表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/80

058-000 引き継いだ記憶

 説明には時間がかかった。


 でも、最後まで聞いてくれた2人は、どこか納得した表情をしていたと思う。

 ただ、如月が死んでいた事実は知らなかったらしい。


「やっぱ、咲九は最後まで保たへんかったか」

「この8月を乗り切れたこと、数回しかなかったからねぇ」


 しかし、2人の感想はあっさりしていた。

 もっとも、アコが如月の死の予知を知っていたくらいだから、仲の良かった花菜子にも予知は知らされていたのだとは思う。


 ただ、章二は予想外だった。

 正直、まだ章二という相手だけは信用していない。


「花菜子は、結局どっちの味方だったの?」

「どっちでもあらへんよ」


 即答した花菜子は呑気に大欠伸をする。


「咲九でも、里の主でものうない。ウチはまた別の勢力」

「勢力ってことは、まだ他にメンバーが居るってこと?」

「せやね。でも、ウチと神主は協力関係にあるけど、勢力と一括りにするんは少しちゃう」

「じゃぁ、如月とはどんな関係?」


「花菜子」


 急に神主がキツイ口調で言った。

 途端、私にもそのピリピリした空気が伝わって来る。


 どうやら神社の周囲を黒い面に囲われているらしい。


「はぁ。こうも毎日、集団で来られるとやんなるわぁ」


 答えた花菜子は歩いて部屋から離れて行った。


 私も立ち上がろうとし、ふらついて布団の上に戻る。

 それを章二は見ていたらしく、襖をぴしゃりと閉めていた。


「まだ本調子に戻るまで時間がかかると思う。外のことは花菜子1人で大丈夫だから、君はもう少し休んだ方が良い」

「でも……」

「それに、君も今までに一度しか今日を過ごせていない、謂わばイレギュラーだと思う。そもそも、君がここに来て齎した情報も、本来は数日後に知ることだと思う。だから、これから何が起こり、何が変わっていくのか。それは私でも解らない」


 章二の言葉に嘘は無さそうだった。

 しかし、1点だけ間違いがある。


「8月中に死んだのは1回だけ。それ以外の時は、既にお父さん ―― 章一の手元に居たから、貴方や花菜子に会うことが無かっただけ」


 私の返答に章二が目を丸くした。


「多分、如月が乗り切れた時は如月が密かに輪廻を起こした時だと思う。何回か、私の輪廻ではないことがあったから。でも、1度ではなく数十回、それも20回は超えていると思う」

「・・・」


 章二は黙った。

 そして、何かを考えながら言葉を紡ぐ。


「君は、一体どこまで知っているんだい?」


 私は答える。


「多分、ほとんど全てを」

「……はぁ。これは、参ったねぇ」


 答えた章二は頭を掻く。


「じゃぁ、君はこれから地界で何が起こるのか、解る?」


 脳裏に過ったのは遊園地だった。

 その次に、濃霧。

 最後には街から人が消え、地界よりも巨大な黒い結界によって崩壊する。


 何度も見て来た光景だけに、悪夢になるほど鮮明に残っていた。


 口を開こうとして章二に手で止められる。


「その表情を見れば解るよ。ただ、君に1つだけ忠告しておく。花菜子はまだ、私との関係を知らない。龍子……君にとっては黄かな。彼女との関係も教えていない。だから、私が話すまで花菜子には何も教えないで欲しい」

「それは、魔力暴走を引き起こすから?」

「いや。……正直に言えば、花菜子には何も知らないでいて欲しい」


 意外な言葉に私は首を傾げた。


 章二はどこか悲しそうな表情を見せる。

 きっと複雑で悲しい事情があって言いにくいのかもしれない。


 私は花びらの記憶から知ってしまったけど、もしも花菜子が知りたいと思っていないなら、無理に知る必要はないのかもしれない。


******************************


 悪属性はただの呪い。

 世界の加護と呼ばれる現象だって初期の呪いから生まれたもの。


 本当は一括りにしてはならない事象なのに、誰もその事実に気付かない。

 ……いや、気付かれないように複数の意思が世界を染めている。


 それが今回の世界ならば、私は敢えて受け入れよう。


******************************


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