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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第2章:新生活編

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22:魔術概論



 ダラダラしているウチにあっという間に年が明け、テレビもネットもないので新年感が全くない。

 「あけおめことよろ」さえ言い忘れる勢いで、リリの出勤に合わせて魔術師ギルドへ向かう。


「講座が終わったらお昼一緒に食べようね」

「「「「え?」」」」

「えーっと、行けば分かるよ。じゃあまた後でね」


 どこぞの猪木さんみたいな言葉を残し、リリは戦士ギルドに入って行った。


「元気ですかーーーっ!!!」

「なに!? センパイ恥ずいよバカなの!?」

「私は元気だよ?」

「黒須さん、判りますけど乗れません。行きましょう」

「へーい」


 俺でさえギリギリ世代だもんなと思いつつ、初めての魔術師ギルドへ。

 窓口嬢がカワイイのは戦士ギルドと同じっ!?


「エルフ姉さんがいるぞ!」

「センパイうぜー」

「すごく綺麗な人だね」

「輪と翼があれば天使ですね。鎧を纏えばヴァルキュリアでしょうか」

「ユウトさんタイプなの?」(上目)

「僕のタイプはカノンさんだけですが?」(真顔)

「もぉ♪ すぐそんなこと言って♪」

「爆ぜろ」

「そして死ね」


 ブラックココアが彼女で良かった。


 朝イチだから混んでる予想だったが、思ったほどじゃない。

 戦士ギルドの朝夕は、男衆の男臭で目が痛くなるほどだ。

 かと言って魔術師が女性ばかりってことじゃないが、テンプレの固定砲台よろしく汗はかかないのかもしれない。


「エルフ列でいい?」

「エルフの前でチューしてくれるなら」

「ディープなのをキメてやろう」

「い、いいよ! ヘーキだもん!」

「耳真っ赤だが?」

「そ、そんなことないし! センパイなんてイチコロだし!」

(死んでいいよ?)

(死んでください)


 どこからか「死ね」電波を受信したのは気のせいだろう。


 窓口は均等に並んでいるので行列は十人もいない。

 講座の参加申し込み手数料の五千ユルグは高いなと思いつつ、ココアをイジリながら待つこと約三十分。


「次の方どうぞ」


 ココアたちを手で制し、思い出リピートを試してみる。


「やあ、毎日大変だね」

「はい?」

「いやほら、キミの窓口って並ぶ人多いでしょ」

「均等に並んでもらいますから皆同じです」


 エルフ姉さんが言いながら上を指す。

 見上げれば、「理知ある魔術師は均等に並んでください」と書いた吊り看板。

 リリが戦士ギルドで良かった。


「魔術基礎講座の申し込み四人前よろ」

「申し込み用紙に記入してください。申し込み手数料は五千ユルグ、受講料は三万ユルグです。九時開始十二時終了の魔術概論講座に登録します。以降の受講を希望する際は、講師に直接申し入れ日時を決めても結構です」


 エルフ・ザ・アンドロイド。すげえ機械的。仲良くなれる気がしない。


 三時間ぶっ通しは長いし、三万ユルグも安くない。

 昼メシの話はこういうことか。


 そんな会話を交わしながら申込用紙に記入し、シリン銀貨一枚と一緒に次々と手渡す。


「…皆さんシリン銀貨ですか」

((めんどそう))

((面倒くさそう))


