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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第2章:新生活編

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33/61

32:ドタキャン



 特にやることもなく、商工業者ギルドへ馬車を借りに行くことにした。

 当たり前だが商人だらけで、戦闘系ギルドと違い一日中混雑している。


 戦闘系ギルドは窓口が一つずつ区切られているが、商工業者ギルドはL字型の長~~~いカウンターがあるだけ。

商人たちがカウンター越しに手の空いてそうな職員を大声で呼ぶスタイル。


「軽く修羅場ってんな」

「こういうのムーリー」

「私も苦手。独りじゃ絶対に来れないよ」

「初めて来た時も話すまでに一時間くらいかかりましたね」

「一時間ってなんだよ。俺が行くから紹介状」

「お願いします」


 眺めてても仕方ないので商人と商人の間に腕をねじ込み、カウンターに肘をついて半身で乗り出した。

 メンチをきってくる商人に見下ろし鬼メンチをきり返す。


「そこの職員さーん!……………おい! 普通にシカトこいてんじゃねえ! 中途半端にハゲ散らかしやがって! お前だお前! 来ねぇと引きずり出すぞあ‟!?」


 カウンターに片足を乗せると、すげえ嫌そうな顔ながらおっさん職員が椅子から腰を上げた。


「ウケるんだけど」(笑)

「イオくんの周りが広くなってく」(苦笑)

「日本なら警備員を呼ばれますね」(苦笑)


 腰を上げたはいいが左右を見回している。

 他に押し付ける気か?


「立ったならさっさと来いや! 逃げやがったら地の果てまで追うぞ!」


 よーしよしよし、最初から素直に来いっつーの。


「……商人には見えませんが、どういった用件で」

「商人じゃないんでね。これ、ルーカス・シルバラッドの紹介状」

「っ!? これは大変失礼いたしました! 応接室へご案内いたしますのであちらへお回りください! レイナ君! ご案内して茶と菓子をお出ししなさい!」

「はい!」


 すげえ威力だなと思いつつ、ココアたちに顎をしゃくって促した。

 定型文の紹介状をいくつかもらっておくべきかもしれん。


「センパイやばすぎ」(笑)

「そんなもん、仕方ないだろ?」

((仕方ない?))


