041-000 夢か現か⑧
水槽の中から呆然と眺めていた光景は、幼児のマネキンに穴の無い黒い面を張り付けている作業員の姿だった。黒く染まったマネキンは肌色に染められている。
それが私の肉体だった。
生まれたばかりの私は、まず最初に肉体を関節あたりで分割させられる。そして関節にあたる何かを取り付けられて自力で動けるようになる。
黒い面で強化される呪詛、つまり死神様の御言葉によって、私は任務を遂行する。
しかし、呪詛が強力過ぎると肉体が簡単に壊れてしまった。
呪詛によって壊れると、そこからどんどん、力が抜けだしてしまう。
そして力が無くなり切れば、黒い砂と化した。
だから、お父さんは壊れた私で実験をし続けた。
どうしたら壊れない肉体を作れるのか、と。
その実験最中は、凄く、凄く、痛みを感じた。
でも、その痛みは肉体的なモノではなかった、気がする。
だけど。
結局、私は壊れ続けた。
神器を分割して入れても、個々の能力は強化できても肉体は強化できなかった。
呪詛による肉体改造が始まったのは、最近のことではない。
―― でも、私だけが生き続けた。
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「おかえりなさい」
少女が私に言った。どこか安堵する自分が居る。
「でも、ここは何れ崩れ去る。世界の崩壊と共に」
またも少女の一言で悪夢を思い出す。ここの平穏は続かない。
「生き続けても、虚無だった。
空っぽのまま、生きてきた。
ねぇ、お願い。
どうしたら、黒く染まらないで生きられるの?
どうしたら、世界は救えるの?
お願い、教えて!!」
少女は少し驚いていたらしい。
でも、すぐに笑顔に戻った。
「じゃぁ、今度は私の鍵を使おうか?」
しかし、少女が手にしていた鍵は錆びていた。
それも、私の鍵以上に酷い錆び方をしている。
「ひいっ」
思わず少女の手を払う。
でも、少女はしっかりと鍵を握っていた。
「大丈夫」
もう片方の手で少女が私の手を握る。
その手の暖かさと、少女が何もしないことに安堵した。
だが、その隙に少女は鍵を私に突き刺す。
―― 生き続けることに疑問はなかった。
―― でも、私は怖かった。




