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078-(231) 契約破棄

 それからどのくらい経ったのか解らない。


 不意に天津が起き出したので眠気眼で見つめた。


 その手には黄色の矢文がある。

 いつの間にか市原先生から矢文が届けられていた。


 しかしながら、その中身はかなり深刻で。


 聖地が途絶えた(守護神が死んだ)ものの、属性神はギリギリで地界に生還したらしい。

 だが、市原先生自身は東都の黒い結界によって遮られてこちらに戻ることが困難になったことと、矢文の最後に記載されていた時間からして4時間程の差が矢文に生まれていたことを知った。


「ゆっくりと寝ている時間も与えては頂けないのですね」

「……遅延があるくらいだから、市原先生はここに戻れないと思っていいよね?」

「えぇ。そして恐らく属性神の4人もこちら側にはまだ居るでしょう。ただ、一度美島市に戻ると言っていた蓮君と雷神が気になりますが」


 以前、黒い結界にヒビを入れていた者が居る。

 もしかしたら死神には裏技があるのかもしれない。


「市原先生に矢文、送れる?」

「えぇ、多分」

「じゃぁ、……これを」


 天津は察してか紙とペンを渡してきた。なのでさらさらと書き込む。


 それを読んだ天津は失笑していた。

 しかし、すぐに折り畳んで矢に乗せて飛ばしてくれる。


 秘密部屋を出て、天津はその部屋を数珠のような魔法石の連なりに封印した。

 もう二度と戻って来れないことを悲しみながらも、瓦礫の影に隠れるように移動を開始する。




 誰も居ない、破壊され尽した東都。

 それは、何度も見て来た景色のはずだった。


 だけど、今回は本当に最後なのだと、底の無い穴を見て悟った。

 その穴には輪廻の合間に見た黒い空気が淀んでいた。


 これに吸い込まれたら無が待っている。

 肉体や精神などという概念は消失し、ただただ、黒い世界を漂うだけの存在に成り果てる。


 そこには何もない。

 そこには感情や記憶すら持ち込めない。




 章二の元に辿り着いた時、そこに花菜子と黄の姿は無かった。


 しかし、そこにはもう、話しが出来る状態の章二は存在しなかった。

 今、章二は真っ白の半透明の繭に包まれて幸せそうに眠っている。


 私はその白い繭が強靭であることを()()()()()

 だから必死に割ろうとする天津を制止させる。


「何で……、何で、章二さんがっ?!」

「選ばれてしまったのだから仕方ない」

「選ばれる? 一体何を……」


 白い繭は天界と地界を均等にする為に精霊が生物に張る結界、と解釈している。

 人間も妖怪も植物も関係なく、生物であれば何でも候補に挙がる。


 そして、これに包まれた者は精霊として生まれ変わる。

 要は精霊の卵のようなモノ。だから割れば中の者は死ぬ。


 しかし、その解釈を天津に伝えることは出来なかった。


 その間に見つけた花菜子からの手紙には、逆にこの事象のお陰で章二が狙われなくなった旨が書かれてある。

 そして、属性神に助太刀する為にも里の主の居場所に穴を空けなくてはならない、とも。


「居場所が判明したようですね」

「とりあえず花菜子達と合流しようか」

「……いえ。彼女との合流は私だけで良いでしょう」


 天津は答え、私に手を伸ばす。


「最初は貴方を利用しようとして契約をしました。ですが、今は私が利用されてしまっています。このままでは、私は転生する魔力まで失うことでしょう。ですから、契約を破棄して下さい」

「じゃぁ、破棄で」


 私は天津の手を握り返した。

 瞬時に破棄される。


 だけど、それには天津が驚いていた。


 今のは天津なりの嘘だろう。

 勝手に契約をした天津に、本来だったら私は怒るべきだったのかもしれない。


 だけど、違う。


 天津は本来の役目を全うする為に私を助け続けた。

 そして、私をその役目に巻き込まない為に破棄させた。


 今の天津の金色の目がそれを物語っている。


「合流が天津だけで良いなら、私はどうしたら良い?」

「雷神と合流して下さい。蓮君と共に東都までは戻って来るでしょう。ですが、恐らく道中で別れると思われますので、貴方には雷神を守って頂きたいのです」


 里の主の居場所が解り、女神と鬼神の元に天津と蓮が合流する、ということだろうか。

 確かに、そう捉えたら雷神が、遠音が余ってしまう。


 だが、同じ場所に向かうのに、わざわざ別れる必要があるというのだろうか。

 だとすれば、それは四大神が集結するということだろう。


 そこに天津も向かうのだから、理由に答えは出ているようなもので。


「了解。雷神と合流したら一緒に向かえば良い?」

「えぇ。ですが、今の貴方も無理は禁物です。もしトラブルが起きて合流出来ないようであれば、雷神を残してでもこちらに合流して下さい」


 天津はそう言って私の手を離した。

 少し名残惜しい気もするが、この状況では我儘すら言えない。


「解ったわ。……天津、」


 私に背を向けた天津を呼び止めた。

 天津が振り返る。


「絶対に死なないで」


 私は敢えて天津に背を向けてから言った。

 だから天津がどんな顔をしたのか解らない。


 だけど、多分それで良かったのだと思う。


 私は天津を残し、そのまま美島市の方角へと飛び立った。


次話は4日後くらいの投稿になります。


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