043-000 人形の記録①
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目を覚ませば、そこは教室だった。
誰も居ない教室に、私だけがポツンと1人きり。
ただ、日はまだ高く、明らかに夕方ではない。
何の為に学校に来たのか、思い出せることは何一つなかった。
校舎の中を歩けば、生徒こそ見かけたものの、友人までは見つけられず。
結局、ふらりと図書館までやって来ていた。
司書あたりとお話しできればいいか。
そんな気軽な感じで図書館の重い扉を押し開ける。
でも、顔馴染みの司書は誰も居なかった。
ふと、花菜子の気配を感じた私は奥へと進んだ。
花菜子も私に気付いたのか、まるで避けるかのように気配を薄くして逃げている。
それはまるで追いかけっこでもしているよう。
私は凄く、凄く興奮した!
熱中した!!
しかし、1時間もしない内に花菜子が立ち止まり、動かなくなる。
「もう終わり?」
私は姿を現して花菜子の前に出た。
でも、花菜子は黙ったまま手にした本に集中している。
私は迷わずその本を盗った。
「ねぇ、もう終わりなの?」
「ウチは暇やない」
「そう言わずに付き合ってよ」
私がいつも通りに肩を組もうとすると、花菜子は何故か数歩後退した。なので私の腕も空振りに終わる。
もっとも、嫌がっている相手にはしない。それが私のルール。
「図書館で静かに遊ぶんも、流石に気が引けただけ。周りを見れば解るで」
言われた通りに周囲を見た。
確かに、先程よりは生徒も増えた、気がする。
「本を読みに来たんとちゃうなら、ウチが読み終わるんを待って」
「えー」
流石に興が覚めた。
しかも、待たなければならないなんて。
「そんなの、嫌」
もっと花菜子と遊びたかった。
「追いかけっこで良いよ。やろうよ?」
「・・・」
花菜子が私を見つめたまま黙る。
でも、私も引かなかった。
「…… しゃあない」
「やった!」
「帰るわ」
その一言に私の思考が停止した。
「…… 帰る? 遊ぶんじゃなくて?」
「せや。家に帰る。遊ぶ気はあらへんで」
「何で?」
「人形と遊ぶんはもう卒業しとるん。今更、遊ぶ気はあらへん」
「…… ひどい」
「でも、校内やのうて帰路なら相手になったげる」
花菜子の失笑の意味は解らない。
でも、それだけでも嬉しかった私は一緒に帰ることにした。
帰路は、いつもと少し違っていた。
多分、人気が無いところを選んでいたのだと思う。
不意に花菜子が私を振り返ったので立ち止まれば、花菜子の手には真っ白の玉が握られていることに気付いた。
そして、花菜子が私の影を踏む。
影を踏まれてしまったら隠遁は出来ない。
「迷惑なんよ」
花菜子が玉を私の腹部に突き付けた。
そして、そこで白い鎌の形に変える。
鎌は私の腹部を破った。
青い血が制服に染みてきている。
「なん、で ……」
言葉が出しにくかった。
花菜子が苦虫を潰したような表情で私を見つめている。
「人形を減らしても、いつもなら涙も出ぇへんのに」
花菜子の口元はそう言っていた。
でも、花菜子の声を聞き取ることは出来なかった。
代わりに、花菜子の優しい手が、温かい手が私の手を覆ってくれる。
なんだろう。
それだけで満足だった。
その優しい手は、私を安心させてくれたから。
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