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意外とイケてる錬金パーティー  作者: TAIRA
第2章:新生活編

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17/61

16:修練の始まり



「うわー、みんなの魔力すごいねー」


 残業を終え帰ってきた早々に、リリがそう宣った。


 ココアたちが循環を止めてスバっとリリへ目を向ける。

 薄々そんな気はしてたので俺は継続。

 もうちょっとでコツを掴めそうな気がしてるのだよ。気のせいかもしれないけどな!


「リリって人の魔力が分かるの?」

「うん」

「リリさんが獣人種だからでしょうか?」

「ちょっと違うかな」


 循環に集中したいんだが聞きたい。ながらチャレンジ。


 獣人種は総じて五感が鋭いため、体内魔力の操作には長けている。

 しかし、五感が鋭いからこそ気配の察知に意識を持っていかれる。


 魔力感知も立派な操作技能の一つなので、気配の察知に長けた獣人が、魔力感知の修練に傾倒することは殆どない、と。


「リリさんはなぜ魔力感知の修練をしたんです?」

「してないよ。私は生まれつき感じるの。血統継承技能って呼ばれてるね」

「それって白ネコだから?」

「んー、ココアは獣人の国を知ってる? 私の故郷がある国」

「知らない」

「ベスティア獣王国っていうだけど、ベスティアだと私は白亜族で、猫人族とは別種なんだよ。白亜は私と私の家族と、元婚約者とその家族しかいないの」


 シェインは同族だったのか。血の繋がりまでありそう。

 なんにしてもリリは血統書付き……んや、スペシャルな血統書付きだ。


 精霊祭で猫人のグループを見た時、リリは違うなと思いはした。

 七人いたがリリのようなさらさらヘアーじゃなく、ケモミミも形と長さが違った。


 目の構造と色も違う。

 リリの目の構造は俺たちと変わらないが、猫人たちはがっつり縦に割れた鋭い目。

 言うたら爬虫類に多いような目。


 目の色に至っては「別種」の言葉どおりで、猫人たちは琥珀色。

 一方のリリはすごく不思議で綺麗な色だ。

 言葉にするのは難しいんだが、強いて言うなら、鮮やかで澄んだ青瑪瑙に、明るい翡翠を散りばめたような……


 やっぱ難しいんだが、青い宇宙で小さな翡翠の星々が煌めいている感じ。

 見つめられると怖いくらい美しくて鳥肌が立つ。


(あーもークソ! ……おっ? おぉ!? 流れた!)


 ルーカスからは、『無意識的な常時循環ができて及第』と言われている。

 循環は魔力を体内の魔力路に整流させる操作で、血管を流れる血液のイメージと同じでいいと言われた。


 だがしかし、心臓みたいな自律ポンプがあるわけじゃないので、意識を集中して流さないとすぐ止まる。

 循環が基本といわれる理由は、循環していないと魔力を物質や術式に流し込む行為ができないから。

 ルーカスは魔術発動体を実用例に挙げていたが、たぶん魔法使いの杖みたいなもんだろう。


 片やで奥義といわれる理由は、継続的な循環が体内の魔力路を分岐・延伸させ、あらゆる操作を可能とする基盤になるからだと。


 俺たちの魔力路を血管に見立てると、今は二本の太い血管しかないような状態らしい。

 循環すると経時的に魔力路が分岐・延伸し、最終的には毛細血管も斯くやと全身を網羅するそうだ。


 で、この半日ずっと苦労していたのは、頭部への循環だ。

 おそらく脳だと思うんだが、「ふぬぬぬ!」と気張っても流れてくれなかった。

 が、やっと頭へ流れてくれた。


(意識感応なんちゃらって、こういうことか。もっと詳しく言えっての)


 流れろ流れろと意識することで循環していたが、「流れろ」という意識を魔力に込めるというか乗せるというか、それがコツなんだろう。

 つい今しがた、俺は「リリにお帰り言いたいから早よ流れろや!」と魔力に悪態をついた。

 そしたら首から上に流れた。だったら…


(おい魔力! 体中をずっと流れてろ! ………よし!)


