不可能とまでは言わぬが、私には無理だ」

「なんと……」


 改めて魔導具をしげしげと眺めるミレディは、顔に「理由が知りたい」と書いてある。

 するとそこで、


「不可能にするのはアリですね」


 とユウトが言った。


「出来るのか?」

「観たことありません? 極秘任務を伝えた後で白煙を上げる再生装置」

「「「あ~」」」


 インポッシブルなミッションのやつか。


 ユウトが知る限り、融点が最も高い金属はタングステンで摂氏三四二二度。

 一方、改良した【発火】の蒼い炎の温度は、推定値で一〇〇〇〇度超え。

 それだけの高温なら、融点が高い魔導金属でも術式ごと余裕で熔かせる。

 術式部分だけ熔ければ十分なのだから、時間もかからない。


 実際には、術式が刻印された核部品(コアパーツ)を軽く丈夫な金属で覆う。

 例えばマグネシウム合金とか。

 形状とサイズは核部品(コアパーツ)に合わせるだけなので悩む必要はない。

 覆った金属が破損したり分解されたら発火し、核部品(コアパーツ)ごと熔融する仕組み。


「発火させる方法は他にも色々ありますから、製品に合わせればいいと思います。魔力源は必須になりますけど、消費量が少ないのでコストは微々たる物です」

「いいじゃん。ウィンウィンだ」


 ミレディの稼ぎは減らず、俺らの利益は増える。


「いくらで売るの?」

「価格設定って難しいよね」


 皆の視線がミレディへ向けられた。


「私のパーティーに限った話だけど、三千万を超えると厳しいね」

「は? この前は五百万までって言ったじゃんよ」

「ここまでの代物を作れるなんて思うはずないだろう?」


 そりゃそうだ。漢字が使えてラッキーって感じだったし。

 でも三千万は高すぎるような気がする。


「ルーカスはどうよ。三千万は高すぎじゃね?」

「諍いの火種にならぬよう配慮するなら五千万でも構わん。買える者が限られる上に、先を見越すならば貴殿らも買うはずだ。違うか?」

「……はぁ、流石はシルバラッド様、お見通しですね」


 全く意味が分からん。分かりやすく喋ると死ぬ病なのかね。


「ユウ…いやカノン、通訳してくれ」

「通訳って(苦笑) 値段が安いと深いとこへ行けるパーティーが増えるから、競争は激しくなるし、持ち帰る物の価値も今より低くなるんだと思う」

「「分かりやすい!」」

「ユウトさん、合ってるよね?」

「完璧です。競合製品が存在しないので、多少無理してでも買うしかありません」


 なるほどねえ、迷宮産物の相場が崩れれば稼ぎが減ると。

 逆に、高くても無理して買えば、もっと深い階層へ行けて稼ぎは増える。


「ミレディのパーティーってどんだけ稼いでんだ?」

「そんなこと言う――」

「実に興味深い問いだ。詳しく聞きたい」


 あはは、ミレディが半目になった。

 「言うわけないだろ」的な流れをルーカスにぶった切られた的な。

 ぐっじょぶだルーカス。


「パーティーは私を含めて五名。最深到達階層は六十九階層。これが前提です」


 探索者は、探索を三種に分けている。威力探索、集中探索、攻略の三種だ。


 威力探索とは、新たに到達した階層の危険度を把握するのが目的。


 危険度を十分把握した時点で集中探索を開始し、本気で稼ぐ。


 稼いだら武装のメンテや更新をして、更なる深みを目指し攻略を開始する。


 迷宮探索はこれの繰り返し。


 ミレディたちが集中探索をする場合、ベースキャンプは安全地帯である六十階層奥の間。

 守護者の間の先にあり、帰還用転移陣がある。


 集中探索期間は短くとも十日間。最長は二ヵ月程度。つまり八十日間。

 長期集中探索を行う際は、ポーターを雇って必要な物資を持ち込む。


 ミレディたちが二ヵ月間の集中探索を行えば、持ち帰る産物の売却総額は、三億シリン前後だという。

 しかし迷宮産物は贅沢品に該当するため、売却時点で五割を税金として徴収される。


 税引き後で一億五〇〇〇万。月額にすると七五〇〇万。

 仮に五等分とすれば一五〇〇万。


「月収一五〇〇万シリンかよ。やべえな迷宮」

「馬鹿を言うな。費用を差し引けば千二百万が精々だ」

「あぁ費用もかかるか。にしても年収一億二〇〇〇万じゃん」

「五体満足で生還すればな」


 む、それ考えると微妙っすね。


「六十階層を突破した現役パーティーはどれ程だ?」

「私が帰郷する時点では五十足らずでした」


 ルーカスが捕らぬ狸の皮算用を始めた臭い。


「多いのか少ないのか分からんね」

「現役探索者は常に二十万人前後いるんだぞ?」

「「え…」」

「すごいね」

「パーティーは五名編制がスタンダードなんですか?」

「安定するのは七名だね。私たちも二年前までは七名だった」


 頭おかしいレベルの猛者パーティーは、安全地帯とか関係なく野営するそうだ。

 ミレディたちはメンバーを補充したいが、高等級探索者の絶対数が少ないため難航している。

 最深到達階層の六十八階層にしても、今の五人パーティーでは六十四階層が精々だと。


「死んだのか?」

「一人はな。もう一人は右脚を失い引退した」


 よし、街中で生きていこう。安全第一。セイフティライフ イズ ザ ベスト。


「うむ、参考になった。礼を言うミレディ」

「恐縮です」

「で、いくらにすんだ?」

「魔力源なしを四千万、魔力源付きを五千万が妥当であろう」


 ミレディがぼそっと『上手い…』と呟いた。

 どう上手いのか気になるものの、話を続けるルーカスに傾聴。


 王国軍と諸侯軍には魔力源付きを売る。

 迷宮都市向けは魔力源なし。


 初回ロットはアリが三百個とナシが五十個で総数は三百五十個。

 今月中に素材を仕入れて一ヵ月で製造する。


 要するに発売目標時期は三月初旬。

 卸先商会の取り分は単価が高いので二割。

 代金回収の目途は遅くとも四月中旬。

 俺らへの支払いは四月末。


 【発火】専用魔導具は、全て魔力源ありにする。

 販売価格は卸先商会と協議して決める。

 初回ロットは販売価格を基に決めるので未定。


 手持ちの素材でセールスプロモーション用サンプルを製造する。

 製造人員はルーカス、ココア、俺の三人。

 ユウトとカノンは明朝出発で軽銀鉱石購入旅行。


 控え目に言って、クソ忙しくなると。


「イオリ、この魔導具には名称があるのか?」


 おっとぉ、商品名は考えてなかった。

 ユウトたちへ目を向けるも、「どうぞどうぞ」って感じで丸投げされた。

 どうするか…分かりやすい方がいいよな。


「今夜は寝かさないぜ火も点けちゃうぜマン」

「ないわー」

「ないよね」

「ふざけてます?」

「ふざけてねえわ! 文句言うなら丸投げすんな!」


 領都へ行って帰ってくるまでに考えろと、ユウトとカノンに丸投げ返し。

 ミレディは帰宅し、俺たちは商工業者ギルドへ素材の発注に出かけた。



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