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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第2章:新生活編

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24/61

23:どんな魔術師



「簡単に言うとだな、何だか良く判らないから系統の外に置いたという話だ」


 三大系統外の付与、錬金、結界は謎が多いという。

 そのため、体系化された学問とされてはいるが、統一規格の教本などはない。


 相性ではなく知識と経験に依存する傾向もあり、三つしかないから両サイドもへったくれもない。

 ルーカスのような錬金術の達人が、付与術や結界術にある日突然目覚めるような前例もないらしい。


「未だに魔法と深い関連性があると唱える学術者が多い所以だ」


 対象数が少なすぎて統計データとも呼べないが、例えば現在世界に二人しかいないと云われる付与術師は、両名とも「生まれながらに付与ができたと思う」と回答しているそうだ。


 二桁人数の現役がいる結界術師も、付与術師と似たような回答を寄せている。


 系統外で最も人数が多いのは錬金術師で、この大陸だけでも数千人単位が現役として存在する。

 しかし技量の格差が大きすぎて、十把一絡げに「錬金術師の見解」とは出来ないところが難点らしい。


 ただ、腕利きの錬金術師に限って調査すると、「こうすれば良いのではないかと閃く場面が多々ある」と回答するそうだ。


 このことから、三大系統外は修学と修練という学問領域ではなく、生まれながらの資質で会得すると伝わる、古の魔法に近しいのではないかとの学説が根強い支持を集めているという。


「この流れ、俺らヤバくね?」

「あたしはね。センパイはヤバくないでしょ」

「ココアちゃんに同意かな。操作技能どんどん修得していくからだよね?」

「それ。系統魔術もサクッとできちゃいそうじゃん」

「そいつはココアもカノンも勘違いだ。魔力操作と魔術は別モンの臭いがする」

「黒須さんが言わんとするところ、何となく解かります」

「ユウトはどう解釈してんだ?」

「魔力操作は肉体制御、つまり運動機能の使い方に似ている、です」

「お前やっぱ頭いいなあ」

「面白そうな話してるな。私にも聞かせろよイオリ」

「得意分野に似てるってだけの話だよ」


 魔力操作で物を言うのは感覚と意識力。

 先にこれを聞いてから修練を始めたのが良かったと思ってる。


 基本の循環はあっさりできた。

 これはウォームアップに似てたからだ。


 体を動かし心拍数を上げて血流量を増やし筋を温める。

 この作業に慣れると、自分の体温が何度くらいまで上がっているか感覚的に判断できる。


 体温を判断できれば筋力の上昇率や、関節の可動域もだいたい判る。

 これを循環に置き換えると、どの程度の魔力量が、どの程度の速さと効率で巡っているかの把握が、日増しに精度を上げていったという話。


 苦労したホーレン草の時は、循環の流速を下げればいいと閃いた。

 アイデアの元ネタはクールダウンだ。


 これに関しては、常時循環で「魔力に意識を乗せられる」と確定していたから、部分的に流速を下げるのだって出来るのでは、というアイデアだ。


 ここまでくると、感知に使う拡散の意識に苦労はなかった。

 まあ、均一にどんな形状でどの程度の距離まで拡げるかってのは苦労したし、まだ完璧じゃない。


 調子に乗って道行く人に感知をかけまくってたのも、俺的には理由があった。

 技能集に隠蔽で使うのは〝静止〟と書いてあったから、「循環してる魔力じゃないと感知できないのか?」と思って検証してたわけだ。


 結果、常時循環してる奴の魔力は明確に感知できて、量と強度もかなり正確に判定できると分かった。

 なら隠蔽は、魔力に「微動だにするな」と意識を乗せればいいだけじゃん、って感じ。


「獣人みたいな男だな?」

「どっちか言うとそうかもな。ミレディだって俺と似たようなタイプじゃん」

「イオリと寝た記憶はないんだけどな?」(笑)

「言ってろ。意識を乗せるっつっても、意識しながらの操作は全体的に遅い。でもミレディの感知は魔力の動きが速かったから、頭と体が一連を覚えてる証拠だ」

「お前すごいな」

「センパイ脳筋だからね」

「ココアはフィーリング生物だろが」

「そんなあたしが大好物なくせに」(笑)

「まぁな」(キメ顔)

