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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第2章:新生活編

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24:魔術言語は怪しい



 アデーレの魔術師ギルドで行われる講座はミレディが一手に引き受けているらしく、「午後の講義もあるなら受けたい」なんてことをユウトとカノンが宣い、術式構築基礎理論の講義を受ける羽目になってしまった。


 昼メシ後の俺とココアが睡魔と死闘を繰り広げるのは間違いない。


 リリと一緒にギルドから程近い食堂へ行き、適当に注文して双子の両親が経営している店に心当たりがあるか聞いてみる。


「レストン商会だよ。知ってるでしょ? 魔導金属とか金属専門の商会」

「金属の板を受け取りに行ったとこじゃない?」

「あそこか」


 ルーカスにパシらされて行った店だが、確かに儲かってそうな店構えだった。

 どの商品も冗談みたいに高いと思えば、あれが魔導金属か。

 インゴットで見ると判らんもんだな。


「どこで接触しているかが問題ですね」

「何の話?」

「実はですね」

「待ってユウトさん、私が説明してもいい?」

「そうですね、お願いしますカノンさん」


 俺、ココア、リリへの説明担当者がカノンになりつつある。

 ユウトは小難しい言葉を使うから、俺たちには難しいのだ。


 ミレディから聞いた話をカノンが説明したら、実際どうやる?という問題があっさりと解消された。


 双子の叔父はレストン商会の従業員であり、工業街区にある鉱石製錬工場の管理責任者を務めている。

 アデーレに出回る魔導金属インゴットの九割はレストン商会製で、領内各地からの注文を各ギルドが取り纏めて発注するケースもある。


 叔父はジャンという名前らしく、対応が悪いことで有名らしい。

 時には注文を通してないこともあり、レストン商会が受けるクレームの殆ど全部にジャンが係わっているそうだ。


「工場を張ってりゃ双子が来そうだな」

「食べたらセンパイとあたしで行ってくるよ」


 俺も同じことを言うところだった。


「サボる気ですね?」

「受けた方がいいと思うよ?」

「「ナンノコトカナ」」(真顔)

「ミレディさん夏には迷宮都市へ戻っちゃうはずだから、今の内に受けとけば? ちゃんと講義してくれる人って貴重なんだよ?」


 戦士ギルドにも新人から基礎戦術講座を開いてほしいとの要望は多い。

 が、現役の戦士で講師依頼を受けてくれる暇人は貴重らしい。


 近場に魔獣の生息地が多いわけでもなく、迷宮が近いわけでもないアデーレのような都市だと、大抵は冠婚葬祭など家庭の事情で一時帰郷した者が、日銭稼ぎ目的で講師を務めるそうだ。