 ブレイクスルーした後で考えると、実にシンプルだ。

 そもそもの話、意識しないと循環できないなら、『無意識的な常時循環ができて及第』なんて言うはずがない。

 これ、意識を込めるとか乗せるって言うべきだ。

 意識感応なんちゃらにしても、意識便乗OKエネルギーとかの方が俺には分かりやすい。


「お疲れさん、お帰り」

「イオリ~♪ ん? あれ? あれあれ? もう喋りながらでも循環できるの?」

「にゃっ!?」

「うそ!?」

「またしても!?」

「ふっふっふっ、リリのイオリはすげぇだろ?」

「私のイオリはすごーい♥」

「その辺にいる三匹の有象無象とは違うのだよ! 有象無象とは!」

「二回言うなし!」

「悔しい…!」

「負けていられません!」

「ふふっ、じゃあイオリは夕食作るの手伝って?」

「はいよ。あぁそうだ、有象無象どもは精進するがいい!」

「「「くぅ…!」」」


 乾燥パスタはないが生パスタらしき麺は存在するので、リリがニンニク入りフレッシュトマトソースを作る間に、俺が黄色い小麦粉を捏ねて伸ばして切った。

 茹でたら黄色いうどんになった。これ茹ですぎもあるな。


「もちもちして美味しいよ?」

「マジで言ってる?」

「うん。愛情補正なしで美味しい」

「んじゃいっか。付け合わせは俺にお任せで」

「なに作るの?」

「屋台メシの付け合わせだったやつのアレンジ」


 塩漬けにして干した白身魚をゴリゴリ削るように切る。

 ざく切りにした野菜を茹で、歯ごたえが残るくらいで軽く湯切りしてボウルに放り込み、魚も放り込む。

 それを和えるように混ぜ続けると、干し魚が湯を吸って柔らかくなりつつ、野菜に塩味を纏わせる。

 そこに香草オイル漬けの茹で豆を投入する。小さめのダイスに切ったセミハードチーズも投入する。

 最後にワインビネガーをほんの気持ちと、ネーブルオレンジっぽい柑橘の果肉を薄切りにして混ぜ合わせれば出来上がり。


「美味しそう…色もキレイ」

「味見する?」

「する! あむ。(もぐもぐ)んん!? 美味しい! これ好き!」

「そりゃよかった」


 晩メシは皆にも好評だった。

 うどんパスタは個人的に納得いかないのでリトライが必要だ。

 偏食で魚嫌いだったココアも、あからさまに好き嫌いをせず食べるようになっていて、付け合わせも美味い美味いと食ってくれた。


 屋台の付け合わせは野菜と魚だけの塩味だったが、豆を入れれば食べ応えが増すし、チーズを入れればこってり感がでる。

 ビネガーを加えれば食欲を刺激するし、オレンジの微かな甘味が全体を調和させ、最後に爽やかな香りが鼻を抜ける。


 我ながら良い出来栄えだと思うし、白ワインとも合う。

 白ワインが好きなもんで、俺が作れる料理は白に合う物が多い。もちろん白猫も大好きだ。


 空腹感が消えた頃合いになると、首から上への循環について質問責めが始まった。

 ルーカス曰く「操作技能は五十種近くある」とのことなので、安易にコツを教えてしまうと、また壁にぶち当たった時のために良くない。と、食卓では言い放って晩メシを終えた。


「三人とも首から上のことだと思ってるよ? いつ教えるの?」

「あら、お見通し?」

「イオリは優しいもん」

「ココアには寝る時に教える」

「恋人贔屓だ」(笑)

「当然だし必要だろ?」

「うん、そういうイオリが大好き。ユウトとカノンは?」

「最短でもあと三日は何も教えない。あいつら頭脳派なもんだから、実技の試行錯誤に慣れてないっぽいんだ。理論と実技は別物なことが多い」

「あ~、魔術研究の学術者と、実戦魔術師の折り合いがつかないやつだぁ」

「それそれ。世の中って理屈どおりにいかないことばっかだ」


 そんなこんなでパジャマ?に着替えてベッドに入り、ココアにコツを教えた。

 すると、


「あ、できた」(笑)


 ものの五分十分でこれだ。リリの寝つきは秒だが。


 ココアは適応力が高い。

 自分の考えを取り敢えず捨ててみることに躊躇がないというか、何でも試して選び出すのが上手いというか。


「おめでとう」

「ありがとセンパイ。お礼に揉んどく?」(笑)

「それだけじゃ済まなくなるから死力を尽くして遠慮する」

「正直者だ(大切にしてくれてありがとセンパイ)」

「さて寝るか」

「うん、おやすみセンパイ。大好き♥」

「おやすみココア」


 言葉で返すのが恥ずかったから、抱き寄せてキスをした。

 キスもやり過ぎると止まらなくなるので要注意だ。

 世の中には幸せな苦行も存在する。




 明けて翌日。


「イオリはまだ解かるがココアまでとはな。どんな魔術を使ったのだ」

「すごいなぁ…どうしても首から上に流れない…」

「僕もです…」

「私が呆れているのは、二人が常時循環まで修得したことだ」

「「えぇっ!?」」

「オ~ホホホホッ! ひれ伏すがいい愚民ども!」

「それ言いすぎじゃね?」

「そ? んじゃブタども?」

「今日中に後ろから刺されっぞ?」

「川瀬さんとか、川瀬さんとか、川瀬さんに?」

「怖い物知らずだな煽り女王様」

「私刺したりしないよ。たぶん…」

「「「!?」」」


 カノンの殺意を垣間見た五日後、ユウトとカノンも常時循環をマスターした。

 コツを教えたのは、上から目線絶好調でマウントを取ったココアだ。



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