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043-000 人形の記録①

******************************


 目を覚ませば、そこは教室だった。

 誰も居ない教室に、私だけがポツンと1人きり。


 ただ、日はまだ高く、明らかに夕方ではない。


 何の為に学校に来たのか、思い出せることは何一つなかった。


 校舎の中を歩けば、生徒こそ見かけたものの、友人までは見つけられず。


 結局、ふらりと図書館までやって来ていた。


 司書あたりとお話しできればいいか。

 そんな気軽な感じで図書館の重い扉を押し開ける。


 でも、顔馴染みの司書は誰も居なかった。


 ふと、花菜子の気配を感じた私は奥へと進んだ。

 花菜子も私に気付いたのか、まるで避けるかのように気配を薄くして逃げている。


 それはまるで追いかけっこでもしているよう。


 私は凄く、凄く興奮した!

 熱中した!!


 しかし、1時間もしない内に花菜子が立ち止まり、動かなくなる。


「もう終わり?」


 私は姿を現して花菜子の前に出た。

 でも、花菜子は黙ったまま手にした本に集中している。


 私は迷わずその本を盗った。


「ねぇ、もう終わりなの?」

「ウチは暇やない」

「そう言わずに付き合ってよ」


 私がいつも通りに肩を組もうとすると、花菜子は何故か数歩後退した。なので私の腕も空振りに終わる。

 もっとも、嫌がっている相手にはしない。それが私のルール。


「図書館で静かに遊ぶんも、流石に気が引けただけ。周りを見れば解るで」


 言われた通りに周囲を見た。

 確かに、先程よりは生徒も増えた、気がする。


「本を読みに来たんとちゃうなら、ウチが読み終わるんを待って」

「えー」


 流石に興が覚めた。

 しかも、待たなければならないなんて。


「そんなの、嫌」


 もっと花菜子と遊びたかった。


「追いかけっこで良いよ。やろうよ?」

「・・・」


 花菜子が私を見つめたまま黙る。

 でも、私も引かなかった。


「…… しゃあない」

「やった!」

「帰るわ」


 その一言に私の思考が停止した。


「…… 帰る? 遊ぶんじゃなくて?」

「せや。家に帰る。遊ぶ気はあらへんで」

「何で?」

「人形と遊ぶんはもう卒業しとるん。今更、遊ぶ気はあらへん」

「…… ひどい」


「でも、校内やのうて帰路なら相手になったげる」


 花菜子の失笑の意味は解らない。

 でも、それだけでも嬉しかった私は一緒に帰ることにした。



 帰路は、いつもと少し違っていた。

 多分、人気が無いところを選んでいたのだと思う。


 不意に花菜子が私を振り返ったので立ち止まれば、花菜子の手には真っ白の玉が握られていることに気付いた。


 そして、花菜子が私の影を踏む。

 影を踏まれてしまったら隠遁は出来ない。


「迷惑なんよ」


 花菜子が玉を私の腹部に突き付けた。

 そして、そこで白い鎌の形に変える。


 鎌は私の腹部を破った。

 ()()()()制服に染みてきている。


「なん、で ……」


 言葉が出しにくかった。

 花菜子が苦虫を潰したような表情で私を見つめている。


「人形を減らしても、いつもなら涙も出ぇへんのに」


 花菜子の口元はそう言っていた。


 でも、花菜子の声を聞き取ることは出来なかった。

 代わりに、花菜子の優しい手が、温かい手が私の手を覆ってくれる。


 なんだろう。

 それだけで満足だった。


 その優しい手は、私を安心させてくれたから。


******************************


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