表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第2章:新生活編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/61

25:イメージか自己暗示か


 講座はユウトとカノンの質問責めでタイムアップを迎えた。

 【覚醒】なんぞ使われたせいか、精神的疲労感がハンパない。


「魔術言語が読めたの驚いちゃったよ」

「僕もです。黒須さんは予想してたんですか?」

「予想っつーか、テンプレなら翻訳チートが仕事すんじゃねえかなって」

「魔術もテンプレで使えればいいのにねー」


 魔術のテンプレ…


「魔術のテンプレってどんなんだっけ?」

「イメージ大事!みたいな?」

「イメージ大事か……」


 あ、なんか閃きそうで閃かない。

 思い出せそうで思い出せない時のもどかしさに似てて気持ち悪い。


「ん? お前たちこんなとこで何してるんだ?」

「人待ちしてるー」

「戦士に知り合いがいるのか?」

「戦士ギルドの職員さんです」

「そうなのか。私の親戚もここの職員やってるぞ」

「(鴨葱)なあミレディ、さっきの【着火】ってどんな感じで火がつくんだ?」

「イオリは図々しい上に唐突で我儘だな?」

「いいからタダでやって見せてくれ。魔力感知かけっから」

「センパイのお願い聞いてあげて?」

「私からもお願いします」

「僕からもお願いします」

「はぁ、お前たちは呆れるくらい良い仲間なんだな。やってやるよ」


 ミレディが人差し指を立てて詠唱を口にする。

 循環する魔力が人差し指の先に収束されていき、指の二センチほど先にデカい蠟燭の炎を想わせる火がついた。


「満足したか?」

「ちょっと黙っててくれ」

「お前なあ!」


 試しに人差し指を立てて循環する魔力を収束させつつ、放出の応用で指の先に塊を作る。

 ついでに圧縮してミレディがつけた火の再現をイメージし、更に「火はついて当然」と強く、強く思い込む意思を魔力に乗せる……


ボッ!


「「「えぇっ!?」」」

「はっはー、ついちゃったぜ」(笑)

「な、何なんだお前!? 何で素人が無詠唱なんだよ!?」

「言うたら自己暗示ってやつだろな。普段なら出来ないことを、出来ると強く思い込んだら出来たって経験、ミレディにもあるだろ?」

「私は自己暗示なんかかけてない!」

「いーや、詠唱が自己暗示だろ。それを魔力に乗せてる。ややこしい術式の節数が増えるのも自己暗示を強めるためじゃないか? 逆に、出来て当たり前って術式は詠唱を減らせたりすんじゃね?」

