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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第2章:新生活編

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22/61

21:収入安定化対策



 年越し三連休の初日、ココア、カノン、ユウトが生理用品の話ばかりなので、リリと二人でベッドに寝転がって生活費の出し合いを相談している。

 リリとココアの分は俺が全部出しても構わないんだが、今じゃないような気もする。


 定職に就いてる平民としてみればリリは高級取りだが、言うても月給は二十四万ユルグくらい。

 半公的機関の各ギルド職員は、月給の二割五分を徴税された残りが手取りになる。

 リリの手取りは十八万ユルグということ。


 一ヵ月が四十日ってこともあるが、寒い九月と十月の薪代は結構な金額だった。

 おまけに十月に入った頃まで、カノンとユウトの食費はリリが出していた。

 俺はココアの分を出していたので、二ヵ月分の防寒着レンタル代を考えるとギリギリだった。

 結果的にはホーレン草のおかげで余裕だったものの。


 今日からはカノンがユウトの面倒をみるし借金も返したから良いのだが、共同生活の費用負担は公平であるべき。

 そこでリリに生活費の内訳を尋ねてみると、この広いアパートの月額家賃は、なんと一万五千ユルグぽっきりだと。


「めっちゃ安いな。アデーレの家賃が安いってこと?」

「ううん、この間取りだと裏路地の安い部屋でも五万以上かな」

「表通り沿いのここが一万五千の理由は? まさかの事故物件とか?」

「なにそれ」

「殺人の現場だったり、変なことが起きまくるとか、住んだら不幸になるとか」

「それ嫌すぎる(笑) ここが安いのはね、戦士ギルドの所有物件だからだよ」


 昔はこの建物が戦士ギルドのアデーレ支部だったそうだ。

 数十年前に領政出張所と各ギルドを一ヵ所に集める行政区画整理があり、各ギルドは元の建物を改築して独身寮にしている。だから破格値で住めるのだと。


「独身寮ってことは、結婚したら引っ越さなきゃいけないじゃん」

「すぐ結婚してくれるの?」

「え…」

「なーんてね、冗談」(笑)


 心臓に良くない。

 正直、まだそこまで考える余裕がない。

 余裕はないが…


「ルーカスん家みたいな一戸建ての借家ってある?」

「多くはないけどあるよ。広いお家がいいの?」

「そこそこ広い庭があればいいかなあってだけ。いくらくらい?」

「ルーカスさん家の半分くらいで二十万ユルグくらいかな」


 意外と高い。

 今の手持ちが五百八十万シリンくらいだから、四百万を充てるとして……ユルグが面倒くせえ。

 あ、服とか買わなきゃなんないから四百も充てられないわ。

 つーか、借家ってのがそもそもイマイチだよな。


「土地って買える?」

「領主様が認めてくれれば買えるけど、宮廷から返還命令が出ない保証はないよ」

「宮廷……国の土地は最終的に王様のもの、みたいな?」

「そんな感じ。領地を下賜されても、陛下は王権で奪爵ができるから」


 大物貴族のクビはそうそうないだろうけど、領有されてない秘境にでも行かなきゃリスクは消えないと。


 つーか、土地を買いたくなるのって、国土が狭い日本人だからかね。

 こっちは買っても第三者に売れないんだろうし。


「お家はルーカスさんに相談してみるのが一番いいと思うよ?」

「それもそうだな。偉いさんみたいだし」

「もうすぐ本当に偉くなるかも」

「というと?」

「叙爵を二回も辞退してるし、今年は良薬をたくさん納品したでしょ?」


 ルーカスが功績を上げすぎという話らしい。


 これまで疫病を終息させたり、魔術薬や魔導具の部品を毎年納品したりと貢献してきた。

 ボランティアでこの辺の疫病を終息させた時には、その功績に報いる対価として、男爵位の叙爵を国王に上申すると領主に言われたが断った。


 初回の言い訳は、アデーレ代官の伯父と同じ爵位になっては伯父の面子を潰しかねない。

 領政にも良くない影響を及ぼしかねないという内容。

 しかし、当の伯父が「そんなことは微塵もありません」と領主に言ったもんだから、落としどころとして領主家のお抱え錬金術師になった。


 二回目は、領主から「こういう魔導具の、こういう部品を造れるか」と尋ねられ、「素材を取り寄せてくれるなら」と答え、ソッコーで届いた素材を使って部品を造り納品した。

 その部品、実は宮廷が数年間も頭を抱えていた悩みの種だったらしく、領主経由で国王直臣としての叙爵を打信されたが断った。


 言い訳は、叙爵後の官職が王都の医薬品研究所の所長だったので、「大恩ある領主様のお抱え錬金術師として、ローメンスを離れるは不義理」というもの。

 領主も腕利きのルーカスを国に取られるのが嫌だったようで、「何卒ご容赦を」と国王に直接伝えて難を逃れた。


 そして今回、思い出しただけで疲れる量の各種魔術薬をごっそり納品したため、宮廷も領主も「さすがに叙爵せんわけにはいかんだろう」という流れになる。

 というか、すでにそんな話になっているだろうと。


「領主の思惑は理解できるけど、魔術薬は戦争やってる領地からの注文だろ? 宮廷を経由しただけで宮廷自体は関係なくね?」

「ローメンス東部も戦地だよ。春になると東部辺境伯様と連帯して侵攻を食い止めてるの。今年の魔術薬は低級でもすごい効き目だから、圧勝して隣国の土地を切り取るんじゃないかって職長が言ってた。イオリたちが作ったからだね」