 小さくため息をつくエルフ姉さんから大量のユルグ硬貨で釣りをもらい、九時まで二時間くらいあるのでベンチに腰を下ろした。二時間待ちは辛い…


「まあ、誰もかれもが愛想いいわけねえか」

「あれが普通じゃない? リリがいい子すぎるんだよ」

「ちゃんと視線を合わせて話すだけ日本よりマシかな?」

「一瞥もしない人いますからね」


 何となしに横へ目を向ければ、三人ともこっちに似つかわしくないスタイリッシュなカバンを抱えている。

 俺は小回りがきくボディバッグだったから、七インチのタブレット、タッチペン、三色ボールペン、シャーペンしかない。

 他は爪切りと爪ヤスリっつーもう使わない物だけというね。


 大学の講義には十分なものの、電源がとれないこっちでタブレットをノート代わりにするのは無理だ。

 こっちの学生はどうやってノートをとるんだろうか。

 ルーカスでさえ、二〇インチくらいの黒板にチョークで書いている。


「電気ほしいなあ」

「電波ないでしょ」

「ノートがないんだよ。タブレット派だから」

「ノートなら一冊差し上げますよ?」

「えっ、いいのか?」

「常に新品二冊を予備として持ち歩いているので、どうぞ」


 ほんと天才が考えることは分からん。もちろんもらうけど。


「ありがとな。何で二冊もあんの?」

「咄嗟に書き留めたい時はスマホやPCよりノートが速いので」

「咄嗟になに書くんだ?」

「歌詞やメロディラインです」

「ユウトさんは趣味で作詞作曲してるの」

「へぇ~~~」

「高校の時もやってたね。学祭のバンドに楽曲提供したとかって?」

「そんなこともあったね。とても懐かしく感じるよ」


 意外な特技。考えてみれば、薬作ってる時によく鼻歌歌ってたな。

 聞いたことないメロディだと思ってたが、オリジナルだったのか。


 ユウトに自信作を歌ってもらったら、かなりイケてるポップスだった。


 いい時間になったので二階の大部屋へ行くと、俺たちの他は二人。

 十歳くらいの男女で、いい服を着て顔と背丈が似てる。双子かもしれない。


「よーし全員揃ってるな。講師のミレディだ。始めるぞーってなっ!?」

「やられると気分良くねえもんだな」

「やりまくってるのセンパイだけだよ」

「私たちも早めに隠蔽を覚えないとだね」

「あれ難しいですよね。黒須さんは出来るのになぜ使わないんです?」

「特に理由はない。(実はあるけど説明ダルい)」


 唖然としていたミレディが、急にニヤァと笑みを浮かべた。獰猛だなオイ。


「くっくっくっ、小遣い稼ぎもやってみるもんだ。一人ずつ名乗ってくれ」

「イオリ、ココア、カノン、ユウトだ」

「一人ずつって言ったろう? まあいい、この双子はリオとミアだ」


 やっぱり双子で常連さんと。


「ミレディさん、どういうことですか」

「何の話か分からないの」

「お前たちが初めて来た時に言ったろう? 術式より先に魔力操作の修練をして魔力器官を育てろと。四人はそれをやってる。寒気がするくらいな」

「「………」」

「まぁ修学が進めば嫌でも思い知る。よし、始めるぞー」


 講座は文字どおり〝魔術概論〟で、広く浅くといった内容。


 六大系統と三大系統外に別けられた理由。

 魔法の模倣から始まり、妖精種に教えを乞い精霊術を取り入れ学問として体系化していった、などなど。


 興味深いのは、「魔術の才能」という表現が的外れだという話。

 学び方の上手い下手はあるが、時間を費やせばそれなりの位置へ辿り着ける。

 なにせ学問なのだから、才能ではなく努力と根気が重要だと。


「系統も系統外も結局は相性の問題だ。相関を覚えれば進むべき道が見える」


 ミレディが言いながら系統の相関図を黒板に書いていく。


   【六大系統】        【三大系統外】

     光              付与

  風     水


  火     土        結界    錬金

     闇


 この相関図は、各系統と系統外の親和性を表している。

 光は両サイドにある水と風に対して親和性が高い。

 闇ならば土と火になる。


 例えば、火系統との相性が最も良い者ならば、両サイドの闇系統と風系統の相性が次点で良い。

 要するに、火系統術式の修得が早く、術式を使った際の威力や効果も高い。

 次点の闇と風系統も比較的に修得が早い。


 逆説的に、火系統との相性が最も良い者は、対極にある水系統との相性が最も悪い。

 術式の修得難易度が最も高く、術式を使った際の威力や効果は最も低い。


「意外と面白いな」

「三万の価値あるかも」

「相性だけなのに魔術師の絶対数が少ない原因は、魔力器官の規模と性能かな?」

「カノン! お前賢いな正解だ! 魔力器官は操作技能の修練を積み重ねないと発達しないし、一定の年齢に達すれば発達が止まる」

「止まる年齢は判明しているのでしょうか」

「種族差と個人差もあるが、人間なら二十五歳前後だ。お前たちはそれ以上発達させると本物の化け物になるからもういい」(笑)

「「………」」


 双子が凹んでるなあ。

 技の前に心身を鍛えろってのは何事も似てる。


 ルーカスも先を見越して、俺たちの仕事内容を決めてくれたんだろう。

 八角形の虹色水晶に魔力を導入しろと言われた時は殆ど全部吸われたけど、あれで魔力総量がグンと増えたのは気のせいじゃない。


 こりゃ系統外の話も楽しみだ。



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