033-077 自分か他人か③
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『たすけて!』
叫んでも、ここでは誰も来てくれない。
解っていた。
でも叫ぶことしか、思い付かなかった。
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死神様に命じられた気がして、目を覚ました。
そこは既に豪邸を見下ろせる建物の上。鬼の面を装着して立っていた。
豪邸は凄い勢いで燃え広がっている。
赤い特徴的な容器が目の端に映ったので事情は察した。
『豪邸に住む者は死神様に仇なす者。主は生かすな。必ず処分せよ』
鬼の面から聴こえた、死神様の御言葉。
死神様の言葉は絶対厳守。
私は気を引き締めて、黒い面が敵の処分に失敗した時の為に備える。
間もなくして、豪邸の扉からメイドらしき人物が飛び出して来た。
一斉に黒い面が襲撃するも、メイドが走りながら足で術式を描いていたらしい。その術式は黒い面をも弾く結界だったのか、火傷を負った黒い面が退避している。
その結界に続くようにして、少女とシェフ、数名の執事らしき人物と男性が出て来る。
もっとも、その男性も恐らくは執事の1人。同じような臭いがする。
だとすれば、この豪邸の主は少女ということだろう。
私はその少女に狙いを定めて降下する。
だが、少女もまた、私の存在に気付いて変身した。
少女はあの怪盗ホーリーだったらしい。
―― どおりで死神様が処分を命じた訳だ。
理解しながらも、その少女の喉元に黒い刃を突き付ける。
しかし、流石は怪盗ホーリー。喉元にあったアクセサリーを黒い刃にわざと斬らせ、その隙に空を飛ぶ術式を準備していたらしい。
上空へと舞い上がった少女は庭園の外灯で体勢を整え、飛ぶ術を修得していた一部の黒い面が集まるのを待ってから、更に違う方面へと飛んで行ってしまった。
しかし、一度狙いを付けた獲物を逃がす訳にはいかない。
少女の名前を思い出せなかったものの、顔は良く知っていた。
だから由縁がある場所を巡り、最も来る可能性がある所で待ち伏せする。
それは他の黒い面も同じだったのか、数名が私の傍に居た気はする。
そして、案の定。
のこのこやってきた少女に襲い掛かる。
少女が上空に逃げないように結界を張る者、式を利用して素早い動きを妨げようとする者、私のように傷を少しずつ入れて神経毒で鈍らせようとする者。
数でも術でも、こちらの方が上手だった。
—— もう少しで少女は動かなくなる。
そう感じた瞬間、目の端に白い毛が映った。
そして、自分の腹部に突き刺さる白い鎌が見えた。