 う~む、ルーカスが偉くなるのは構わんけど、アデーレ在住ならっていう但し書きが付く。

 にしても、意外と近くで戦争やってる。


 話の内容からして、領主の辺境伯は北部辺境伯って感じだな。

 少しは地理とか知っとくべきかも。

 考えてみれば、この国の名前すら知らんというね。


「ルーカスの分も昼メシ作って持って行くか。あいつ大豆バーばっか食ってるし」

「あれもルーカスさんの考案品だよ。王国軍の野戦食になってるの。戦士ギルドと魔術師ギルドでも売ってるんだよ」

「あいつどんだけ稼いでんの」

「すっごく稼いでる」(笑)

「爵位のない独身貴族か」

「あはは、上手いこと言うね」


 昼メシを作りに寝室を出ると、リビングでは生理用品検討会がまだ続いていた。

 形はこうだとか、漏れない蒸れないシートは必須だとか。


「よくそんなに話すことがあるな?」

「センパイそれセクハラ。センパイも月イチで流血すれば分かる」

「ごめんなさい。いやマジで」

「ココアは絵が上手いんだね!」

「小っちゃい頃からお絵描き好きなの。ほら、どお?」

「私だ! すごーい! 私ってこんな顔なんだあ!」

「はい鏡。見比べてみ」

「わぁ似てる! 私にそっくりだよ!」


 こっちならココアは絵で食っていけそうだ。

 あのルーカスが自分の肖像画を飾ってるくらいだから、需要はあると思う。


「これセンパイ。筋肉の質感と陰影を頑張ってみた」

「模擬戦の時のイオくん?」

「そそ」

「見切れてるのはガンドウさんだね。実に上手いよ」

「ねえココア、それ欲しい」

「いやいやいや、せめて服着てるのにしてくんない?」

「やだ。イオリの体好きだもん」

「せめて筋肉って言ぇえええええ!」

「センパイ全部脱いで描かせろ早よ」

「ドアホか!」


 アホはほっといて、昼メシはリベンジパスタだ。


 前回は生地を寝かさなかったこともさることながら、太さも良くなかった。

 そこで、テレビで見た蕎麦を切る時に乗せる板を用意している。

 やったことないから上手くいくかは分からないが、前回よりはマシになるはず、きっと。


 クリーム系ソースにすればフィットチーネってことで丸く収まりそうだが、そこはチャレンジングスピリットの問題だ。


 ソースはオイルソースを作って、ルーカスん家で茹でて仕上げよう。

 オリーブオイルは未発見だから植物油。

 具材はニンニク、鷹の爪の三倍はあるデカい唐辛子、アンチョビの代用で塩漬け魚のフレーク、これがキャベツじゃなかったら暴れるレベルのキャベツ。


 味変用に「デカいけど柚子? 柚子だよね?」って柑橘をカットして添えようと思う。

 白ワインに合うこと山の如しである。


 何気に卵が高級品なのでパスタのコスパは良くないが、混ぜて捏ねて暫く寝かせ、麺棒だと言い張ってる棒で伸ばす。

 武器屋で買ったから棍なのだが。


「あー、これナイフの問題もあるわ。パスタマシーン造れねえかな」


 ザクザクと真上から切りたいのに、板厚でナイフの高さが足りずカッターで引き切るような感じになってしまう。

 リベンジ失敗を認めよう。


 ソースを鍋ごと持ってルーカスん家へ行くと、玄関を開けたルーカスは半目だったが、ソース鍋から漂う匂いで薄い笑顔を浮かべ機嫌が直った。


「美味。ワインとの相性も秀逸」

「もっと美味そうに言え。食レポ一回でクビだ」


 食べながら前振りでアパートや一軒家の話をして本題に入る。


「俺らが出来る仕事って毎月あんの?」

「収入の安定化か」

「それ」


 予想したとおり、魔術薬は春から晩夏の季節戦争が終わった後に消費数を調べ、早くとも六月にならないと来年分の補充数量は出てこない。

 つまり、一月から五月は閑散期ということだ。


「年明けに話すつもりだったが、魔導具や魔導器を造るか?」

「実際んとこどんな部品造ってんの」

「部品ではなく完成品の話をしている。術式修得は必須だが、魔導製品を製作できれば通年で仕事が切れることはない。租税は高いが利益も大きい」


 これまでは独りで全部やっていたので、部品ベースの仕事しか受けていなかったそうだ。

 魔導製品は貴族ご用達の贅沢品なので、課税率は五割と高い。

 しかし卸単価が優に百万シリンを超えるため、必要な術式について修学し修得すれば、手取り月額が百万シリンを超えるのは必然だ、と。


「やらない選択肢はないんじゃね?」

「「うん」」

「修学は望むところです」

「いいだろう。魔術師ギルドで現在開かれている基礎講座に参加せよ」

「「はい!」」

「「えぇ…」」


 俺とココアは落ちこぼれるかもしれない。



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