050-000 輪廻転生
どのくらい時間が経ったのか解らない。
私の周囲には花びらは全く残っていなかった。
代わりに、少し遠目にある最後の一枚だけは、私から向かわなくてはいけない気がした。
近付けば、意外と大きかった。
ゆっくりと手で触れてみる。
世界は何度も、何度も。
崩壊する度に、過去に戻った。
その狭間の記憶が、私の悪夢。
でも、悪夢は現実だった。
そして今回もまた、悪夢が現実になろうとしている。
そうならないように、如月家の血縁者はずっと世界を輪廻させることで守って来た。
しかし、輪廻という術には大きな代償を負わなくてはならない。
お父さんは、否、憑依している悪神はその代償を利用して世界を、社会を、強いては人間関係を疑心暗鬼や崩壊に導いた。
私や里の主という駒を使って。
だが、如月家は逆に修復しようと試みた。
修復といっても、既に壊れてしまった関係は戻らない。だから新しい関係を築かせるべく、妖怪という存在を利用した。
里の主や悪神がそちらに目を反らしている間に神々を味方につけ、里の主と悪神を世界から孤立化させることに成功した。
しかし、里の主が空間を創生し、悪神と共に閉じ籠ってしまった。
このことで情報を得られなくなった如月家は結果として勝負に踏み切れないまま時間だけが経過し、衰退していった。
もっとも、そんな過去を知ったところで今の私には関係がないこと。
消えゆく花びらの余韻を見守りながらも、私はゆっくりと思考を整理する。
花菜子も天津も、私が複数存在することを知っていた。
そして輪廻していることも、恐らくは知っていたのだろう。
しかし、誰も輪廻という単語は使わなかった。
いや、一度だけ花菜子が使っていた気もする。
だから、もしかしたら使わないようにしていたのかもしれない、と最初は考えた。しかし、そうだとすれば、何の為に、誰の為に使わなかったのか、という疑問が残る。
つまり、使わなかったのではなく、使えなかった。
里の主はあまり動かない。
守護神として里を守っているから、というのは言い訳で、実際には世界中に呪術を敷いている所為で動けないのではないか。
「まぁ、答えは本人達に聞きに行けば解決するか」
既に何も無くなった灰色の空間に呟いた。




