036-000 夢か現か⑥
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いつの間にか、クリーム色に輝く病院へと抜けていた。
すれ違うのは足すらない悪霊ばかり。
顔も鮮明ではないから解りにくかった。
でも、小児科の受付の前に居る桜色の髪の少女は私に微笑んでいる。
「貴方も無痛、なのでしょう?」
少女に言われ、私は頷く。
そう。私は何も感じない。
痛いと感じる、というよりは、剥き出しになった筋肉がスースーするから気持ち悪い、という方が正しい。
―― だけど、心が痛いのは感じられる。
「だから貴方もここに居られるのよ」
少女はそっと私に手を伸ばす。
その手を握った途端、私の視線はその少女と同じくらいに低くなっていた。
よく見れば、身長が縮んでいる。
「前に言ったでしょう? ここのこと、教えてあげるって。覚えてる?」
私は頭を横に振った。
でも、少女は微笑んでいた。
「ここは記憶の鳥籠。簡単に言えば、記憶が集まる病院よ」
「記憶が、集まる ……?」
「そう。全ての生物には目があるでしょう? その目に映ったことを全て記憶しておく場所なの」
理解に苦しんで蟀谷を押さえていた、と思う。
「案ずるより産むがやすし、ね。
看護師さん、私の1番と44番の鍵を頂戴」
しかし、その言葉を聞き終えた時には視界が真っ暗になってしまっていた。
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今更、過去の記憶なんて。
全てが死ぬなら意味がないこと。
――でも、知りたいと思う私もいる。




