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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第2章:新生活編

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27:ジャパン術式



 ルーカス宅に入ると、ユウトとカノンが大道芸人を彷彿とさせる魔術エンタメを繰り広げていた。

 ルーカスは隅っこの定位置で読書中。暇らしい。


「見てください黒須さん! これ石ですよ石!」

「私のはユウトさんに砂を混ぜてもらった竜巻なの!」


 コレぜってー物理学的な知識量の差だ。

 石はなんとかなりそうだけど、手乗り竜巻とか意味わからん。


「本域ですげえな」

「すごいね」

「俺らは魔力を極めるか」

「そだね」


 魔力の量と強度に関しては、圧倒的なトップが俺だ。

 ココアは量も強度も俺の六割ほどで、カノンが四割、ユウトは三割といったところ。


 三割のユウトでもその辺を歩いてる魔術師の四、五倍はあるので、二ヵ月ちょいでここまで成長した俺らは文句なく頑張ったと言える。


 さておき、あと三ヵ月で必達しなければならない目標の情報収集を、身近なところから始めよう。


「暇そうだな」

「イオリが無詠唱を指南したと聞いたが?」

「そんな大層なことはしてない。こうすれば出来るって言っただけだ」

「世間ではそれを指南と言うのだがな」

「あそ」

「お前たちは自身の異常性を少し認識せよ。出すぎる杭は折られるものだ」


 折っちゃうのかよ。

 こっちは首チョンパまであり得るから気をつけよう。


「開発依頼を見つけてきたから相談に乗ってくれ」

「早いな。物は」

「小型軽量で対象を選択できる【覚醒】魔導具」

「………造れるなら飛ぶように売れよう。で?」

「【覚醒】使える?」

「私の主系統は光だ。そして【覚醒】は中級術式だ」


 また謎々みたいなことを………あぁそうか、対極系統の中級って意味か。

 そういえば、ミレディが精神干渉は闇系統って言ってたな。


「ユウトとカノンのメイン系統って調べられる?」

「十中八九、ユウトは水でカノンは風だ」


 理由を聞いても大して意味ないか。

 水と風の両サイドに闇はないんだし。


「俺とココアの系統相性を調べる方法ある?」

「領都ベルンの大聖堂へ行けば調べられる。それよりもミレディに金を払って術陣を描いてもらえば早いだろうに。依頼元は彼女であろう?」


 お見通しね。年明けで絡んだのミレディしかいないもんな。

 基礎講座を受けろって言ったのも、ミレディの動向を知ってた臭い。


 つーか、既存の術式や術陣じゃダメって言わないと話が通じないか?

