第三話∶君の自業自得
【歩上花太郎】
咲子は僕にとって憧れの存在だった。
誰とでも上手くやれて、しかも自分のやりたいことをやっている。
それは自分を楽しんで生きているってことだと思う。
あんな風に僕もなれたら。
そう思っていたけど、段々と違和感に気付き始めた。
どうも咲子は歓迎されていない気がする。
みんな笑顔を取り繕って迎えはするけど、周りの口数が明らかに減っている。
どんなに盛り上がっていても、咲子が来ると空気がどこかシラケてしまう。
それで居づらくなるから別のグループに移動しているだけなんじゃないか?
人が楽しくやっているところに自分の都合で割って入って、台無しにして、次へ行く。
まるでイナゴみたいだ。
数日後、咲子はクラスにイジメられていると告発したらしい。
誰も自分と仲良くしようとしないって。
それって卑怯じゃないか。
いつだったか、小学生の僕はクラスでみんなに昨日あったおもしろトークを披露していた。
僕は笑えて息が出来なくなりながら必死に話して、僕以外の教室は静かだった。
それでハッキリ言う系の子に言われたんだ。
「本当に悪いんだけどさ、お前が話すといつも面白くなくなっちゃうんだよね。それ、多分普通に面白い話じゃん。勿体ないから一緒にいたマサヒロから聞きたかったな。」
存在を丸ごと否定された気がして僕は言い返そうとした。
でも残酷なことに彼の言ったことは一言一句正しかった。
他にも、早く喜んで欲しくて誕生日のサプライズを出会い頭にバラしたり、サッカーをすればオウンゴールをしたり、僕がポンコツだからみんなと上手くやれなかった。
そう、自業自得なんだ。
それなのに、咲子は求めるばかりで自分が奪っていることに目を向けていない。
わきまえてなきゃいけないことができていないから、みんなに余計拒まれる。
もしかして弱い立場からワガママを言えば逆らえないとでも高を括っているのか。
自分でなんとかする気もなく、自分を変えることもなく、他人になんとかしてもらうつもりしかない。
自業自得の外に居ようとする我儘にすら気付いていない。
そんなの間違っている。
みんな生まれる前から平等じゃないのに、無理やり平等にしようとするから妥当じゃなくなるんだ。
『自業自得がみんなに平等であるべきなんだ。』
そう思った時、またキン!と頭の奥から音が鳴って、世界が鮮明に見えた。
まるで世界の真理に触れて、神様に近付けたかのような万能感に僕は酔いしれた。
腹の中が躍って、高まって、飛び出していく感じだ。
それから、誰かが決めたみたいに咲子への、みんなの接し方が変わった。
無視もしないし避けたりもしない。
ただ「迷惑」とだけキッパリ伝えるようになった。
僕もそれが正しいと思った。
そしてこの頃、僕は気付いたら自然と笑顔になってるくらい浮かれていた。
だって、やっとみんなと同じものを見ることができた気がしたから。
それはずっと憧れながら眺めていることしかできなかった、みんなと同じ船に乗れたってことだ。