「略式詠唱か…」

「やっぱ出来るんじゃん」

「センパイすごっ! また惚れた!」

「イオくんってほんとすごいなぁ」

「思考の方向性に呆れますね。どうやって気づいたんです?」

「ミレディが連続的に魔力を操作したからだ」


 術式だけで完結するなら、連続的な魔力操作をする必要はない。

 だがミレディは操作していた。


 おそらくミレディの脳と体は一連を覚えていて、無意識的に循環・収束・放出をしたんだろう。そこに術式詠唱という自己暗示が乗った。


 分かってみれば俺的に納得の理屈。これでぐっすり寝れる。


「ついでに聞くけど、自力で使う初めての魔術が自作のスクロールって魔術師、いないんじゃないか?」

「……いない。詠唱発動できない術式の陣を描いても発動しない」

「だよな。すげえしっくりくる」


 魔術陣を描くモノに発動体化処理なんてことをするのも、詠唱と同等の強さで乗せられない意思力を補完し、無理矢理に発動するためだろう。

 そうでなければその辺の紙に描いたって発動するはずだし、発動したスクロールが燃え尽きたように炭化する説明もつかない。

 高いんだからリユーズさせろって感じだ。


 あ、スクロールのリユーズ……もし造れたら売れそうな予感。


「イオリお待たせー♪ あ、ミレディさん。どうかしたの? またイオリが変なこと言って困らせたとか?」

「待てこら、問題児みたいに言うな」

「リリアーナだったのか。私の魔術師……いや、今日は帰る。またな」

「うん、またね。……イオリなに言ったの? あんなに元気がないミレディさん初めて見たよ?」

「ジャパニメーションはすげーって話をしただけ。さーて、メシ食って風呂入って帰って寝ようぜ。頭使いすぎて脳が痛いわ」

「ジャパンの話?」

「ゴハン食べながら話したげる。行こっ♪」


 前々から気になっていたイイ匂いをまき散らす食堂へ行くと、男臭い職人御用達のモツ焼き屋だった。


 何かと絡んでくる職人連中に聞いてみると、アデーレで臭くないモツ焼きを出すのはここだけだと。

 店主のおっさんが狩人兼料理人だから、モツが新鮮で下処理も上手いそうだ。


「できた!?」

「すごーい! ココアが魔術師になっちゃった!」


 ココアは食ってる最中に【着火】ならぬ【発火】をマスターした。

 食い終わる頃にはカノンもびっくり顔で指先に炎を浮かべたが、指先を睨みつけてるユウトは出来ず仕舞いで風呂屋へ。


「あ゛~~~キモイくらい気持ちいいわ~。風呂ってサイコ的にサイコー」

「黒須さん、なぜ僕は出来ないんでしょうか…」

「あ? ああ、お前たぶん考えすぎなんだよ。お前にとって当たり前なコトって何だ?」

「カノンさんが愛らしくも美しいことです」

「あそ。発火もそれと同じで当たり前だと思ってやってみろ。余計なコトは考えるな」

「カノンさんの美貌は発火…」

(こいつ意外とアホかもしれん)


 風呂に入ってる間は出来なかったが、風呂上がりのカノンに『やはりカノンさんは愛らしくも美しいです!』とアホ爆弾を炸裂させた帰り道、ユウトの指先にも火が灯った。


「なあリリ」

「なに?」

「ミレディの家がどこか知ってる?」

「行ったことはないけど、西広場の前にあるメゾネットって言ってたよ」

「朝イチで行ってみるか」

「センパイ? ミレディはタイプじゃないよね? ねえ」


 なんだその限りなく黒に近い容疑者を見る目は。


「ココアも行くんだぞ」

「なにしに?」

「ダメ元で双子のこと聞きに」


 両親が猛反対してるなら、双子が毎日のように受講するのは無理だろう。

 叔父にとっても、金の受け渡し現場を見られるリスクが高くなる。


 今日は双子が参加登録をしてたからすんなり受講できたが、次回の受講は講義終了時にミレディと調整する。

 だけど双子は午前の講義が終わると、何を言うでもなく帰った。


 ギルドが仲介するのは次回の受講が決まっていない場合だけで、その際には受講希望日の五日前までに参加登録をするのが望ましいそうだ。

 しかし、ギルドに仲介を頼むと五千ユルグを払わなければならないので、ミレディの家に行って日時を調整すれば五千ユルグが浮く。俺ならそうする。


 受講料は講座ごとに一人三万ユルグ。

 一万円札が三枚ならどうとでも出来るが、ユルグ硬貨で三万は嵩張る。

 双子がそう簡単に隠し持てる物量じゃない。


「あの子たちがお金を受け取る日が分かるかも的な?」

「かも的な。交代制にしてもずっと見張るのダルい」

「センパイ天才?」

「ココアの天才はハードル低くて俺幸せ」

「ご褒美にチューしたげる♥」


 ココアからご褒美をもらい、瞬間寝落ち白猫リリのおでこに回しチューをしてぐっすりと眠った。




 明けて翌朝。


「おはようございます皆さん見てください!」

「「「おぉ~」」」


 ユウトがピンポン玉サイズの水球を手の平の上に浮かべている。

 傍らのカノンは嬉しそうにニコニコだ。


「火より難しそうな気がすんだけど」

「余計な事を考えすぎだと言われたので、物理学的事実だけにフォーカスして強くイメージしたら出来ました」

「それが考えすぎだと思うのは俺だけか?」

「いいんじゃん? ユウトだし」

「それどうやってるの?」

「大気中の水分子、要するに湿気を集め、物理的に安定な球形にしています」

「「「へぇー」」」


 リビングの湿度がちょびっと低くなってるってことか。

 球形が安定って話は聞いたことがある。

 シャボン玉が丸くなる理由だったはず。


 俺の自己暗示説よりも、ココアのイメージ大事説の方が当たりっぽい。

 んや、当たりハズレじゃなく、物理的事実を基にした明確なイメージでも魔術は成立するって感じか。


 これ、ユウトとカノンの独壇場になりそうな気配がある。

 それならそれで得意な奴に任せればいいだけだ。

 俺たちの目標は魔術師じゃなく魔導製品の製作なんだし。



 ユウトとカノンにルーカスへの現状報告を頼み、ココアと二人で西広場へ向かった。

 アデーレは東側に工房や工場が集中していて、西側には集合住宅と小売店が集中している。

 裏路地歩きをすれば、面白そうな店が見つかるかも。


「お婆ちゃん、ミレディっていう魔術師の家を知ってますか?」

「ミレディさんの家はあの建物の三階と四階だよ。玄関は四階だったかね」

「ありがとうございまーす」


 一発で見つかるとは。ミレディって何気に有名なのかも。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