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051-000 対立

 核融合炉を内側から破壊した者など、今まで居なかったことだろう。

 五体満足で現れた私に、里の主の下っ端が右往左往してしまっていた。


 もっとも、今の私には里の主に興味のかけらもない。

 ただ、核融合炉で起きていた事実を突き付ける為に、下っ端を気絶させて里の主の元へと歩んだ。


 道は、なんとなく解っていた。

 だから路地を難なく抜けて、早くも里の主の部屋に()()()()辿り着く。


 だが、運悪く鬼の面が傍に居た。

 私に気付いた鬼の面が襲い掛かって来る。


 胸倉を掴まれたが、その手を掴んで相手の背後に回し、もう片手で腹部を強く殴る。

 ただ、それだけで相手は隅に寄ってくれた。


 部屋では、振り向いた里の主が私を見つめていた。

 その手前まで進んでから言う。


『運命の輪、つまり転生を冒涜する行為。それが此度の輪廻』


 輪廻する方法はいくつか存在する。

 その中の1つが、私自身。


 本来の私は()()のクローンとして誕生した。

 だけど、それをお父さん、否、羽生 章一(はにゅうしょういち)を騙る悪神が、輪廻を引き起こす神器を利用して魔物化させた。そして私の核を分割し、必ず1人は傍に置いた。

 それは輪廻したい時になったら私を利用する為に。


 輪廻の神器がどのように生まれたのかは知らない。

 だけど、転生を無視した行為によって地界の寿命はとうに尽きていた。


 本来であれば、その時点で属性神の核も一緒に尽きているはずだった。


 ところが、もう1つの方法である、如月家の禁術に当たる輪廻の力が合間に働いていたからこそ尽きることはなかった。

 如月家の輪廻だと、特別な神器や特別な結界に保管されている核には影響が出ない。だから、悪神に捕らえられてしまった四大神と違い、神器や結界に保管された属性神の核の欠片は守られていた。


 しかし、そのことが里の主の大きな誤算に繋がった。

 四大神ではなく属性神こそが最高の神で、その全てを集めれば神の王になれる、と思い込んでしまった。


『生じた誤差が、まさかここまで大きくなるなんて、ね?』


 私の問いかけに里の主が鼻で笑う。


『何のことだ?』


 如月家の輪廻によって分割した核が ―― 私達が自我を持った。

 そして1つに戻されたくないと何千回も願った結果、分割した核が新たな核として独立してしまった。


 その影響は次第に輪廻をただの繰り返しではなくしていった。

 つまり、1つに戻れなくなった影響で、逆に里の主と私は本来持っていた核の能力を失った。


 しかし、私自身が輪廻であったが為に、又はお父さんに呼び戻されて集合していた過去があったが為に、悪神(さとのぬし)ほど大きな損失は生まれなかった。


『貴方の夢は、何?』


 私は金色の目で訊ねた。

 里の主は黙る。


 もっとも、里の主の夢は最初から潰えている。


 神々に王は存在しない。

 神は願いから事象を生み出す能力があっても、世界を統治する能力までは持ち合わせていない。


 相手を思いやる心が無いのは、そういう感情が芽生えてしまうと願いを均等に叶えることが出来なくなってしまうから。

 そして神々を統治する者がいないのは、敢えて作らないことで自由化し、神の事象がいくつか重なることで奇跡を起こしている為。


 神々を統治する者が現れたら、人間の願う奇跡は起こらなくなる。


『まぁ、答えなくてもいいや。1つだけ伝えておこうと思ってきただけだから』


 里の主はただただ黙っていた。


 私に対する殺意はほとんどない。

 それは、私が里の主よりも巨大なオーラを纏っている所為で、処分すべきか、取り込むべきか、悩んでいるからだとは思う。


『炉があったお陰で私は生き伸びた。正直、感謝はしている。でも、それは私に記憶を保持してくれていた別の存在があったから。私はその者の為に余生を過ごしたいと考えている。このまま私を見逃してくれるなら、何もせずに立ち去るわ』


 これは、一種の交渉に近いのかもしれない。いや、脅迫だったかもしれない。

 どちらにしても、里の主の今の悩みは無駄ということを伝えたかった。


 実際、目の前の里の主を私が処分したところで、現在、本物の肉体ではない里の主には痛くも痒くもないだろう。

 それに、今のこの肉体は純の兄・千秋さんのモノ。流石に私も手は出しにくい。


 ここで敵対関係になっておくよりは、私は無害なので気にしないで下さい、と伝えておいた方が動きやすくなると考えた。


 里の主も、流石に悩んではいたと思う。

 だが、最終的にはこちらの案に乗ったらしい。


『ならば、さっさと船を降りろ。目障りだ』

『えぇ、もちろん。でも、その前に寄る場所があるので。失礼』


 これには怪訝な表情をしていた、と思う。

 何もしないと言ったではないか、と。


 私は何もしない。するつもりもない。

 だけど、お世話になった方への挨拶は大切だと思ったから。


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