 んや、それを話したからって進展する気がしないな。

 ゴリゴリ進めて、後でヤイヤイ言われればいいか。


「【刻印】は術式でも術陣でもいいんだよな?」

「物にも依るが基礎と初級は術式、中級以上は術陣が定石だ。理由が分かるか?」

「中級以上は術陣の方が刻印面積を小さくできる。要は板部品サイズの問題だろ」

「盗み見ていた甲斐があったようだな」

「技は盗めが家訓なもんでね」


 詰まるところ、刻印する板部品の長さ・幅・厚みに魔導製品のサイズと重量は大きく左右される。

 魔導金属でなければ刻印による機能付加は出来ないのだが、その魔導金属がくっそ重いという難点がある。

 ほんと尋常じゃなく重い。


 板の面積が刻印可能スペースになり、供給できる最大魔力量は厚みで決まる。

 問題なのは厚みで、軽量化のため薄くするには消費魔力量を抑える工夫が必須になる。

 その工夫とはズバリ、術式や術陣に高効率化と小型化を盛り込むこと。


 よし、考えが纏まった。


 ユウトにもらったノートを出し、シャーペンで丁寧に文字を書いた。


「ルーカス、この文字を刻印できるか?」

「故国ジャパンの文字か?」

「正解。俺流ジャパン術式」

「っ!? まさか、魔術言語でなくとも事象発現が可能だと言う気か!?」

「そうならいいなぁって話だよ。失敗したら部品代は俺が払う」

「………恐怖さえ覚えるが、革新的だ。文字の意味を教えよ」


 意識明瞭化維持:眠気を抑えるのではなく、明瞭化した意識を維持する。

 脳神経負荷低減:【覚醒】で頭が痛くなったので、脳神経負荷を低減する。

 消費魔力量低減:軽量化目的で板厚を薄くするために、消費魔力を低減する。

 供給魔力強圧縮:消費魔力を低減する代わりに、強圧縮で魔力強度を上げる。

 接触式対象選定:魔導具が触れた者にだけ、明瞭化した意識を維持させる。


「こんな感じ」

「基礎術式と同等の僅か三十五文字に、それだけの意味が……」

「画数が多い分だけ、一文字が持つ意味も明確で多いんだよ」

「イオリ、これが成功した場合の付加価値が分かるか?」


 はて、小型軽量の他に何かあるっけ? あ、魔力源も小さくて済むか。


「魔石とか魔晶は小さい物でいいから製造コストが安くなる」

「確かにそうだが、それは製造物自体が持つ源泉価値だ」

「じゃあ分からん」

「ジャパン国民でなければ、分解しても核部品の複製が出来ぬ」

「あーなるほどね」

「事の重大さを理解していないな?」

「なに、コピー品ってそんな多いの?」

「購入者の大半は富める貴族や国家だ。試行錯誤や苦労なしに複製し売るだけで利益を攫う。大幅に価格を下げれば、本来の製造元を潰すことさえ出来る」


 言われてみれば、こっちに特許権なんてないもんな。

 コピー品の売買を規制する法律もないんだろう。


 成功すればファインプレー賞じゃん。いやMVPだ。


「オーケー、理解した。とりまやろうぜ」

「うむ、奥へ行くぞ」

「ココアー、カモン」

「はーい」

「ユウトとカノンも来いよ」

「「はい」」


 鬼高価な素材ばかりの部屋に入ると、ルーカスが博物館にあるような引き出しから金属板三つを丁寧に取り出して作業台に並べた。

 縦横はどれも同じだが、厚さが違うようだ。


「魔導金属って何種類かあるんだよな? どんな名前なん?」

「大別すれば三種だ。機会ゆえ教えておこう」


 名前は期待どおりのテンプレだ。オリハルコン、アダマス、ミスリルの三種。


 初耳なのはどれも人工的に作れることで、人工の場合はオリハルコン系●●と明示・明言して売買しないとタイホされるらしい。

 しかし、迷宮で採掘された天然物と比べれば艶・物性・特性が大きく劣るため、詐欺られた方が無知なアホ呼ばわりされるそうだ。


 魔導製品に使うのは、ミスリルのみと言っても過言ではない。

 ミスリルは三種の中で最も軽く、魔力伝導率はほぼ一〇〇パーセントという物性を持つ。

 逆に最も破壊強度が低い魔導金属なので、メイン武装の母材には向かないそうだ。


「イオリから買った指輪の銅を【分離】【抽出】し、銀十に対して一のミスリル粉末を【合成】した後に、飽和量の魔力を導入した物がミスリル系魔銀だ」


 ミスリル系魔銀は、廉価魔導製品のコア部品として使う。

 ルーカスは銀を安く買いたいため、早く金本位制に移行して欲しいそうだ。


「なあ、ミスリルは一番軽いって言うけど、めっちゃ重かったぞ」

「比較対象の問題であり、ミスリルの比重は金より僅かに大きい」

「ユウト博士」

「この最も厚いミスリル板の長さが倍なら、一キログラムを優に超えます」

「納得の重さだな。魔導具の筐体って何製が多いん?」

「基本的に鋼材だ。物によっては内面にミスリルを鍍金する」

「木材にミスリル鍍金だと不都合があるんでしょうか」

「戦闘が生じる可能性のある場で使われる魔導製品を、便宜的に魔導具と呼ぶ」

「ああ、そうでしたね。破壊強度の問題ですか。失礼しました」

「屋内据え置きの造水や湯沸かし魔導器は木製筐体が多い」

「よし、ユウトは二ヵ月以内に強化プラスチックを開発しろ」

「また無理難題を……ですが欲しいですね。先ずは油田の有無を調べます」


 思いつきで言っただけなんだが、さすがに天才は一味違う。


「他に質問がなければ始めるが」

「始めてよろしく」


 ルーカスは一番薄いミスリル板を手元に置くと、開いたノートに右手の平を翳して詠唱を始めた。


 漢字術式が、半透明の膜に載せられたような状態で浮き上がる。


「「「漢字!?」」」

(自分で書いた文字が浮かぶの不思議)


 漢字を載せた膜が左側へスーッと移動し、ルーカスの左手の平の下で静止する。


「【刻印】」


 トリガーワードを呟いたルーカスが左手を下げると、膜がミスリル板に押しつけられ漢字が彫りこまれていく。


 全ての文字が彫りこまれると膜が消え、ルーカスは左腕を薙ぐように振って静かに息を吐いた。


「自身で魔力を導入してみよ」

「それで分かるのか?」

「全ての文字が魔力光を帯びれば、術式として成立した証だ」

「了解。ふぅーーー、どの神様でもいいから頼みます」


 人差し指でミスリルに触れ、魔力にも「頼む」と願いながら導入する。


 漢字が一文字、また一文字と、蒼穹のような青光を帯びていく。


「はは、全部光った。光ったぞ!」

「センパイおめでとー!」

「おめでとうイオくん!」

「おめでとうございます黒須さん!」

「目の当たりにして尚信じられぬ変革だ。ミスリルはもっと薄くて良いな」


 この一歩はとてつもなくデカい一歩だ。

 四人で知恵を出し合えば何だって作れる。そんな気さえする。



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