「ユウトさん、私たちは術式で巻き返すしかないよ!」

「そうですね! 頑張りましょうカノンさん!」


 ミレディは『何の話してたっけ』と言って講義を再開した。

 やっぱ俺と同じタイプだ。


 乱れた進路を修正したのはユウト。

 錬金術について、どうしても確かめたいことがあると言って質問を始めた。


「付与と結界は判りますが、錬金は何を以てして錬金術師と認められるのです?」

「良い質問だ。答えは【合成】術式を使えるか否かだ」

「なるほど。では、どんな術式を使えれば高位と見做されるのです?」

「精密で高耐久な【造形】と【刻印】だが……もしかしてお前たちか? シルバラッド様の助手をしている風変わりな若い連中というのは」


 あいつほんと有名なのね。アデーレのヒーローってのは本当だな。


「そうですけど、そんなことよりも、【造形】と【刻印】は魔導製品の製作に使う術式に思えるんですが、製作できる錬金術師は限られているんですか?」

「そこは度合いの問題だ。一から十まで熟せる錬金術師となると、大陸全土で十人もいないと思うぞ。大抵は分業製作だ」


 筐体や内蔵部品、細かいところなら接続端子やスイッチ類は、商工業者ギルドが仲介して各種工房に発注するそうだ。


 【造形】のイメージが曖昧だと粗造形しか出来ず、鍛冶師に修正を依頼する錬金術師が大半を占める。

 【刻印】も同様で、中級以上の術式を決まったサイズの内蔵部品に精密刻印できる錬金術師はとても少ない。


 分業製作では常に問題となる事柄が四つあり、これこそ魔導製品が贅沢品や嗜好品の域を出ない原因になっている。


・高額な魔導製品の購入者は貴族と相場が決まっているため、

 失敗を怖れる工房が多く、仕事を受けてくれる工房を探す手間と時間がかかる。

・手配もさることながら、色んな工房が係わるため納期を定められない。

・どこかの工房で不良が出ると追加費用が発生するため、

 納品直前まで価格を提示できない。

・待ちに待って納品された品が、要求仕様や性能を満たしていない。


「なら、故障リスクが低くて拡販できそうなモンで勝負するってのもありだな」

「屋台のおじさんでも買えるような魔導具があってもいいと思うんだよね」

「無償保証期間と保証期間延長を取り入れれば、高額品でも注文が殺到しそう」

「良いアイデアですカノンさん。負荷が高い部品をストックしておけば、故障した際の修理期間も大幅に短縮できます」

「生産職には使われない言葉だと思ってたが、お前たちはいいパーティーだな」


 ミレディに目を向けると、前に座ってる双子が今にも泣きだしそうだ。

 話についていけない場違い感はキツイよな。名前なんだったけ…


「キキとララだっけ?」

「…リオです」

「ミアなの…」


 ココアたちがすげえ睨むんですけど。ごめんって。


「リオとミアはどんな魔術師になりたいんだ?」

「「どんな……」」

「あーいや、俺が悪かった。憧れに理屈なんていらないよな」

「イオリさんたちは錬金術師を目指してるんですよね? なぜですか?」

「食っていくためだ」

「貧乏なの?」

「くっ、純粋な分だけ胸にくるぜ。ま、俺たちは異国人で、アデーレに来た時は一ユルグも持ってなかった」


 これ失敗したな。変に大人ぶって声かけるんじゃなかったわ。


「リオとミアにとっていい機会ではないか?」

「「なんの?」」

「イオリが尋ねた、どんな魔術師になりたいのかを考える機会だ。それが決まれば、どうすればなれるかは自然と見えてくるものだ」

「「………」」

「さて、そろそろ時間だ。今回の講義はこれまで!」


 肩を落として部屋を出る双子を見送って席を立つと、ミレディが手振りで座れと促してきた。


「イオリ、良い言葉だった」

「あん?」

「どんな魔術師になりたいか。憧れに理屈は要らない。私は、なぜ魔術師になりたいんだとしか訊かなかった。私自身の出発点が憧れだったのにな」


 リオとミアは服装どおり大商家の子供で、両親は双子が魔術師を目指すことに猛反対しているそうだ。


 双子には年の離れた優しい兄がいて、彼は魔術師だった。

 そう、過去形だ。

 彼は迷宮探索者に憧れ、素質もあり魔術師になった。

 しかし、迷宮であっけなく魔物に殺されてしまったという。


「難しい話だな。リオとミアの気持ちも、親の気持ちも分かっちまう」

「全くだ」

「あの子たちの親は反対してるんだよね? どうやって受講料を払ってるの?」

「叔父だよ。性質の悪い叔父が金を渡している」

「あぁそういう話ですか。察するに、兄の背中を押したのも叔父でしょうね」

「ほぉ、ユウトも商家の生まれか?」

「そうです。だから分かってしまいます」

「分かるか?」

「分かんない」

「あ、後継?」

「そのとおりですカノンさん。叔父の目的は商家の跡目です。ご両親はご存じなのですか?」

「勘づいていても証拠がない。リオとミアも話そうとしない。結果、両親は憎まれ役に徹するしかない状態だ。私も諦めさせてくれと頼まれている」

「叔父の本性を暴く証拠ですか…」

「やりたいなら手伝うぜユウト。相手は一人、こっちは四人でスマホも四台だ」

「ですね、やりましょう。その後はルーカスさんに丸投げです」(笑)


 そこまでは思いつかなかったと、俺たちは笑い合った。



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