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021-052 水神と前半戦

 花菜子との関係が改善の兆しを見せないまま、校内の超能力者の頂点を決める大会の日を迎えてしまっていた。


 体操着や各種道着が多い中、千尋の青い巫女、香穂里の赤と黒の魔女の姿は凄く目立つ。

 ましてその2人が一緒に居れば、自然と周囲の視線を独占しているようなものだった。


 もっとも、花菜子も私も体操着で出場している。

 花菜子はそんな2人と火花を散らし合っていた。


 真夏日よりとはいかないまでも、そこそこ暑かったので購買部に寄ってから女子校側の闘技場へと向かう。


 去年、香穂里が結界どころか壁をも壊した中で、最も被害が大きかった場所。

 その影響か、今回の試合が終わったら一度、劣化した部分は解体されることになっているらしい。


「(まぁ、闘技場は男子校、女子校の間に位置する、中央校舎付近にもあるし。そっちの1ヶ所で開催にした方が移動しなくて楽だし、わざわざ沢山雇って結界師を3ヶ所に分ける必要もない、ってことなんだろうけど)」


 そう思いながらも闘技場の外側を一周してから受付に向かうと、一足先に千尋がチェックを受けているところだった。


「まさか、最初から千尋と当たるとは、ね」


 千尋が振り返って失笑をしていた。


 私の強さは、恐らく香穂里から聞かされたのだろう。

 近くに花菜子が居たことからも、まぁ確実に私の話題は出ていたはず。


 とはいえ、私も水神の強さは知らない。

 ここは素直にお手並み拝見と行きますか。


「ま、程々に宜しゅう」




 試合前の会場は内側の結界の外側までなら出ても良いらしく、素直に1周、観覧させてもらった。


 中央側の闘技場に比べたら半分くらいだろうか。

 正直、小さいと思った。


 昔ながらの煉瓦作りだから元々脆かったらしい。あちらこちら、ヒビも見受けられた。


「(去年はゆっくり見れずに試合しちゃったけど。能力者の攻撃に耐える程の強度は無さそう。ということは、旧校舎と同じで戦前からあった建物なのかも。これじゃぁ、あまり派手なことは出来ないな ……)」


 なんて考えていたら、不意に空気に乗って柔らかな香りが漂ってきた。

 青葉劇場の前で私を引き止めた、あの好青年の青い目を思い浮かべる。


 —— まさか近くに居る?


 迷わず振り返るものの、そこには対戦相手の控室があるだけ。

 気にはなったものの、下手に円術を使えば結界師に注意されると感じて使えなかった。




 試合が始まってすぐに、千尋が先制で攻撃を仕掛けて来た。

 もっとも、右手で前方に結界を張り、左手で水の槍を作成して突っ込んできただけだが。


 水神は水属性だろうとは思っていたが、水属性だけでは物理攻撃を仕掛けるには無理がある。


 実際、水の槍は私の右手で相殺し、千尋の左手をしっかりと掴めてしまっている。

 千尋が戦闘慣れをしていないことは明らかだった。


 能力者の能力は、修行で集中力を高められたら操縦はそこまで難しくない。

 ただ、戦闘となると話は別で、属性の特性をよく知っておかないと不利になる。


 千尋の扱う水属性は重さを利用して中距離から銃のように発射させた方が威力は上がる。

 もし、槍のように物理攻撃をするなら、氷属性を混ぜるか、冷気を付与して氷にさせないと、安易なオーラ程度で相殺出来てしまう。


 千尋が慌てて距離を保とうと後方に力が働いた。

 でも、解っていたから左手をしっかりと引き止めている。

 しかも、千尋は両利きとはいえ、左手を主に使う傾向があった。


 この左手を開放させる為なら結界を生み出して結界で私の右手を払うしかない。

 しかし、結界を生み出す方法は人によって異なる。

 それを間近で見られるということは、場合によっては弱点を晒すことにも繋がる。


 困惑したのか、千尋の動きが止まった。

 結界すら張らない無防備な千尋が目の前に居る。


 衝動的に、私の魔力を送り込みたくなった。

 魔力を蓄える器が他人の魔力によって崩壊した時、人間は悶え苦しんで黒い砂と化す。


 私は何度もその方法で "処分" を下している。

 つまり、今の千尋を殺すことは容易だった。


 だが、それでは面白くない。

 まして、ここは校内。


 そんなことをすれば退学どころか、お父さんのように犯罪者として世間から追われることになってしまう。

 それでは純を守れない。


 仕方ない。

 私は右手を軽く捻った。


 それだけで千尋が一回転して宙を舞い、地面に落ちる。

 受け身をとって、更に結界を張ればそこまで酷くはならない程度に、わざと弱めにしてあげた。


 もちろん、その一回転の間にも風で足に擦り傷を付けている。

 こうすれば、立ち上がれたとしても痛みから降参を促すことが出来ると考えて。


 しかし、その受け身さえも千尋はしていなかった。

 流石に溜め息をついて、少しだけ距離を()()()()()()


 さっきの相殺で2ポイント、今ので1ポイント。

 点数では先制をとった。


 もっとも、これ以上に痛めつけたら私の衝動が抑え切れなくなってしまう気がする。

 なので、冷静さを保てる間に終わらせることにした。


『つまらないなぁ』


 千尋に呟いた。

 やっと立ち上がって体勢を整えた千尋が私を見る。


 挑発する為に、わざと両腕を頭の後ろで組んでみた。


『水神ってそんなに弱いの?』


 これで襲い掛かって来るなら練習相手になってあげようと思った。

 だが、千尋は黙ったまま俯いてしまっている。


 嗚呼、これでは、ダメだ。

 自分が弱いと、何も出来ないと言っているようなもの。


 悟った私は左手の甲に術式をサッと描いて風を呼ぶ。


『(水属性は)使い方次第、じゃない?』


 千尋の属性は目に見える分、まだ解りやすい。

 その点、私の扱う風属性は目に見えるものではないから解りにくかった。

 でも、だからこそ想像力で補う必要があった。


 普段は外界で獲物を狙う時に使う巨大な弓を左手に生み出した。

 もっとも、今はそれを地面と平行に持っているので大きさは解りにくいかもしれない。

 実際に獲物に使用する時は、勢いをつける為にも後方に高く飛躍するか、木の枝の上から矢を放つ。


 でも、今は威嚇がメイン。

 だから風の矢を右手で生み出して千尋に向かって構えた。



******************************


 青い巫女が言う。

『弓矢がイメージにピッタリだったのよ』


 青い巫女が言う。

『私の大技。見せたんだから、貴方のも見せて』


 青い巫女が言う。

『自然を形に出来るし、それが武器になる』


******************************


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