 受けたい時に受けられるものではないため講座は三時間の長丁場で、次も受けるなら講師に直接申し込む形態なのだと。


「明日から時間交代制で見張りましょう。いいですね?」

「へいへい」

「寝落ちしちゃう自信がある」

「落ちる前に寝る」


 クラス委員長のカノンから「起こしてあげる」と言われつつ講義室へ戻ると、ミレディが屋台メシを食べながら本を読んでいた。

 ワインをボトルでラッパ飲みしてる。おっさんかよ。


「来たな。んじゃ始めるか」

「もう眠い」

「あたしも」

「私の講義で寝るとはいい度胸だ。イオリとココアには【覚醒】をかけてやる」


 ニヤリと笑んだミレディがぶつぶつと呟き、俺とココアに拳を向けた。

 ミレディの中指に填めてあるリングがキラリと光り……眠気がぶっ飛んだ。


「余計なことを…」

「サイアク…」

「なんでだよ!? 寝たら金がもったいないだろ!」

「今の術式はこういう時に使うんですか? 違いますよね?」

「眠ってはいけない時でしょうね。どういう場面か判りませんが」


 カノンとユウトが目を輝かせている。

 そのメンタルを少し分けてほしい。


「寝たら死ぬ時に決まってるだろう?」


 雪山遭難みたいな生活自体が嫌だと思いながら聞くに、迷宮なら潜行が長引いて安全地帯まで距離がある時。

 屋外の野営なら、深夜の見張りを担当する者にかけるそうだ。


 必要性はわかるけどやっぱり嫌だ。


「それを魔導具化すれば良いのでは?」

「売ってるぞ。携行できるから魔導具と呼ぶんだが、実際は大きく重い物が多くて迷宮探索には向かない。野営だと全員が寝れなくなるという難点もある」

「大きさと重量と効果範囲の問題なんですね」

「軽くて効果範囲を限定できるなら買う、と認識しても?」


 ユウトの問いでミレディが目を細めた。


「買える値段なら買う。軍隊は多少高くても買うだろうな」

「なるほど、道理ですね」

「ミレディさんは幾らなら買いますか?」

「個人では買わないが、五百万シリンまでならパーティーで買う」

「ミレディさんがいるのに、ミレディさんのパーティーで買う意義は何です?」

「簡単な話だ」


 迷宮探索者のミレディが【覚醒】を使うのは当然ながら迷宮探索中で、潜行が長引いている場面。

 そういう場面では、可能なかぎり魔力を温存しなければ死亡リスクが高くなる。


 一方で、緊張や運動強度が高いと、【覚醒】術式は効果持続時間が短くなるというデメリットがある。

 五百万シリンで魔力温存が可能になるなら買う選択肢しかない。

 パーティー全員の生還が最優先だ、と。


「面白い話だな」

「作れそうなのか?」

「さあ? ミレディが猿でも解かる講義をすれば造れるかもな」

「迷宮に群れで出る猿の親玉は知能が高いぞ?」

「どんな嫌味だよ。負けてたら泣くぞ」

「イオリは微妙だ」(笑)

「やかましいわ! とっとと始めろ!」


 術式構築基礎理論は、【覚醒】がかかってなければ爆睡必至の内容だ。


 魔術式は魔術言語でしか編めないとか、基礎術式は三節以上で組むとか、初級・中級・上級と術式規模が大きくなれば節数が倍々で増えるとか。


 ユウトとカノンは意欲的に疑問や質問を投げかけているが、俺とココアは質問すら思い浮かばない。

 質問は思い浮かばないのだが、質疑応答を聞いていると不可解な点には気づく。


 魔術言語は魔術の学術体系化を志した古代人が考案したそうだが、文字(レトリク)は彼らが生きていた時代の文字だと。

 かと思えば、隠然象徴(レイテントシンボル)なる系統を表す絵文字は、精霊術の精霊象徴(スピリットシンボル)を参考にして考案されたとか、アニメの魔法陣でよくみる幾何学模様は、古代の二千年後を生きた連中が考案して後付けしたとか。


 俺の勝手なイメージだが、文字その物に不思議パワーがあるんだと思ってた。

 でもそんな話は出て来ない。これはおかしい。


 術式を構築する節数にしても、「魔術言語で術式を編むと必然的にそうなるからそうなんだ」みたいな説明。これもおかしい。


「なんか色々おかしくね?」

「そ? めんどいとは思うけど。っていうか、魔術言語の暗記とかムリ」

「確かに暗記するの大変そうだよね」

「金はかかるが、覚えなくても初級までなら売ってるぞ」

「ルーカスさんが使ってるのを見ましたけど、魔術陣のスクロールですね?」


 ミレディが頷いて話を続ける。


 基礎術式を陣化したスクロールは十万シリン前後で、初級のスクロールは系統にもよるが百万シリン前後。

 中級以上も伝手があれば買えるが、売り手の言い値を基にどんだけ値切れるかといった売買らしい。

 うん、これはおかしくない。


「術式の等級が上がると、魔術陣の大きさも比例的に大きくなるのでしょうか」

「一概にそうとは言えないが、使い手が少ない術式の陣は大きい物が多い」


 これも少しおかしい。

 言葉で説明しろと言われれば困るが、おかしいと感じてしまう。

 魔術言語に納得がいかないから、色々とおかしく感じるのかもしれない。


 よし、そこをちょっと突いてみようか。

 自動翻訳チートとか利きそうな気もするし。

 もし利かなかったらやる気がゼロになる。


「なあミレディ」

「なんだい」

「簡単な術式でいいから詠唱と術陣を黒板に書いてくれ。タダで」

「びっくりするほど図々しい男だな? 特別に基礎の【着火】を書いてやるよ」

(さすがセンパイ)

(言えなかったことを平然と)

(見習わないといけないなあ)


 ミレディがカツカツとチョークを鳴らしながら、術式を書いていく。


(((えっ!?)))


『求めるは炎霊の摂理 我は炎霊の依るべなり 炎極の種をこの手に灯せ』


 翻訳チートは利いたけど意味が分からん。

 いやまあ、言わんとするところは分かるけど、こんなもんでなぜ火がつくのか…


 ミレディが続けて描いた術陣は、正しく意味不明。ど真ん中の絵文字は火の精霊だか何だかの隠然象徴(レイテントシンボル)なんだろうけども。


「それに魔力を導入すれば火が点くのか?」

「詠唱すれば魔力が乗って発動するのさ。術陣は発動体化処理をしたスクロールに描いて魔力を導入すれば発動するよ」


 結局のところは魔力がなければ始まらないと。

 詠唱で魔力を乗せるってのも、詰まるところは意思や意識の問題か?

 魔術言語も精霊も仕事しないのに、なぜ火がつくんだ?

 ここが分かれば、俺とココアもどうにかなりそうなんだが…


 ダメだな、椅子に座って考えてるだけじゃどうしようもない。

 帰ってから色々試してみるべ。



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