花見編 秩父宮記念公園夜桜 〜願わくは〇〇に包まれ春死なん〜
陽光の下の桜もいいが、ライトアップされた夜桜もまた格別である。県東部で有名な名所を訪れた。
月が変わり4月3日、御殿場市にある秩父宮記念公園へ夜桜見学に出かけた。この公園にはたくさんのソメイヨシノの他、豪華な枝垂れ桜の大樹が数本ある名所である。嬉しいことに、この公園前の駐車場は、毎年このライトアップ中、無料開放される。
無料駐車場にクルマを停め、まずは、公園前を通る沿道の桜並木を観て回った。クルマのラジオで今夜は満月だと言っていた。見上げると清々しい満月が、我々を照らしていた。
「桜と満月と言えば、『願わくは花の下にて春死なむその如月の望月のころ』という西行の辞世の句を思い出すな。」
と言うと、家人は、
「私の旧姓ね。」
とトンチンカンなことを言った。
姥桜 望月のころ 花盛り
沿道をUターンして公園に入った。暗い足元を照らす行燈が道の両端に点々と置かれた小道を行くと、せっかくの結界を無粋にも掻き消してしまう売店があり、その中を通り抜けるとたくさんの桜の木々がライトアップされていた。
下からのライトアップに照らされた桜は、何とも言えない幻想的な絵画のような……などと陳腐な言葉でしか表現できないほどのため息が漏れる光景が、漆黒の闇に浮かび上がっていた。
園内の奥に進むと、古民家を包み込むように桜の2本の大樹が左右に咲き誇っていた。これほどの老大樹は、そんじょそこらでは拝められない。さすが、宮様由来の公園である。手入れが行き届いているのだ。
願わくは 古家になりたい 両手に花
いつお迎えが来るか分からないが、こんな最期を迎えたいものである。姥桜もいいが、願わくは、あの双子アイドルがいいな……と鼻の下を伸ばしながら妄想していると、桜の根っこに足を取られ、足首を捻ってしまった。
望月姓は、全国的には珍しい姓らしいが、私の地域では、鈴木や佐藤よりもありふれた姓である。私が中学生の時、なんとクラスの半数近くが望月姓だったほどだ。