 こっちで応接室に入るのは初めてだが、ゆとりのスペースに革張りのロングソファが二つとローテーブルが一つ。

 なぜか壁際に椅子が並べてある。


 女性職員が出してくれたお菓子を口に放り込みながら待っていると、紹介状を渡したおっさんがダンディなおっさんと一緒に入ってきた。


 ユウトとカノンが立ち上がり、俺とココアも立ち上がる。


「アデーレ支部長を務めるマーカス・オルセンと申します。失礼があったようで、誠に申し訳ございませんでした」

「イオリ・クロスと申します。私も勝手が分からず無理を押し通してしまい、大変失礼しました。水に流して頂ければ助かります」

「「「!?」」」


 珍獣を見るような目を向けるな。

 俺だって丁寧な詫び入れくらいできるわ。


「ご丁寧なお言葉、痛み入ります。どうぞお掛けください」


 カウンターのおっさんは名乗らないまま、壁際の椅子に腰をおろした。

 女性職員もおっさんの隣に座り、サイドテーブルにインク瓶と羽ペン、藁半紙を置いた。

 なるほどって感じだ。


「ご要望は領都往復の馬車と御者の手配で間違いありませんでしょうか」

「ユウト、後は任せる」

「はい。ユウト・イワサキと申します。実際に赴くのは私と彼女の二名になります。鉱石の買い付けに支障のない馬車を借用したく」


 仕入れ先は鉱石卸商のザクセン商会だとか、軽銀鉱石をありったけといった諸々を伝えると、滞在日数を除いた往復旅程は四日でいいのかと問い返された。


 六頭立ての大型箱馬車なら、馬を休ませはするが夜通し進めるらしい。

 夜間走行では大型のカンテラ二台で進路を照らし、途中の宿場町を素通りするなら、早朝に出発して翌朝には領都に到着できる。

 但し、御者二名が必須だと。


「通常の鉱石運搬旅程を教えてください」

「軽銀鉱石に限った二頭立て高枠幌馬車の旅程でよろしいでしょうか」

「なるほど、重量の問題ですね」

「お察しのとおりです」

「比較的に流通量が多い金属だけで構いませんので、四頭立て大型幌馬車を前提に区分の全てを教示ください」


 鉱石運搬は軽重量・中重量・高重量の三つに区分されている。

 軽重量は軽銀、中重量は鉄、錫、銅、銀の四種、高重量は金。


 往路は空馬車という条件で、野営なら翌日朝着、宿場町泊で行くなら翌日夕方。

 旅程が変動するのは鉱石を積んだ復路。


 軽銀は出発日に宿場町まで進んで一泊し、二日目の夕方にアデーレ着。

 中重量は野営二回を経て三日目の夕方着。

 高重量は初日と二日目が野営、三日目が宿場町、四日目の野営を経て五日目の午前着。


 料金は御者の人数と護衛の要否、滞在日数で大きく変わる。


「滞在は二日間予定ですが、護衛は必要ですか?」

「軽銀であれば野盗に襲われることもないので不要かと」

「何の鉱石を積んでいるか野盗には判りませんよね?」

「積載量と馬の行き足を見比べれば判ります。軽銀を奪っても金にならないと野盗は知っています。尤も、襲われない保証はありませんのご留意を」


 領都の西を縄張りにしている野盗団がいて、三十名前後の構成員は東隣国の敗残兵との見方が濃厚らしい。

 また、領都には野盗の諜報員がいる可能性も高い。

 銅、銀、金といった金になる鉱石を積んだ馬車が、高い確率で襲撃を受ける。


「黒須さん、どうしましょう?」

「三十人だろ? ユウトとカノンが魔術で皆殺しにすればいい」

「「え……」」

(四人とも魔術師ですか)


 ジョークを受け取らない病の末期患者だ。


「センパイも行けばいいんじゃない? あたしも行くけど」

「ミレディに二十日以降って頼めばいいっちゃいいが、行きたいのか?」

「普通に行ってみたい」


 あんまり興味がないんだよなあ。どうせ人口が多いくらいだろうし。

 アミューズメント施設があるとかって話なら行くけど。


「では四頭立てと御者一名でお願いします。出発は明朝六時を予定しています」

「承ります。コーニッツ君、手配を頼む。御者はベンノがいいだろう」

「承知しました」


 ベンノという御者は脚の負傷で引退した元ハンターだが、弓の腕は健在。

 そんな話を聞ききながら応接室を出て、カウンターでコーニッツ氏に前払い金を渡してギルドを後にした。


 その足でアパートに寄ってユウトのスマホと望遠レンズをピックアップし、昼時なので屋台メシを買って中央広場へ。


「おぉー、この望遠すげえな。さすが三十六倍」

「そうなんですよ。凝った写真を撮らないなら十分なんです」

「ココアも練習しとくか?」

「ダイジョブ。あたしも望遠使ってたし」

「そうなん? 流行り?」

「コスイベ用だよ。一眼レフ欲しかったけど高くてムリだった」


 そういうニーズもあるんだなと納得してルーカス宅へ戻った。


 借りる馬車の話と旅程の相談をユウトが終えると、ルーカスは俺に『手伝ってくれ』と言いながら製作室へ。

 何かあったっけ?と思いながらついていく。


「例の組織からジャンへの繋ぎがいつもの方法であったそうだ」


 じゃん……ああ、双子の叔父の話か。絶妙にタイミングが悪いな。


 辺境伯軍の諜報部隊が国境を越えた途端に強襲され半壊で撤退したとか、なんかまぁ色々と経緯説明はされたけどよく憶えてない。

 取り敢えず、領主は金属の横流しルートを何が何でも潰したい。

 長らく膠着していた戦況が、この三年くらいで劣勢に傾いている。

 その原因が、横長し金属で造られた敵軍の武装だと。


 犯罪組織についての説明もよく憶えていないが、民間人を装った構成員がこっちの情報を隣国に流している。

 辺境伯家の主要人物も面が割れている可能性が高く、ルーカスたちが動くと、双子の叔父ジャンや組織側の動きもピタリと止まるらしい。


 この話に興味というか、一枚噛みたいと思った理由は、犯罪組織がジャンから受け取った金属の輸送方法にある。

 状況証拠からして、組織は鬼レアな空間拡張バッグを持っている、とルーカスは確信している。


 取り引き現場を押さえて一網打尽にできれば、領都へ移送する前にバッグの空間拡張術陣をコピーしてもいいとルーカスが提案してきた。

 間違いなくルーカスも欲しいんだろうが、上手いこといけば一人頭二百万シリンの報奨金も出る。


 報奨金が足元を見られた金額なのは分かってるが、存在しないと思ってたアイテムボックスっぽいバッグは是非とも欲しい。

 ヤル気まんまんのユウトとカノン、行く気まんまんのココアには悪いが、明日からの鉱石購入旅行は延期する方向で。


 説明すること多すぎてめんどいな。


「今回は経費も領主持ちなんだよな?」

「無論だ。好きなだけ飲み食いしろ」

「オーケー。これからギルドに寄ってその足で宿に行く」

「頼む。必要な書状を認めよう」


 書状を受け取ってポケットにねじ込み、三人には「やることないから帰るぞ」と言って、先ずは商工業者ギルドへ。

 三人から『なぜ?』と問われるも『いいからいいから』と答え、さっきのオッサンを手招きして『支部長さんに渡して』と書状を渡した。


 今度は向こう隣の戦士ギルドへ行き、リリを呼んで耳元で囁く。


「仕事終わったら、誰にも何も言わず銀の車輪に来て。何泊かする」

「えぇっ!?」


 唇に指をあて「しぃー」とやって銀の車輪へ向かった。



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