069-000 死別(閑話)
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彼女の背中が見えた。
でも、その背はかなり遠い場所にある。
何となく、もう会えないのだと悟った。
『完璧な力はどこにもない。
努力しても、結局は1人で出来ることは限られるのだと思う。
それが理解できた。
だからもう、過去の私には戻れない。
私は、先に進む。
そして、今度は仲間と一緒に奇跡を起こす。
今の私には、貴方に比べたら力を合わせられる相手は少ない。
でも、貴方が守ろうとした絆は、世界という形でまだ残っている。
例え貴方の知らない物語になったとしても、それが未来なんだと思う』
振り向かない彼女の背に言った。
彼女が奥へと歩み出す。
『私、頑張るから! だから、今までとは違う私を見ていて!!』
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目を覚ました。どうやら夢だったらしい。目からは自然と涙がポロポロと溢れていた。
「・・・」
彼女との細かった線は既に消えていた。
でも、彼女が繋げてくれたいくつもの線は続いている。
その内の、黄緑色の細い線で繋がった相手が言った。
「末娘を守ってくれて、ありがとう」
「(どういたしまして)」
章二は無事に目覚めてくれたらしい。
しかし、その返答は心の中に留めた。
彼女は絆という線を結んだ相手を助けたかった訳じゃない。
その線こそが自分が生きている証だった。
だから多くの、自分に繋がれた線を守る為に行動した。
それが結果的に人助けに繋がった。
花菜子は私にとっても大切な友人。
彼女のことを花菜子が不審に感じていたのは、彼女の目的が人情からきているモノでは無かったから。
しかし、彼女自身に人情が全く無かった訳ではない。
ただ、少なくても適度な危険から自身を守る手段を持つ相手は突き放した。
それは線を失う危険が無いから――つまりは相手を信頼していたから。
「貴方がまた幻影を潰してくれたのですね」
天津のやんわりとした声がした。
すぐ近くに居たことは解っている。
でも、何かをしていた様子だから声はかけなかった。
しかし、花菜子と繋がれた黄色の線は段々と細くなっている。
それは章二と花菜子の間にある桜色の線も同じだった。




